医師の桑満おさむです。2分に1組が離婚する現代の日本。離婚理由上位に入るであろう浮気。男女問わず、パートナーの浮気に悩まされている方は少なくないはずです。お相手の浮気グセだけでなくご自身の浮気性でお悩みの方も多いことでしょう。そんな浮気の悩みは治療できるかもしれません、というお話です。
人類の歴史は異性の浮気に悩ませられてきた?
パートナーの浮気性に悩ませられている方も多いのではないでしょうか?人類は原則的に一夫一婦制を取っていますが「俺は一夫多妻制だ!」なんて豪語しているツワモノのオッサンは最近はなりを潜めていると思います。浮気心で自分をコントロールできなくなって家庭内で大問題が発生した方もひょっとしているのではないですか?現在、日本では計算上では二分に一組が離婚している計算になっています。
厚生労働省ホームページより
離婚はお互いの悲劇でもありますが、子供のことを考えると離婚に踏み切れないといった悩みの相談を新聞紙上の人生相談で見かけるのも日常茶飯事です(新聞読んでいる人少ないか?)。以前、異性に誘惑される事を防ぐ薬があることを『女スパイの蜜の罠「ハニートラップ」に引っかからない方法が医学的にはあります』なんてタイトルでブログに書きましたが、今回は遺伝子治療の可能性を探ってみます⋯浮気で遺伝子治療なんて、そんなこと可能でしょうか?
浮気性の動物と一夫一婦を頑に守る動物
動物の生態をCS等で見るのも結構好きで、動物界におけるけなげな夫婦愛とか、どんどこ浮気をしまくる動物、自分の子供を平気で他人(?)に育てさせる鳥など、不思議なその生態に引きずられて睡眠不足ってこともタマにはあります。今回は医学専門誌に掲載されていた「プレーリーハタネズミ」と「サンガクハタネズミ」の生態にインスパイアされて、論文を見つけてきました。ひょっとすると遺伝子治療で浮気が治せるかもしれないのです。掲載されていた専門誌は「nature」ですので信頼度は高いものです。『Increased affiliative response to vasopressin in mice expressing the V1a receptor from a monogamous vole』というタイトルであり、一夫一婦制のプレーリーハタネズミと浮気者のサンガクハタネズミの脳内にある受容体をイジッタらどんな結果になったか、と言うものです。
- プレーリーハタネズミは一夫一婦である
- 近縁種のサンガクハタネズミは浮気性で乱婚性がある
- プレーリーハタネズミのオスは子育てをする
- サンガクハタネズミは一切子育てに参加しない
ということが以前から知られていました。この研究ではバソプレシンという物質がプレーリーハタネズミでは子育てを促進させるのに、一方のサンガクハタネズミではどういう訳か交尾を促進してしまうという点に注目しました。
この研究者は脳内のバソプレシン受容体(V1aR) の分布がサンガクくんとプレーリーくんでは違うという点に注目をして、遺伝子治療の方法を利用してサンガクくんの脳内でV1aRが少ない箇所にV1aR遺伝子を打ち込みました。すると浮気者のサンガクくんが奥さんと仲良くなっただけでなく、しっかりと子育てまで行ないました、というウソの様な話なんです。
人間への応用は可能か?浮気の遺伝子治療
遺伝子治療というのはがん治療にも実際に応用され、現在注目されている方法です。しかし、一方で「遺伝子をいじるなんて」という批判の声もあります(医学知識の欠如によるところが多いのですが)。その個体が次世代に伝える遺伝子自体を全取っ替えする訳ではないのに⋯。この研究を実際に人間に応用すると非常に面白く、人類に貢献できる結果が期待されるのですが、ある意味非人道的なこのような実験を許可する倫理委員会はまず世界広しといえとも皆無でしょうね。
サンガクくんとプレーリーくんの生態から考えると「子育てに参加するオス」は浮気性では無い傾向が強いかも知れませんし、逆に子育てにオスを参加させることにより浮気が抑えられるかもしれません(この辺りは原因と結果、因果律に非常に反しているという厳しい理系のオッサンのコメントは不可です)。
私は恥ずかしながら子育てマニアと周囲から呼ばれていて、子供が大きくなった今ではハリネズミを溺愛しております、とネズミつながりで今回のブログを締めさせていただきます。( ハリネズミってモグラの仲間だろ、という動物好きの理系のオッサンのツッコミは不可。)