「デング熱」って病気は医学部で習った記憶はあったのですが、単に「天狗熱?」と名前が面白いから記憶に残っていただけなんです。開業して数年経った時にハワイに在住している方が親戚がいる日本にやってきて「熱っぽいので、ひょっとしてデング熱じゃないか?」と診察に訪れた時、「日本じゃ、まずあり得ませんよ!」と伝えました。しかし、今年になってから昨年日本を訪れたドイツ人女性がデング熱に罹って、日本で感染した疑いが出てきています。と言うことは、日本発のデング熱があり得るということになります。私の記憶では日本ではここ数十年間は発生していないはずなので、少し調べて見ましたのでブログにさせていただきます。
デング熱って変な名前ですが⋯
日本でも流行したことがある「デング熱」
デング熱はデングウイルス(Dengue virus)によって引き起こされる感染症です。ネッタイシマカやヒトスジシマカによって感染が広がる病気ですので、日本は熱帯ではないので通常の生活で罹ってしまう病気との認識はほとんどの日本人医師がもっているはずです。現在では日本人の感染は年間10から20人なんですが、海外旅行が切っ掛けと考えられていますが、世界中では年間一億人程度が感染している病気ですので、当院を受診したハワイの方が気にされるのも当然だったのです。日本でも第二次世界大戦中の1942年から1945年にかけて関西を中心に20万人が感染しています。
基本的に死に至ることは少ない病気ですが、デング熱だけではなく、「デング出血熱」という病気を引き起こす場合もあり、この病気はちょっとヤバい感じが名称からも伺えます。実際このデング出血熱になってしまうと最初は発熱だけで「デング熱ですから」と対症療法である解熱剤を処方して、熱が下がってきたと思ったらいきなり出血を起こすのです。出血する箇所は鼻血とか下血(消化管よりの出血)であり、映画等で謎の病原ウイルスに犯され場合に出てくる症状のようで結構怖いです。当然、適切な対応をしないと循環血液や体内の水分不足で死に至ることもあります。
都市部で発生しやすいデング熱の意外性
1970年以前は発生している国は9カ国くらいであり、世界的にも流行しているような病気ではありませんでしたが、近年発生国は増加していて、アフリカ、南米、東南アジアなどの100カ国以上で流行しつつある感染症となっています。WHOによると2010年にはアメリカでは160万人(❗)が感染して、そのうち5万人程度は重篤化していました。小児がこのデング熱に感染すると重症化しやすく、国の医療体制にも左右されますがそのうちの2.5%が死亡するので、映画のイメージのようにかなり怖い深刻な流行性の感染症であると言えます。
このデング熱ですが、熱帯地方で流行すると言うことからジャングルや未開発地で感染するイメージをお持ちになるでしょうが、媒介するネッタイシマカは都会が好きなんです。また蚊の多くは夜間に人間の血を吸う傾向がありますが、ネッタイシマカは日中に吸血する傾向があります。冬に蚊にさされることってあまり無いと思いますが、地球が温暖化していることのよりネッタイシマカにとっては住みやすい環境が整ってきています。
今回、感染したと思われるドイツ人女性は2013年8月に山梨県笛吹市で蚊に複数箇所を刺されたと言っているそうですが、日本人の感染者と思われる届け出がないのが不思議に感じられます。ひょっとすると日本人感染者も発生している可能性もありますが、私が診察したハワイの方のように「日本じゃまず考えられないですよ!」との一言のもとに解熱剤などを処方されてしまっているかもしれません。
医師が取ってはならない態度は「自分の経験値だけに頼ること」。幅広い情報の獲得が正しい治療に繋がります⋯と言ってもネットや週刊誌・雑誌のたぐいばかりの情報収集もいけません。