東京でオリンピックが開催されることになりました。オリンピックと言えば「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉を憶いだしてしまう私ですが、実はこの言葉は全くオリンピックとは関係なかったのですね。近代オリンピックの父クーベルタン男爵が言ったのは「参加することにこそ意義がある」でしたが、「健全な精神は⋯・」はローマの詩人ユベナリスの言葉だったようです。
健全な精神は健全な肉体に宿るは間違い?!
青少年がスポーツをすることは健康面だけでなく、精神面でも良い影響があるということで皆さんの常識だと思います(商業主義に走りがちな一部のスポーツは除きますが)。高校野球、高校サッカーなども近年は少しコマーシャリズムに毒されすぎている様な気がしていたのですが、「それって本当かな?」と意地悪な気持ちが毎年恒例の箱根駅伝をダラダラとお正月に見ていてムクムクと湧き出てしまいました。
ネット上でも勝利至上主義であるとか、テレビなどに左右され商業主義に走りがちという意見もでています。それは置いといて本当にスポーツは肉体だけでなく、精神面に好影響を与えるのか、医学的にアプローチしてみました。
http://company.bmj.com/より
過度の運動は精神的健康に良くない!
色々と医学論文を探し求めた所、有りました、有りました!「Too much weekly sport seems to be as bad as too little for teen wellbeing」というタイトルの論文がBMJ(November 20, 2013)に。毎週スポーツを行なう事は良い事なんですが、やり過ぎは精神面に悪響を与えるのです。実は若者の精神面に対して運動が良い影響を与えるか、それとも与えないかという単純な問題に対してはエビデンスと呼ばれるものは無かったのです。それを今回A. Merglenという人たちがスイスのローザンヌ地方の若者16歳から20歳について調べました。スポーツを週に3.5時間しかしない短時間グループ、週に3.6から10.5時間行なう中くらいのグループ、週に10.6から17.5時間の長時間グループ、そして問題の週に17.5時間以上行なっているグループの4つに別けて調査は行われました。精神的に健康であるか?という基準はWHO-5というものを用いました。
このような質問です
この得点が13未満だと精神的な健康度に問題ありと判断されます。この結果
- 一番スコアが高かったのは10.6から17.5時間運動のグループ
- 最低のスコアは3.5時間未満グループ
となっていました。気になるやり過ぎグループ17.5時間以上は中等度の運動を行なっているグループと比較して精神的に健康でない、とされた率が高くなっていました。
- 中等度の運動で精神的に健康ではない率は9.3%
- 運動やり過ぎで精神的に健康でない率は18.3%
スポーツをしないのも良くないが、やり過ぎはもっといけない
今回の結果から「健全な肉体に健全な精神が宿る」と推奨されるスポーツの時間は週当たり14時間とされました。日本の高校で行なわれている体育の時間が週当たり2−3時間ですので、これでは充分では有りませんので、課外活動とか部活としてスポーツをすることが精神面での健康には必要となってきます。
文部科学省の運動部活動の在り方に関する調査研究報告 (中学生・高校生のスポーツ活動に関する調査研究協力者会議)によると上記のようになっていて、体育の時間と合わせると適度な時間配分になっていて、日本の学生スポーツ界は健全なのではないかと言えます。
でも、高校野球などで強豪校といわれる所は合宿で共同生活を送っていますので「いじめ」「上級生による体罰」などが発生してしまうのは、実質的に体を動かしている時間だけでなく仲間と過ごす時間が長くなると精神的なストレスがお互いに発生して「精神的に健康」では無くなってしまうのかも知れません。