河村市長がかぶりついた金メダルの行方、徹底的に消毒しても残る「キモい」問題。

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2021年オリンピックで金メダルを獲得した女子ソフトボール。名古屋市の河村たかし市長がその金メダルにかぶりついたことが話題になっています。

感染予防対策が叫ばれている現状で許容されることでは無いと考えられますが、消毒したら金メダルは元の状態に戻るのでしょうか?

科学的思考が感情論に圧され気味の現状で特に若い女性が気にする、「キモい」について考えてみました。

消毒してもキモいは残る

https://mainichi.jp/articles/20210804/k00/00m/040/311000c

医学的に消毒や滅菌をしてもやっぱり「キモい」

医学的にバイキンがいない状態にする行為を「消毒」「滅菌」と呼びます。河村市長が万が一なんらかの感染症に感染していた場合、金メダルに微生物が棲息する事態を打破するためには消毒または滅菌が必要となってきます。

消毒と滅菌の違いは

  • 滅菌・・・すべての微生物(細菌やウイルスなど)が存在しない状態にする絶対的な概念
  • 消毒・・・棲息する微生物の数を可能な限り減らすための処置で、滅菌と比較すると微生物が残存する

と医学的には考えられています。河村市長がかぶりついた金メダルは感染症予防の観点から考えると滅菌して女子ソフトボールの後藤希友投手に返還することが妥当だと考えられます。

私達がクリニックで滅菌するための方法として高圧蒸気滅菌装置(autoclave、オートクレーブ)と酸化エチレン(ethylene oxide)を使用したガス滅菌があります。前者のオートクレーブの場合、滅菌装置の内部温度は135℃になるので、金メダル自体への影響は少ないと考えられますがメダルについているリボンの変色などは避けられない可能性があります。

熱によって変性してしまうものを滅菌するために使用するガス滅菌で金メダルをきれいにしたとしても・・・やっぱり、医学的に清潔な状態になったとしても、「キモい」は残存するのではないでしょうか?

後藤選手、もしもガス滅菌を希望されるなら当院で請け負いますよ(キモいに関しては無理)。

科学的見地が感情論に破れた感染症拡大防止策

感染症拡大防止策に関して日本中だけではなく世界中から様々な意見が駆け巡っています。検査を不特定多数にやりまくれとか都市封鎖をしろー!とか。あまりにも感情論に振り回され科学的思考、医学的検知からかけ離れた独自の理論も目立ちます。

今回の河村市長の金メダルにがぶりとかじりつく衝撃的な場面を目撃して不快な気持ちになった方も少なくは無いでしょう。医学的見地から鑑みれば消毒あるは滅菌をすれば汚された金メダルは医学的用語の「清潔」な状態にはなるはずです。

でもさあ、お父さんが使っているお箸を平然と使用できる人って少数なんじゃないですか?

お箸をしっかりと洗ったとしても、なんとなーく他人が使用したお箸を使うことに抵抗を感じる人が大多数だと思います。

でもさあ、各々のナイフとフォークが決められている家庭って少ないのではないの?

他人が使ったお箸を使用するのは抵抗があっても、ナイフとフォークなら気にならない・・・これは科学的思考ではなく、感情論的思考の影響が強いと思われます。

さらにさらに、家族以外が握ったおにぎりを食すことに抵抗感を示す人も少なくはありません。

医学的には証明できない「他人が握ったおにぎり問題」

子ども時代、私の周りでも他人が握ったおにぎりに対して抵抗感を示す人が少なくありませんでした。それを支持するデータがあります。たとえばよそのお母さんが握ったおにぎりを、「キモイい」と表現する子どもはいないと思います。キモいわけじゃないけど、抵抗感がある他人が握ったおにぎり問題はなぜ発生してしまうのでしょうか?

ベネッセコーポレーションが行った調査によると、小学生の4人に1人が「他人が握ったおにぎり」に抵抗を持っていると答えたそうです。また、子どもだけでなく大人でも他人が握ったおにぎりへの抵抗を感じる人は少なくないようです。

https://twitfukuoka.com/?p=33175

都道府県別他人が握ったおにぎりを食べられるか?

今回の金メダルかぶりつき事件は名古屋市での出来事ですので、このデータ(笑)を見る限りでは愛知県は他人が握ったおにぎりを食べられないと回答した割合は31〜50%になっているので、比較的不埒な行動にも寛容である可能性もありますね。

当事者というか被害者である後藤選手の

「大好きな地元に金メダルを持ち帰ることができ、本当に良かった」と冷静にあいさつ。

https://mainichi.jp/articles/20210804/k00/00m/040/311000c

との大人の対応は見事ですが、自宅に帰って金メダルを眺めるたびに悪夢が甦ってくる可能性も無くはありません(だって画像を見る限りでは河村市長の異常行動に怯えているもん)。

他人が握ったおにぎりは食べられなくても、お寿司はたべられるんじゃないの?

2020年から現時点である2021年8月まで世界中を悩ませている問題のゲームチェンジャーとしてワクチンの登場があります。しかし、反ワクチンと呼ばれる一派の影響によってワクチン忌避の考えに傾いてしまった人たちも少なくはないようです。

科学的医学的見地からは体質等によってワクチン接種がリスキーである人以外はワクチン接種するの一択なのですが、なぜノイジー・マイノリティの非科学的非医学的見解に影響されてしまうのでしょうか?

私は常々科学的思考が感情論に圧されっぱなしの状況との表現をブログ記事やSNSで使用してきました。

他人が握ったおにぎりに抵抗感がある人だとしても、お寿司は食べますよねえ・・・。

お寿司って普通は他人、多くの場合はオッサンが握っているよね。

結局は相手が清潔かどうか信用できるかどうかってことなのかもしれません。

でもお寿司屋さんではなく、おにぎり屋さんで目の前でオッサンが、「ハイ、お待ちっ❗」っておにぎりを出された場合、医学的見地からは清潔であってもなんとなーく抵抗を示してしまうんじゃないかなあ。

名古屋市の河村たかし市長の非常識な行動によって様々な思考実験を継続するのが、私の今年の夏の過ごし方になってしまいそうです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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