心筋梗塞や脳卒中は、がん発症の前兆かもしれない?との医学論文を検証してみました。

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誰でもご存知のように日本人の死因の上位3つは「がん」「心疾患」「脳血管疾患」です。日本人の寿命が長くなるにしたがて、特にがんが死因の一位になることは大方の予想通りでした(がんが死因のトップになったのは1981年)。

がんは人間が生きている限りはどうしても生じてしまいます。がん細胞は細胞が増殖する時のバグと考えると、普通に生活していてもがん細胞は常に発生していても、複雑な免疫システムによって排除されています。

しかし、長生きすればするほど、がん細胞を処理しきれなくなり最終的にがんと診断されることになります。

死因の上位3つの病気は強いつながりがあるかも

死因のベスト3である、がん・心疾患・脳血管疾患は別々の病気だと捉えがちですが、実はこの3っの病気は深い繋がりがあるのではないか、と読み解ける論文があります。

「Arterial thromboembolic events preceding the diagnosis of cancer in older persons.」(PMID: 30578253 )はがんと心疾患・脳血管疾患の関連性について研究された興味深い論文なので、解説していみますね。

※脳卒中は脳の血管の障害によって起こる病気であり、脳出血と脳梗塞があります。

※心筋梗塞は心臓の筋肉(心筋)の血管である冠動脈が詰まることによって起きます。

心臓発作や脳卒中はがんの前触れ?

私はなぜか脳卒中恐怖症であり、自分ががんになることより心配していて、できるだけの予防をしているつもりです。まあ、医者の不養生と昔からいわれていますので、どの程度ケアしているかは自分でも大いに疑問ですけどね(笑)。

そんなこんなで、脳血管障害関連の医学論文で興味深いものは、できるだけEvernoteに記録しています。今月、人間ドックを受ける予定なので、トッピング的になにか検査を加えようか思いつつEvernoteの見返していたら前述の論文に目がとまりました。

ひょっとしたら脳卒中や心筋梗塞はがんの前触れなんじゃないかとの結論に至った、貴重な医学論文なのに読んだ記憶は無いのですが、これも老化現象の1つかもしれませんw。

さて本題に入ります。このグラフをご覧ください。

画像https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30578253より

がんと診断された人はがんと診断される前に心筋梗塞などの心臓発作や脳血管障害の脳卒中を起こしていたのです。

この研究

2005年から2013年までにがん(肺がん・前立腺がん・膀胱がん・膵臓がん・胃がん・悪性リンパ腫)と診断された米国の37万43231人が対象。

研究となったデータベースはメディケアに登録されていた症例を利用。

研究方法は既存のデータを振り返って分析する後ろ向き研究(retrospective study)です。

合計74万8662人のがんと診断されていない人(比較するためのグループ)とがんと診断された人について分析した。

以上の条件でデータを解析したところ、

血管がつまる病気である動脈血栓塞栓症はがんでは無い人と比較して、がんと診断された人の場合は有意に高かった。

がんと診断される1年前に動脈血栓塞栓症を起こしていた人は、がんでは無い人と比べると69パーセント高かった。

がんと診断された日に近づけば近づくほど、動脈血栓塞栓症の発症リスクが高まっていた。

がんと診断される1ヶ月前に、動脈血栓塞栓症の発症がピークになっていた。

この結果から、動脈血栓塞栓症はがんと診断される前触れの症状の可能性がある、と私は読み解きました。

心筋梗塞は心臓の血管が詰まることで生じます。脳卒中の1つである脳梗塞も脳の血管が血栓によって詰まることのよって生じます。

※血管の中で血が固まった状態を血栓、血の塊が血管を塞ぐことを塞栓と呼びます。

以上から「ひょっとしたら、心筋梗塞による心臓発作や脳梗塞による脳卒中はがんの前触れの可能性があるかも」と考えられるんじゃないかなあ。

心筋梗塞や脳卒中になったらがんの有無を調べた方が良さそうかも

信頼度の高い研究結果から、考えられるのは、心臓や脳の発作を起こしたら、ひょっとして見つかっていないがんがどっかにあるかもしれない、です。

こうなると近いうちに人間ドックを受ける予定の私としては、基本コースになんらかのトッピングをしたくなってきます(医師だって人間だもん、不安にもなりますぜ)。

脳のMRIとか、心エコーとか、血管年齢を調べると考えられている心臓足首血管指数 CAVI(cardio-ankle vascular index)もオプションでやった方がいいかも、と悩んでしております。

理由なき脳卒中恐怖症の私としては、少しでもリスクを低下を考えて動脈硬化を防ぐために高脂血症の薬はかなり以前から愛用していますし、血栓予防のためにアスピリンも常用しています。

私の場合、これによって心筋梗塞のリスクも減り、脳卒中のリスクも減るはずなので、結果的にがんと診断されるリスクも減るかといえば、そんなことは無いですよね。

がんと診断される前に心筋梗塞を起こしていようが、脳卒中を起こしていようが、この発作によってがんが発症するわけじゃないですから(相関関係にあっても因果関係では無いから当然)。

心筋梗塞や脳卒中はがんの前兆かもしれない論文、見落としていた点がありました

Evernoteに記録していた今回取り上げた衝撃的な医学論文(少なくとも私にはかなり衝撃的だった)、もう一回読み直したところ重要な条件を見落としていました。

心筋梗塞や脳卒中ががんと診断される前触れかも、ってタイトルにしっかり「older persons」って書いてあるじゃん。67歳以上を対象とした研究であり、私は関係なさそう。故に人間ドックはトッピングなしで基本コースを選択する予定です。

そもそも人間ドック自体が過剰検査・過剰診断の温床かも、との話もあるようですが、その件に関しては今回はやめておきます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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