検診と健診と人間ドックの違い、そして当院では区健診をおこなっていない理由。

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皆さんは人間ドックは健診や検診とは違うものだとの認識はされていると思いますが⋯健診と検診の違いってご存知でしょうか?

患者さんが「先日の人間ドックの結果です」と出された検査結果報告書が健診のものであったり、「先日、病院で検査を受けたのですが」とお持ちになったものが、実は血液型までご丁寧に検査してある人間ドックの報告書だったりすることがよくあります。

検診と健診は違うし、人間ドックは大きく違います

最近、定期的に人間ドックを受診するようにしています。人間ドックはあくまで任意で受診するものであって、人様に強制することも、されることもないもの。

世間が新型のウイルスでパニック状況になっている昨今です。不要不急の外出はなるべく控えて感染拡大を抑制するべき時期ですね。感染が起きやすい場所として医療機関が挙げられます。なにもわざわざこの時期にひょっとしたらウイルスがウヨウヨしている可能性のある医療機関に出向いて人間ドック受けることもないかなあ、と0.00001秒くらい考えたのですけど⋯そもそも私って医者じゃん。

私が定期的に人間ドックを受けている医療機関は「今ならお得、早割キャンペーン」的なDMが送られれくるお茶目な面のある半公的地域の核となる病院です。

早割キャンペーンのDMが届いたので、昨年末に速攻で申し込みしていたので家人と共に予定通り来週受診予定です。

ところで皆さんは人間ドックは健診や検診とは違うものだとの認識はされていると思いますが⋯健診と検診の違いってご存知でしょうか?

患者さんが「先日の人間ドックの結果です」と出された検査結果報告書が健診のものであったり、「先日、病院で検査を受けたのですが」とお持ちになったものが、実は血液型までご丁寧に検査してある人間ドックの報告書だったりすることがよくあります。

改めて健診と検診と人間ドックと、なんで「けんしん」なのにオプションで腫瘍マーカーをやってんだ的なヘンテコな医療機関もあるよ、と余計なお世話的な話を述べてみますね。

健診は健康診断の略とは限らないんだなあ、実は

健診は健康診断を略したものであって、常日頃は全く健康状態に異常や異変を感じていないけど、ひょっとして症状が出にくいなんらかの病気にかかっていないかをチェックするものです。

一般的には健診は健康診断の略だと思われていますが、実は違う場合もあるんだよなあ。

この健康診断(略して健診)には何種類かあります。

特定健診

正確には特定健康診査と呼びます。40歳から74歳を対象として、メタボリックシンドローム(普通は略してメタボと呼びますよね)に関する健診。自営業者は市町村区などの自治体、会社勤めの人や家族の方は勤務先から案内が来ることになっています。でも、お役所仕事的な複雑なシステムになっていて、会社における事業者健診(いわゆる会社で行う健診)を受けた人は受ける必要がありません。

特定健診にはおまけがついてきます。おまけの名称は「特定保健指導」、特定健診でメタボあるいはメタボ予備軍と判断されると生活の見直しを求める保健師さんや管理栄養士の指導がもれなく付いてきます。

実は特定健診って本当に死亡リスクを下げる効果があるのか?というそもそも論的な疑問が多くの医療関係者から寄せられてる、平成20年から突如開始された健康診断であることを余計なお世話とは思いますが付け加えておきますね(これでまた保健所経由で医師会からお小言くらうかも)。

自治体による健診

自治体が行っている区健診などのこと。目黒区の場合は「目黒区特定健康診査」と呼んでいます。

ねっ、健診と略されるけど健康診査の略であり、健康診断の略じゃないでしょ。

社会保険に加入していない国民健康保険加入者を対象として行われています。対象は40歳以上の国民健康保険加入者と後期高齢者医療制度に加入している人。受診期間は毎年6月から11月になっていて⋯この件で私は区の健康推進課成人保健の方と大揉めにもめたことがあります(詳細は後述)。

定期健康診断

定期健診と呼ばれる、職場で行う労働安全衛生法や労働安全衛生規則で決められた健康診断です。会社が労働者に年一回の健康診断をおこなうように義務付けられたものです。

健診と読み方は同じである「検診」はちょっと意味に違いがあります。

検診の目的は検査、ある病気を狙ってチェックします

検診はある病気を見つけるために検査することが目的です。現在行われている検診はがん検診や歯科検診です。

がん検診に関しては科学的な根拠に基づき早期発見が死亡リスクを下げることが明らかになっているがんのみが対象となっています。

対象となっている「がん」は次のようになっています。

  • 胃がん
  • 子宮頸がん
  • 肺がん
  • 乳がん
  • 大腸がん

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https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html

あれっ?私が専門としている泌尿器科領域の代表的ながんである前立腺がんが抜けています⋯これも区の健康なんちゃら課と当時の医師会理事とバトルを繰り広げまして苦笑(詳細は後述)。

検診はある特定の病気を見つけることを目的として検査をすることとお役所的には決めているようです。なんで健診と検診を同じにしなかったのか等の素朴な疑問が噴出してきますが、このあたりは大人の事情があり、大人の対応をすることが推奨されていおります(って誰が推奨するのかは不明笑)。

