国内のヘンテコな感染症による死亡者数が40万人以上になるという報道がありましたが、これは対策を講じなかった場合の最悪の事態を想定したもの。
つまり現状では起こり得ない未来のお話。医療崩壊が起き政治・経済も完全にストップしてしまったらわかりませんが。少なくともいま国民一人ひとりが我慢して頑張っています。医療もギリギリで踏ん張っています。これ以上不安がりたくないはずです。報道される数字だけに惑わされないでください。
本記事の内容
感染拡大したら40万人が死亡!数字が独り歩きしだした感が⋯
国難、猛威をふるう新型コロナ。新型コロナ感染症禍とも呼ばれだしています。先日、厚生労働省クラスター対策班から驚くべき数字が発表されました。
この記事によれば
●国内の重篤患者数は85万3300人になる
●重篤患者の49%が死亡する。
●85万3300人 ✕ 49% =41万8000人が死亡
にわかに信じがたい恐ろしい結果が導きだされています。この記事にも書かれているように厚生労働省クラスター対策班の西浦博北海道大教授は死亡者数は算出していません。
私はこの驚くべき40万人死亡との数字が独り歩き仕出して、無用なパニックをおこしつつあるのではないかと考えています。
なお、私は感染症の専門家でもありませんし、ウイルス学や疫学の専門家でもありません。メディアでだれでもが見ることができるデータ類を検証して、さすがに40万人死亡は無いだろう、と考えています。
さらに外出自粛要請によって発生している経済的な問題は門外漢ですので、触れません。
ドイツの新型コロナ流行地域のデータをもとにすると、最悪7万人の死亡者?
西浦教授の試算をもとにして、出された40万人の死亡者。条件として「対策をとらない場合」があります。
この対策をとらない場合、対策って何なのでしょうか?外出自粛要請だけなのか、三密に対する注意喚起をしないことなのか、リモートワークを要請しないことなのか、この辺りが明確ではないですが、話を進めます。
ドイツのHeinsberg郡(日本語表記は不明)で新型コロナによる集団感染が確認されています。
この地域では全住民の15%が感染している可能性が、調査対象となった住民への検査結果(PCR検査と抗体検査)から得られています。
さらに感染していた人は0.37%が死亡していることもわかりました(メディア等で致死率、致命率との言葉が使われていますが、両者の意味は同じです)。
「Vorläufiges Ergebnis und Schlussfolgerungen der へんてこな感染症 Case-ClusterStudy (Gemeinde Gangelt) 」
この論文はまだ査読を受けていないものなので、信頼度に関しては微妙であるかもしれない点にご注意ください。
日本の人口は1億2650万人程度、ドイツの流行地域のデータをはめ込んで計算してみます。
●1億2650万人 ✕ 15% =1897万5000人
日本中が新型コロナ感染流行地域になったと仮定すると、日本では1897万5000人が感染することになります。
●1897万5000人 ✕ 致命率0.37% =7万0208人
日本全体をドイツの新型コロナ感染流行地域と同じ条件であったと仮定して、導かれる死亡者数は約7万人になりますね。
メディアが報道した死亡者数40万人とはかなりかけ離れた数字になります。
ドイツの流行した地域は日本よりめちゃくちゃ医療体制が優れているために、死亡者数が極端に低くなっているのでしょうか?
あるいは、徹底的にPCRや抗体検査をドイツのこの地方は行ったために、死亡者数が少なくなったのでしょうか?
そのあたりの検証は必要ですが、誰でもアクセスできる数字をもととすると上記のような結果を導き出すことも可能です。
おまけ
楽天がセルフPCRキットの販売を開始しました。上記にドイツのデータを東京都に当てはめて、かりに全都民がPCR検査を行った場合、かなり悲惨な結果になるのです。
楽天の暴挙はクラスター対策班のご苦労を無にして、外出を自粛している私たち国民の頑張りを無駄なものにしてしまいます。
不安を煽る報道、悪い点だけではなく良い点も。
40万人以上が死亡する可能性が導き出される衝撃的な報道が日本中を駆け巡りました。西浦教授の本意とは違った解釈の報道も多かったのように思えます。
最悪のシナリオとして41万人死亡!と報道しているメディアもあり、そこには「専門家が衝撃の試算」と書いてあるのですが、少なくとも西浦教授は死亡者数に関しては公表はしていません。
前掲の日経新聞の報道はかなりまともであり、不安を煽るような内容にはなっていません。
試算した西浦教授は「新型コロナに対して何も対策をしない丸腰だった場合の数字。このウイルスは接触を大幅に制限すれば流行を止めることができる」と指摘。
とも書かれていますし、
試算では対策をしなかった場合、重篤患者の49%が死亡すると予測。西浦教授は死者数を出していないが、単純計算で約41万8000人が亡くなることになる。
ともポイントを押さえた記事になっています。
このような話もあります。
新型コロナの感染拡大が喧伝されていても、3月の3連休中には外出する人が増えていました。この時点では、北海道は独自に緊急事態宣言を出していました。
2020年3月1日に北海道では緊急事態宣言が出され、東京では1ヶ月以上遅れて4月8日に出されました。
東京の場合は、新型コロナ感染症特措法に基づく緊急事態宣言の発令を受けて徹底した外出自粛の要請・施設の使用停止及び催物の開催の停止要請しています。
しかし、現状はこんな感じに。
人との接触の機会を8割削減させることが、感染拡大を抑制して、感染を抑え込める目安であることがあれだけ伝えられているのに⋯。
強い危機感をもった西浦教授はあくまで仮定の話として、感染拡大した場合、人工呼吸器あどが必要となる重篤患者数が85万3300人との衝撃的な数字を公表したのだと私は解釈しています。
「正しく恐れる」、名言中の名言です
「天災は忘れた頃にやってくる」との名言を聞いたことがあると思います。これは私の憧れの先人である物理学者であり、名随筆家である寺田寅彦の警句だと言われています。
私が寺田寅彦の著作はほとんど持っていますが、実際は随筆集にある
そのおもなる原因は、畢竟そういう天災がきわめてまれにしか起こらないで、ちょうど人間が前者の転覆を忘れたころにそろそろ後者を引き出すようになるからであろう
が一次ソースだと思われます。
今回の新型コロナ禍の初期段階で多くの医師が伝えた「正しく恐れる」も寺田寅彦の言葉とされています。残念なら私の本棚に並んでいる氏の著作物からはこの格言を見つけることはできませんでした。
これはたぶん
ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい
と書かれた「小爆発二件」という随筆がもととなっているのだと考えられます。
正しく恐れないと、こんな変な医師さえ出てきちゃいます。
いま新型コロナが猛威を奮っていても、いつかは収束するでしょう。でも世界中をパンデミック状態にする感染症はこれからもいつかはくるでしょう。
今回の新型コロナ感染症禍を教訓として次にやってくる天災にそなえる対策をしっかり行ってほしいです(これは政治的なことであるので、詳細に関して私見を述べるのは控えます)。
私は西浦教授の発言をこのように解釈しています。
●日本が全く対策をしなかったら最終的には40万人が新型コロナが原因で死亡していた可能性もある。
●8割の接触を控えれば収束が可能である
●ここまで国民は我慢を強いられてきました。もう少しです、みんなで頑張って我慢をしましょう❗
研究者が淡々と数字だけを追いかけた結果に隠されたメッセージ、それは以上の3つなのでは⋯。