オイルマッサージとかアロママッサージなどで、ダイエットや痩身つまりやせる事を目的とした施術がありますが、その上をいく「経絡リンパマッサージ」というものがあります。
最近、民間療法に凝りだした私は飛びつきました、その絶妙な組み合わせに。
単にマッサージで一時的にむくみが取れて、足などが細く見えるだけの様な気がしたのと、なんで経絡とリンパマッサージが一緒になっているのか気になって調べてみました。
マッサージによる痩身・ダイエットの根拠は何だろう?
確かに医学的に「リンパ浮腫」と呼ばれる病態があり、乳がん治療や前立腺がん治療の後に、患者さんを悩ませる問題となっています。対処法として確かにマッサージを取り入れることもあります。これはダイエットでもありませんし、痩身でもありません。リンパというと何とはなしに「免疫系」のイメージと悪いものを排出する役目を果たしていて、体の毒素を排出するような響きがあります。経絡は東洋医学におけるツボとはまた違った考え方の流派?が基本概念としている「気」の流れを表しています。
リンパは西洋、経絡は東洋、つまり西洋医学と東洋医学を統合した方法によってマッサージを行なって、痩身いわゆるダイエットを目指す治療を「経絡リンパマッサージ」と呼ぶようです。このリンパの流れを良くする、というのはマッサージの基本的な理論上の裏付けとなっているようです⋯「ようです」という言葉は少し語弊があるかもしれませんが、本当にそうなのか考えてみました。
リンパ液とリンパは違うものなんです
リンパ(リンパ球)とは血液中に含まれる白血球の一部を構成している成分で、白血球中の30−40%を占めています。白血球自体は全血液の1%しか占めていません。さらに血液は人間の体重の13分の1程度ですので、体重60キロの人の場合
- 血液量は4.6キロ
- 白血球は4.6キロ×0.01=46g
- リンパ球は46g×0.4=18.4g(多く見積もって)
つまり、リンパ球は体重60キロ(男女、年齢で若干の差はある)の人でたった18、4gしかありません。
いくら民間療法といえこんないい加減な理論の上に成り立っているはずがないので、このような治療で言う所のリンパは「リンパ管を通過する物質」ということなんだとして考えます。リンパ管を流れる物質をリンパ液といっています。
狭い意味でのリンパ液はリンパ管の中を流れる物質を指しますが、広い意味でのリンパ液は細胞と細胞の中に存在する液体とリンパ管内のリンパ液を足したものをそのように呼びます。この広い意味の体液中の細胞間液とリンパ管内リンパを合わせたものを「リンパの流れ」に含まれる物質としているとしか考えられません。だってたった18.6gの物質がどこにどのように存在しても、痩身に影響するとは思えませんし、マッサージでどうにかなるものでも無いと思われます。つまり、むくみが無くなっただけではダイエットできた、ということにはならないのではないでしょうか?
経絡ってなんだろうか?
経絡は中国では古くから鍼治療の効果を説明するために使われてきたもので、もっとも古い文献は「黄帝内経」という紀元前2世紀頃❗に書かれたものです。生命の元である「気」が「経絡」という道を流れて人間は生きているという思想的な考え方であり、気の流れを妨げる箇所を治療する事により生命力を甦らせるという治療?なんです。しかし、思想がバックボーンになっている為に、流派が存在していて経絡は12本説、14本説に分かれている上に、さらに元となる「陰と陽」さえも3つに分類する学派と4つに分類する学派が存在しています。
このような複雑な理論であり、私のように齧った程度の知識では太刀打ちできない考え方なので、皆さんがわかりやすい表現をします。日本ではじめて人体解剖を記録した杉田玄白や前野良沢はそれまで中国経由の人体解剖図しか目にした事が無く、実際の解剖の際にその図の不正確さに驚いたという記録が残っています。
さらに経絡は現代医学だけではなく科学でもその存在自体が証明されていません。存在が証明されていないといって、絶対に無いと言う事はできませんが、経絡を信奉する人の言い分は予想されます。「経絡における哲学・思想は西洋医学とは相容れないものなので、西洋医学で使われる手法では理解ができなくて当たり前」という論法が出てくると思います。
しかし、別に臨床試験で有効性を検証するためには哲学はまったく関係ないものですので、半永久的にお互いが分かり合えることは、某国と某国、某宗教と某宗教がお互いに分かり合えないのと同じ状況です。ですから、今回はリンパマッサージのマッサージ自体は検討の価値あり、そして経絡は却下とさせていただきます。
じゃ、リンパ経絡マッサージは有効なんでしょうか?
リンパマッサージって先日私がブログに書きました「ふくらはぎマッサージ」の応用型と考えると充分に効果があると思われます。でも手動で時間をかけて何回も通院するより、そこは西洋医学の理論に基づいた「スリムスペック」という治療機器がありますので、そっちで治療した方がダイエットというか痩身の効果があります。
ここで西洋医学信奉者の医療関係者に苦言を。
理論に裏付けられた治療法より、危なっかしい理論の民間療法に患者さんが走るのは患者さんの理解が足りないため、科学的知識不足が大きな原因ではありません。親身になって患者さんの病状を詳しく尋ねていますか?足がむくむという患者さんの足にチャンと触ってむくみ具合を触診していますか?ひょっとして病状だけで、いきなり薬をだしているんじゃないですか?このような私も含めて西洋医学至上主義者は患者さんの部分部分を診るだけで、その背景を詳しく知って治療に役立てる努力を怠っているのではないでしょうか?