「頭蓋骨はがし」ぐっすり眠れるどころか永遠に眠っちゃうかも(笑)

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週末の朝っぱらから驚きました。快眠を得るために頭蓋骨をはがす❗「頭蓋骨はがし」という民間療法なのかリラクゼーションなのかの手法があるようなのです。

頭蓋骨は人体にとって大切な器官・臓器を守るためのものなのに安易にいじってしまって大丈夫なんでしょうか?

頭蓋骨縫合を緩める「頭蓋骨はがし」⁉?

以前、小顔にするための危なっかし骨矯正施術をネタにして怪しげな代替医療方面からめちゃくちゃディスられたことも懐かしい思い出です。

小顔矯正の代名詞「コルギ(骨気)」はニセ医学。マッサージで小顔にはなれません。

小顔矯正の代名詞「コルギ(骨気)」はニセ医学。マッサージで小顔にはなれません。

今度はなんと、ぐっすり眠るための民間療法として「頭蓋骨はがし」なるものを見つけてしまいました(日課として朝のトイレタイムにスマートニュースとかGoogleニュースでネタ探ししております)。

トンデモ「頭蓋骨はがし」

https://dime.jp/genre/1183825/

頭蓋骨は正確には前頭骨・頭頂骨・側頭骨・後頭骨・蝶形骨・篩骨・下顎骨・上顎骨・口蓋骨・頬骨・鼻骨・涙骨・鋤骨・下鼻甲介・舌骨・槌骨・砧骨・鐙骨(耳小骨3種類を含む)から構成されていることが例えば私の手元にある解剖学の教科書「グレイ解剖学」などに書かれています。ここ数十年で人体に大きな変化が無い限り18種類の骨で頭蓋骨は構成されています。

頭蓋骨と脳(中枢神経系)の隙間には液体がクッションとして存在していて、背骨へ連なる脊髄を守るためにその液体は脳脊髄液と呼ばれています。

「頭蓋骨はがし」ではなんと頭蓋骨を緩めることで脳脊髄液をしっかり循環させることにより(しっかり循環ってなんじゃ?)睡眠ホルモンが頭に巡り(頭にめぐるってなんじゃ?)睡眠の質があがるんだってさ。

そもそも頭蓋骨って動くものなんでしょうか?

お子さんの頭の形を気にする保護者も多く「頭蓋骨矯正」等のキーワードで検索してしまうと阿鼻叫喚地獄、たぶん頭蓋骨矯正や小顔矯正を行っているサロン(何じゃ、サロンって?)とか整体を行っている治療院がぞろぞろと現れるのではないでしょうか?

前掲の頭蓋骨はがしの説明として

頭蓋骨は23個のパーツでできており、このパーツとパーツの組み合わさっているところ(縫合)を緩めることが「頭蓋骨はがし」という。

と書かれています。頭蓋骨はがしの定義は頭蓋骨縫合を緩める、あるいは離開させることと解釈できます。

頭蓋骨はがしを施術して、それを記事にしたライターさんがどこまを頭蓋骨といっているのか不明ながら、私が先程列記した骨は頭を構成している骨であり、頭蓋骨は15種22個の骨で構成されるとの考え方もあります。頭蓋骨は23個のパーツという一次ソースは何なのでしょう、たぶん舌骨までを含んで頭蓋骨と考えているのでしょうね。

頭蓋骨縫合早期癒合症という病気があります。頭蓋骨の一部が早期に癒合してしまうために脳の成長を抑え込んでしまうために手術で治療することがスタンダードな医学では選択されています。

赤ちゃんの頭蓋骨縫合が早まっただけで外科手術が必要なほどなんですから、がっちり縫合してしまった頭蓋骨のパーツを手技で緩めたり離開させたりすることができるとは医学常識では考えられません。

下手に頭蓋骨に力を加えて頭蓋骨をはがしたら、その状態を医学的には「脱臼」や下手すりゃ「骨折」と呼ぶんだけどねえ

脳脊髄液を急激に変化させたらこんな症状が・・・・。

頭蓋骨はがしの記事は

脳脊髄液(のうせいずいえき)の循環が滞っている可能性があるという。そこでDrHEADでは、脳を休ませる整体「頭蓋骨はがし」をすすめている。

とお気楽に書き流していますけど、脳脊髄液の循環が滞っている状態ってどんな状態なんでしょうか?脳脊髄液は脳内に存在する脈絡叢で産生されて側脳室 → 第三脳室 → 中脳水道 → 第四脳室 と脳内を循環しています。この循環が滞ってしまうと水頭症と呼ばれる病態になってしまうんです。

脳髄液が溜まった水頭症の治療法

https://www.mmc.funabashi.chiba.jp/neurosurgery/uploads/HCP-61_1.pdf

脳脊髄液の循環が滞ってしまった場合は頭蓋骨はがしなんかに行かないで、すぐに脳神経外科を受診する必要があるんだけどなあ。

そう言えば「脳洗浄」なんてものありましたね。

デトックスというニセ医学の分派「脳洗浄」、効果があるわけ無いし、脳から何かが出てきたらヤバいぞ。

デトックスというニセ医学の分派「脳洗浄」、効果があるわけ無いし、脳から何かが出てきたらヤバいぞ。

頭蓋骨はがしに効果があって脳脊髄液の滞りが治ったら、さらにヤバいことになりかねない

頭蓋骨はがしの記事には

頭蓋骨を緩め、脳脊髄液をしっかり循環させると、睡眠ホルモンが頭に巡り、睡眠の質が上がると考えている。

とカジュアルに人体のことを書き流しています。脳脊髄液減少症や低随液圧症候群という高度な医学知識と医学技術が無いと診断も治療も難しい病気のことは全くご存じない様子。脳脊髄液が医学素人の手による「頭蓋骨はがし」で脳脊髄液の滞りが一気に改善したら頭蓋内圧の低下も伴うはずです。

頭蓋内圧の低下は死に至る可能性さえあります。

頭蓋骨の縫合をぐいぐい押し広げた時点で既にかなりヤバい状態になっている可能性の方が大だけどね。

最後に「研究エビデンスに基づいた施術」って何?

とにかくやたらめったらエビデンス流行りです。エビデンスって証拠という意味なんだけど、医学系だとしっかりその効果を明確にした論文の存在を確認して「エビデンスがあります」というのがマナーというかルールです。

頭蓋骨はがしの記事には

単なる癒しやリラックスを目的とするのではなく、研究エビデンスに基づいた施術

と書かれています。研究エビデンスってどのようなことを意味しているのでしょうか?研究を行いながらエビデンスを求めるのであれば、文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に従う必要があります。

「頭蓋骨はがし」を行っているのは整体院であり一般の医療機関ではありませんし、国家資格をもった接骨師がいる接骨院・整骨院でもなさそうです。そのようないわゆる民間療法を行っている施設に対して厚生労働省や文部科学省が指導している研究に関する倫理指針なんて視野には入っていないように思われます。

エビデンスが百歩譲って研究レベルだとしても、エビデンスに基づいて施術をしていたとしたらかなりリスキーだと思いますぜ。

頭蓋骨を緩め、脳脊髄液をしっかり循環させると、睡眠ホルモンが頭に巡り、睡眠の質が上がると考えている

もしも、なんらかの論文ベースのエビデンスと呼ばれるものが「頭蓋骨はがし」にあるのであればぜひご教示くださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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