人間ドックは任意健診との位置付けです

来週あたりの私が受診するのが人間ドックです。ドックは本来は船の修理をする施設の「dock」のことなのですが、人間が問題点が無いかをチェックする様子を人間が船がドックで検査するようだね、じゃあ「人間ドック」とのネーミングはどうでしょう、おっそれいいね、いけるね、なんて感じで決まったんじゃないかなあ(エビデンス無し)。

人間ドックは前述の健診と検診を組み合わせた上にさらに様々な本来は必要かなあとの疑問も出まくりのオプションをトッピングすることが可能です。

なかにはアレルギー検査とかどう考えても意味がないような腫瘍マーカーのトッピングも用意されているようですけど、人間ドックは法律で受診を義務つけられているものでもないですし、全費用が自分もちの自己負担ですから外野がゴチャゴチャ言うことでもないかもしれませんね。

もちろん当院に通院の方の人間ドック受診に関してはもちろん相談に乗らせて頂きます。しかし、毎年血液型を調べる人間ドック、非常に不思議な気持ちがします。

当院が目黒区の健診をおこなっていないわけ

以前は当院も区の健康診査を行っていました。私自身も医師会のがん検診委員さらにはがん検診委員長を任命され、それなりにやってきました。

でも以下の理由によって現在は当院は区の健康診断を行っていません。

●前立腺がん検診を住民向けの検診としては日本で何番目という時代に、区と医師会の協力のもとパイロットスタディ的に開始しました。PSAの検査精度を高めるために、委託する民間検査会社を絞ったのに、「ある民間検査会社に限定するのは裏になんかあるのでは?」との下種の勘繰りをした下品な医師会会員がいた。

●PSAを使用した前立腺がん検診が2年目でいったん終了となり見直しとなった時に、区との交渉の席で私が「目黒区の職員の健康診断はPSAがもれなくついている」と指摘したら、某医師会理事から公衆の面前で「そのような高度な政治的判断をこの場でするな!」と怒鳴られた。

●健診の受診率を上げることを検討する委員会で「なにも6月から11月と限定しないで、お誕生日の月と前後の月に受診できるようにすれば良い」と意見を述べたら「馬鹿野郎、案内を送る区の手間がかかるじゃないか!」とこれまた多人数の目の前でへんな当時の理事に怒鳴られた。

「手間なんかかりませんよ、隣の世田谷区はお誕生日の月と前後の月に区の健診を受けるようにしているじゃないですか」と私が返したら「そんな高度な政治的判断を医師会に持ち込むな!」と怒鳴られたの二乗状態。

●「肺がん検診を区の保健所のボッロボロのレントゲンで撮影していたらいつかは誤診が出てしまう。保健所の肺がん検診を即座に中止するべきでは?」と述べたところ、区の健康系の偉いおじさんに呼ばれて「あのねえ、区の保健所のレントゲン技師の仕事が無くなっちゃうでしょ。彼らが退職するまで、その発言はがまんしてね」と言われた。

そんなこんなの状況下で健診の受診率を上げるために、対象としている年齢の当院の患者さんに区健診の案内のDMを送ったところ目黒区医師会長から直々の呼び出しがかかり「桑満先生、DMなんかおくらないでくれ、と周囲の他の先生からかなり苦情が来てるんだよ」と言われました。

そこで「えっ、だって受診率を上げろとのことだったじゃないですか?」と返答すると「内科の先生にとって、区の健診は重要な収入源。先生の専門は泌尿器でしょ。周囲のことも考えてよ」と説得されました。

そこで思わず「だから普通に病気で定期的受診しているおなじみさん的な患者さんにも区の健診を受けさせてるのですね」と言ってしまったから、さあたいへん。医師会長は多分血圧が200超えするくらい顔を真っ赤にして「○%&♂=♀◎♭♯♪☆❗」。

こっちも当然ちゃぶ台返しして、呼び出された医師会長のクリニックを後にしました。速攻で医師会宛に「来年度から当院は区健診をやめます」とのFAXを送りつけましたとさ。

目黒区は医療機関が多数ありますので、当院が区の特定健康診査を行っていなくても住民の健康状態には影響は無いと思います。

まあ、今の医師会は昔ほど古臭い頭のジイさん集団ではありませんし、若い先生達の積極的な活動により風通しのよい仲良しクラブ的な集まりになっています。

そういえば私が目黒区医師会に入会した時、医師会からの伝達事項は回覧板。そうです、町内会で見かける回覧板だったのです。医師会の部長だったときに「もうファックスにしましょうよ」との意見を述べたら「ファックスが無い先生もいるんだから、回覧板じゃなきゃダメ」と某理事からご意見をいただいたっけなあ。

ちなみにこれが目黒区医師会のホームページです(ウェブサイトなんて言葉を使う人は医師会内にはたぶん数人笑)。

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https://www.meguroku-med.jp/

会員専用ページまであるんだぞ❗

以上は15年以上前の古い話なので、記憶違いの可能性もあります、ちょっとバイアスがかかっている、めちゃくちゃ信頼度の低い一開業医の昔話程度に受け止めてくださいね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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