エイジングケアという言葉が一般的になってまだ十年は経っていません。初期のころはエイジングケアではなく「アンタイジング」なんて英語風に私たちは使用していましたが。エイジングケアというと女性が美しくなる美容的側面がメインとなって、人類の半数を占める男性、とくにオッサンは置いてきぼり状態です。
本記事の内容
男のくせにエイジングケアだと!(怒)
美容面では「美容外科」と「美容皮膚科」の境目もグレイになっていますし、昔のように美容整形しました的手法・手術は敬遠されがちです。当院では男性もシミを取ったり、余分な脂肪を除去する為に通院してくれる方が増えていることは「見た目」を大切にする人が増えてこれからの超高齢社会を迎えるためには良い傾向だと考えています。→中高年以降の男性のシミとりに関する情報
男のエイジングケアはテストステロンが重要です
男性にも更年期障害があることが、健康番組等で取り上げられた為に広く知られてきたのは、泌尿器を専門とする私としては非常にうれしい限りです。今までは「やる気がない」「覇気がない」「疲れやすい」「眠れない」なんて症状があると即「うつ?」なんて思われていたのですが、この男性更年期による一症状である可能性が少なくないのです。
男性が男性であるために必要なホルモンが「テストステロン」なんですが、 testosteroneは主に睾丸「Testicle」から分泌されます、だからtestosteroneなんです。このテストステロンは年齢とともに減少しますので、いわゆる「枯れた状態」はテストステロンが減少した状態といいうこともできます。たんに歳をとるに従ってテストステロンが減少するだけなら良いのですが、この減少は狭心症・動脈硬化・メタボ等に関連していますし、アルツハイマー病との関連性も研究によって疑われています。つまり、見た目だけの若さではなく、健康的に年齢を重ねて行くにはこのテストステロンの値に注目しなければなりません。
テストステロンの専門家は泌尿器科です⋯当院のメイン科目です
テストステロンの減少に伴って出てくる不定愁訴を「男性更年期障害」と呼びますが、もう少し専門的には加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism 略してLOH症候群)と私たち専門家は呼んでいます。このLOHですが、個人個人によって様々な症状、病態がありますので非専門家が診断するのに「うつ」等の神経症との鑑別が重要となってきます。Aging Males Symptoms (AMS) スコアというものが幸いにしてありますが、専門的知識がない一般の方がこれだけに頼って診断を下すのはリスクがあります。
専門的な検査としては血液検査として遊離テストステロンと言うものを測定します。このテストステロンという男性が男性であるホルモンなんですが、非常にかよわく一日のうちでもかなり大幅に変化しますし、「うつ」と診断されている場合に処方される薬にもかなりの影響を受ける場合があります。
男性の体って非常に繊細にできているんですよ、実は。
男性更年期の治療にはホルモン補充が効果的、ED治療薬も効果を発揮
男性更年期障害と診断され、遊離テストステロンの減少が確認された場合はテストステロンを含む注射をしてホルモンを補充すると、驚くほどの(患者さんも医師も)効果があります。もちろん診断が適切でないとそのような効果は期待できないのは当然ですが。
中高年を悩ます勃起障害、いまではEDという呼び方が一般的に通用するようになりましたが、この改善薬であるバイアグラ、レビトラ、シアリス(日本においてはこの三種類だけが承認されている)を服用すると、不思議なことにテストステロン値が改善するのです。
なんども私のブログで使用している言葉である「原因と結果」「因果律」として考えると、卵が先かニワトリがさきか?的な問答になってしまいますが、結果として確実にED治療薬とテストステロンの増加には相関関係が成り立っています。
エイジングケアは美容的な外面中心に捉えがちですが、体の内側から加齢による障害を取り除く事も「エイジングケア」ということを広く皆さんに知ってもらいたかったのです。つい最近、中高年以降の男性にとって夢の様な薬が厚生労働省によって承認されました。保険適用になるかは微妙な所ですが、適用の可能性が高いらしいです。
男性ばかりズルい!との人類の半分を占める女性から声が上がる事が予想されますが、今まで「男がエイジングケア⁉」なんて思われていたのですから、良いじゃないですか、オッサンのエイジングケアデビューをお国が後押ししてくれたって。