今期もインフルエンザが大流行しています。患者さんがよく口にする言葉として「今回のインフルエンザワクチンは当たるんですか?」という素朴な疑問です。インフルエンザは遺伝子を変えながら人類に猛威を振るいますので、様々な型があることが知られています。
本記事の内容
新型インフルエンザと呼ばれたN1H1インフルエンザ
新型エンフルエンザというのは「新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの」(感染症予防法第6条第7項第1号)です。
国立感染症研究所HPより
インフルエンザのウイルスは大きく別けてA,B,Cと三つに分類されます。更にその変異種をノイラミニダーゼという糖蛋白で分類してA型インフルエンザウイルスにはNが9種類、ヘマグルチンで分類して16種類あります。B型は人間とアシカにしか感染しませんし、変異種はHAとNAしかありませんので、遺伝子を変化させて多様性を持つ事が無い為に、大流行にはなりません。あまり聞き慣れないC型インフルエンザウイルスはHしかありませんので殆ど問題とされる事が無く、予防接種ワクチンにも含まれていません。
今期流行しているのはA型でNが1でHが1のものである為に「N1H1インフルエンザが猛威を」と報道されるのです。このインフルエンザは2009年に世界中で暴れまくって「新型インフルエンザ」として認知された為に、日本でもパニック状態になったことは多くの方の記憶に残っているのではないでしょうか?
新型も結局は旧型になるインフルエンザウイルス
この2009年に世界的に流行した「パンデミック」なんて言葉で知られた、当時新型インフルエンザウイルスと呼ばれたものが、世界中を何周かして今期日本で蔓延しているのです。それが今期に流行しているN1H1型です。2009年以降にこのウイルスに感染したか、又は予防接種ワクチンを受けている人はある程度の免疫力があります。
2010年以降に生まれてきた子供の場合は予防接種を受けていないと免疫力がついていない為に、現象としては2009年に人類が恐怖を感じた状況と大差がありません。その為に、私たちは事前にインフルエンザの予防接種を推奨しているのですが、世の中には「反インフルエンザワクチン派」的な人もいて困ったちゃんです。さらに予防接種ワクチンが流行に対して「当たるか、はずれるか」という問題を提起される方もいます。
今期の予防接種ワクチンは大当たりでした
インフルエンザワクチンはA型2種類、B型1種類が含まれています。今期のものはA型はN1H1 (大当たり!)とH3N2(香港型と呼ばれる事が多いです)で構成されていますので、予防接種を受けていた方が万が一インフルエンザに感染しても、重症化する可能性は低くなっています。
万が一インフルエンザに感染しても「タミフルは効果がない」という報道の為か、受診してもしょうがないとは思わないでください。治療抵抗性のインフルエンザにも効果がある治療薬が幾つか存在しています。実際問題としてインフルエンザに対しての治療はタミフルの出現以前は対症療法に限られていました。熱があれば解熱剤を使用するかクーリングをする、二次感染として細菌性の肺炎になったら抗菌剤を使用する、脱水症状がでたら点滴をするなどです。
人類の歴史上、そのエリアに済んでいる人の半数近くが死亡に至った感染症もある
今私たちがこの地球に存在しているということは人類が全滅はしなかったという当然の結果を示しています。未だかつて人類が経験をしたことがない「病原体」に対しても、もともと持ち合わせた免疫システムによって対抗できる人も居ると言う事です。どのような感染経路でウイルスが蔓延するのか、そしてどのような事に注意をすれば感染を防ぐ事ができるのか、ということは現在の医学では十分に判明していることなんです。
自然に免疫がついていない人、免疫が落ちている人の為に予防接種のワクチンが存在するのですが、反ワクチン派の方がどうしてそれを理解してくれないのか?むなしい気持ちで一杯になってしまいます。