医師は金儲け主義者が多い、その為にいらん薬を処方して、無用な検査を繰り返し行ない、儲かる予防接種のワクチンを薦める⋯との意見をお持ちの方が多数存在することは重々承知しております。
格好をつける訳ではありませんが、当院ではなるべく必要の無い薬は処方しないように心がけていますし、検査も必要最低限で済ますようにしています。ワクチン接種は医師の金儲けであるということに対しては決して儲かるものでは無いとの詳細な内容を「予防接種のワクチンをビジネスとして捉えてみました 果たして儲かるか?」というブログで説明を行なってきました。
金儲け主義の開業医の傾向
しかし、どんな業種でもお金に走ってしまう人がいるのは否定はしません。私も異常な頻度で検査を繰り返す開業医を知っていますし(しかし、あんた検査の結果の説明くらいしろよ!なんで私があんたが患者さんに行なった検査の結果を説明しなきゃいけないんだよ 怒)、必要性がまったく感じられない治療を繰り返しても患者さんの症状が全く変化ないなんて最低の医師もいます。
自分の能力を超えた範囲の症状をお持ちの患者さんを他の病院に紹介しないで抱え込む医師を「患者離れができない医者」と私たちは陰で呼んでいます。なかには全く必要の感じられない「在宅酸素治療」を少し息苦しい程度で押し付ける町医者さえいます。こんな実態をしった患者さんが医師を「金儲け主義」と呼ぶことは全く否定できないことです。
新しい治療器を導入して乱用する医師
医療機器は非常に高額であるために採算を取る為に必要でない検査・治療をついついしてしまう医師がいることも否定はできません。前立腺がんの治療に効果を上げるIMRTという治療機器があります。強度変調放射線治療という治療法のことですが、がん細胞に対してだけ放射線をかけることが可能であり他の正常細胞に悪影響を及ぼさないために有効な治療法であり通院で治療が可能であり是非日本でも一般的な治療方法として広く認知されることが望ましいのですが⋯残念な報告があります
IMRTの薦める病院は金銭的な要因が大きく作用する
これは米国の話なんですが、「Financial interests ‘driving IMRT uptake for prostate cancer’」(N Engl J Med 2013; 369: 1629–1637)と言う題名で掲載されていました。要するに米国では近年前立腺がんに対してIMRTを行なう泌尿器科医が急増しているのですが、他の治療法でなくこの治療法を薦める要因は金銭的問題である、という将に「医者は金儲け主義」を裏付けるような論文です。
・自分の病院にIMRTがある35施設とない35施設を対象として調査した
・院内にIMRTがあると32.3%のこの治療を薦めた
・院内にIMRTがないと15.6%のこの治療を薦めた
ここまでの解釈ですと、IMRTが優れた治療法であるので院内で済ますことができるのでこのような結果になったと言えますが、実は違うんです。
・院内にIMRTが無かった時はIMRTを薦めていたのは13.1%であったのに、導入して32.3%になった
ということも分かっています。
純粋にIMRTによる前立腺がんの治療が優れているのでというよりは、自院で済ますことができるのでそのような結果になっているとしか判断できません。
医師性善説・医師性悪説
他の多数の治療法が確立されている「前立腺がん」においてはIMRTが他の治療方法以上に有効であるというエビデンスはありません。しかし、泌尿器科医が自院でIMRTを実施できるという状況になると、ついつい患者さんにIMRTを薦めてしまっているのがこの研究で明らかになりました。医師性善説を取ればIMRTによる治療が患者さんに非常に好評で治療成績も問題なかったので、自分の医療機関に導入することによって症例数が増えた、という解釈ができます。
しかし、非常に高額な治療機器であるために「元を取るため」に多用したという解釈は性悪説を取らないでも人間としての自然な選択肢であると思われます。医師は常にこのような見方をされているということを常に意識して行動しなくてはなりません。
http://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/よりお借りしました
当院もIMRTが入院の必要性がなく、治療成績も他の治療と比較して劣っている訳ではないので導入を検討したことがありました。でも、あまりの高額とメインテナンスを考えると全く採算性はとれません。大病院でIMRTを導入しているところもありますが、同様に利益は上がらないようです。
日本の医療費って米国と比較するとトンデモなく安いのです。