インフルエンザが猛威を振るっているし、ノロウイルスも流行して大騒ぎの2014年。
インフルエンザワクチンの接種については賛否あるようですが、現代の医学常識としては効果ありです。
一方、ノロウイルスは予防の為のワクチンは存在しません。
もしもノロで体力が弱っている時に、インフルエンザウイルスに感染してしまったら果たしてどんなことになってしまうの?ダブルの症状で苦しむの?とご心配の方もいるのでその辺りについて考えてみます。
病原体の世界は一党独裁主義です
インフルエンザウイルスとノロウイルスの同時感染は理論的にはあり得ますが、同時に発症する可能性はほとんどないのが医学的な常識とされています。
インフルエンザは予防接種によって、重篤化は防ぐことが可能です。今季流行したインフルエンザもワクチンは当然、当たっていました。
ノロウイルスは昨年から一部の方が保険診療の範囲内で簡易キットで感染の有無を判定できるようになりましたが、予防のワクチンはコロコロマイナーチェンジする遺伝子のために、開発はかなり困難となっています。
病原体の干渉という作用
例えば膀胱炎を考えてみます。膀胱炎を引き起こす原因菌としては大腸菌と腸球菌が代表的なものとして知られています。でも、尿の検査で両者が同時に主原因の菌とされることはほとんどありません。
医学的にはウイルスと細菌は別の生き物として判別されていますので、ウイルスと細菌が共に繁殖することは例えば尿道炎で淋菌とクラミジア(ウイルスではありません)が一人の患者さんから検出されることはあります。でも、インフルエンザもノロもウイルスという同じ要素を持ち合わせた「バイキン」ですので、同時にウイルスが体内に侵入しても両者が同時に繁殖をし続けて病状を表すことは基本的にはありません。
このようにウイルス界では一党独裁政権になることを「ウイルスの干渉現象」と呼んでいます。
二次感染と言う脅威も存在します
インフルエンザに感染した後に肺炎になって入院なんて話を聞いたことがあると思います。この場合はインフルエンザウイルスに発症によって衰弱したところに、肺炎を起こす細菌に更に感染してしまうことによって起きます。
免疫力が落ちている所の隙をついて、本来ならば肺炎なんて起こさない菌が悪さをするんです。
そのような場合は、抗生物質・抗菌剤の使用によって菌を退治する事で治療を行ないますが、この抗菌剤は残念ながらウイルスには全く効き目がありません。この辺りの混乱が結構患者さんにもみられて、いわゆる「風邪」で抗生物質を希望されても「原因はウイルスなんで抗菌剤は効果ありませんよ」と説明するのに苦労をしている医療関係者も多いと思います。
でも逆にいえば、「風邪」を引いているけど、肺炎球菌などの細菌に二次感染をしているなんて場合は積極的に抗生物質を投与しなくてはなりません。
話が長くなりましたのでまとめます。
インフルエンザウイルスとノロウイルスに同時に感染する事はあっても、その両者の症状が同時に出現するという可能性はほとんどありません。
ウイルスが体内に入ってくる=感染、であっても、感染=発症ではありません。よくインフルエンザにかかったことないという人がいますが、感染してるかしていないかはわかりません。発症はしていないということです。ノロとインフルに関しては、ダブルで発症して苦しむことはないはずなので、その点はご安心ください。
- インフルエンザ対策はワクチンの予防接種を受ける (今期のワクチンは流行しているN1H1をカバー)
- ノロ対策は念入りな手洗いの習慣
これでもなんだか調子が悪かったら、感染を拡げないという意味でも医療機関の受診をお薦めします。
一部の医療機関ではノロウイルスで持病の無い成人が重症になることはないので、自宅療養と水分補給で様子をみて欲しいとのリクエストもあります。ようは病院に来ると他の人に感染が拡がってしまうことを危惧してのことです。できれば事前に医療機関に問い合わせた方が良いと思われます。