痔について調べてみた。市販薬ボラギノールAとボラギノールMの違い。

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医療機関を受診することがためらわれる病気として、「痔」があると思います。

ドラッグストアで販売されている市販薬、例えばボラギノールで痔は治療可能なんでしょうか?

医師が購入した痔治療の市販薬

そもそも痔の原因さえ不明なの?

ここ一年半以上、外出しないで家に引きこもりがちであったためか痔になってしまいました。今までも時々トイレットペーパーに血液が付着することがあったけど、大腸ファイバースコープの検査でポリープがある以外は問題無しと診断されているので、「痔核」と診断してドラッグストアで薬剤師さんに相談してこれらを買い求めました。

自己判断による自己診断で治療を開始して良いのか、とふと疑問をいだき知人が複数参加して作成した日本大腸肛門病学会の診療ガイドライン(https://www.coloproctology.gr.jp/uploads/files/journal/komonshinryo2014_2.pdf)を読んでみてびっくり仰天、いままで私が理解していた痔はそもそもの発生機序からして専門家は別の解釈をしていたのです。

痔核発症リスクは排便習慣とは無関係❗

私が痔核になってしまった大きな原因は朝のトイレタイム時にスマホでニュースをチェックする時間がついつい長くなってしまうことだと考えていました。しかし、大腸肛門病学会のガイドラインでは

トイレに長時間座っている人が痔核になりやすいという報告もみられる

とかなりあっさり書き流されています。さらに一般常識に反するかのように

排便回数からみた慢性便秘症と痔核発症を関連づけるエビデンスは十分ではない

とまで書かれています。

どれもこれもエビデンスレベルでは十分説明できない私の突発性痔核発症(そんな病名は無いだろうけどね)。果たして市販薬で痔核の治療は可能なのかちょっと不安になってきてしまったのです。

「痔にはボラギノール〜❗」ボラギノールAとボラギノールMの違い

私がドラッグストアで購入した痔の薬にも含まれている「ボラギノール」のウェブサイトでは痔になる主な原因として

痔になる主な原因としては、「便秘」や「下痢」、「排便時のいきみ」「座りっぱなし」などがあります。

https://www.borraginol.com/knowledge/

と記載されています。でも大腸肛門病学会のガイドラインでは便秘は関連性は弱いようですし、排便時のいきみに関しても「という報告もみられる」と強い因果関係を示しているようには受け止められません。

まあ、発症リスクとか因果関係はひとまず置いといて治療について考えてみます。

外科手術をしないで薬で治療することを「保存的治療」と呼び、今回の私の治療は市販薬による保存的治療を選択したことになります。

手元にあるボラギノールM軟膏およびボラギノールA注入軟膏の添付文書によれば主成分はボラギノールM軟膏は

  • リドカイン・・・痛みとかゆみを抑える作用
  • グリチルリチン酸・・・抗炎症作用
  • アラントイン・・・組織修復作用
  • ビタミンE酢酸エステル・・・血液循環改善作用

となっており、一方のボラギノールA注入軟膏は

  • プレドニゾロン酢酸エステル・・・抗炎症作用
  • リドカイン・・・鎮痛とかゆみを抑える作用
  • アラントイン・・・組織修復作用
  • ビタミンE酢酸エステル・・・血液循環改善作用
  • となっています。ボラギノールMとボラギノールAの大きな違いは抗炎症作用を期待できる成分としてグリチルリチン酸をチョイスするかプレドニゾロン酢酸エステルをチョイスするかの違いなんですね。

    プレドニゾロン酢酸エステルは知っているけど、グリチルリチン酸ってなんだ?

    プレドニゾロン酢酸エステルはおなじみのステロイド剤であり、炎症によるかゆみや発赤を抑える効果があることで知られています。ステロイドの強さを示すランクでは普通(medium)に分類されていて皮膚科とかでは弱めのステロイドとして処方されることが多いと思います。

    一方のボラギノールMに含まれる「グリチルリチン酸」、どこかで聞いたことがあるような記憶が無いわけじゃないけど、なんだったっけ?レベルの知識しか持ち合わせていません。

    なーんだ、グリチルリチン酸って漢方薬の甘草に含まれる成分じゃん!

    個人的な好みとしてはグリチルリチン酸よりプレドニゾロン酢酸エステルのほうが馴染みがあるのでチョイスしたいのですが、プレドニゾロン酢酸エステルを含むボラギノールAは肛門から注入する方式であるために暫し躊躇しざるを得ない状況に追い込まれてしまった私です。

    そもそも痔核であるとの診断は正しいのか?

    素人の自己診断は怪我の元であることは常識ですよね、一応医師免許をもっている私であっても痔核は専門外なので自己診断は戒められるものかもしれません。そこでもとに戻って大腸肛門病学会のガイドラインの「痔核診断に有用な検査方法は?」を見直しました。

    痔核の診断に必要なことは詳細な病歴を尋ねること・・・今回の私の場合はこれは自分でOK。でも肛門診察が難問です

    • 視診・・・これは鏡で見れば明らか。
    • 触診・・・これも自分で触って確認済み。
    • 指診・・・前立腺の診察で患者さんには行なっているけど自分ではちょっと抵抗が。
    • 肛門鏡検査・・・これは無理❗

    指診は直腸診と呼ばれる診療行為で、泌尿器科ではゴクゴク当たり前に行われる基本的な検査手技なのですが、大腸肛門病学会のガイドラインでは

    正確な痔核の存在診断は肛門指診では不可能であり、肛門鏡を用いて視診することによって診断される

    と記載されているじゃん❗ってことは自己診断で痔核という結論を導き出した私は大きな誤診をしている可能性もでてきちゃうのです。

    【大きな誤解】泌尿器科って恥ずかしいし、痛い検査されるし、と受診を控えている方へ

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    こんなブログ記事を以前書いてしまったけど、いざ自分がとなると抵抗感は強し(苦笑)。

    プリザS坐剤も買っておいて良かったぞ!

    肛門指診や肛門鏡はちょっと抵抗があるので、厳密な確定診断前に私がチョイスしたのは、馴染みがあって好みのステロイドが含有されているプリザS坐剤です。

    直腸になんらかを注入した経験はないけど、座薬はいままで何回か使用したことがあります。プリザS坐剤にはメントールも入っていてお尻のスースー感が得られるし、ボラギノールAやボラギノールMに含まれている成分もグリチルリチン酸以外は入っています。

    しかし、痔核って発症のリスク因子が明確になっていないっぽいのですからいつまで使い続けることになるんでしょうか?さらに服用する痔の薬もあるようなのでそちらも試してみようかと思っていまーす。

    著者プロフィール

    桑満おさむ(医師)


    このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

    1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

    医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

    桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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