ワイドショーのヘンテコな感染症情報は医師の発言であっても間違いだらけ、不安を煽るだけ。

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ワイドショーで流されている新型コロナによるヘンテコな感染症関連情報が多くの人をパニック状態にしています。本来ならば視聴者の不安を取り除くために正確な医学情報を放送するべきなのに、余計な危機感を煽って不安にさせることに力をいれているとしか判断できない内容で構成されている番組が朝から夜まで垂れ流されています。

人をパニックにさせないための安心させるための偽りの情報よりも性質が悪いと思います。専門家と称する人の意見が様々ですが、誰が言ったかではなく、信用するかどうかはあなた自身にかかっています。

新型コロナ感染症関連の話題をワイドショーが取り上げる際の代表的な主張はコレ

ラテ欄がコロナ関連の話題で埋め尽くされている

ワイドショーで特に多いのが、以下のような主張です。

  • 早め早めにPCR検査をすることによって重症化が防げる。
  • 医師が保健所に電話してもPCR検査が受けられない。
  • 感染が心配な人は全例PCR検査が受けられるようにしろ。

などをコメンテーターや時に司会者、さらに登場する一部の医師や医療関係者が声高に主張するのが主流となっています。

しかし、彼ら彼女らが伝えていることは理論的に正しいものなのでしょうか?感染症を専門とする疫学者、感染予防のエキスパート、感染症治療の専門家、そして感染症は専門外であっても真っ当な普通の医師は、テレビで流されている今回のヘンテコな感染症パニック騒動に対するテレビ番組が伝えている内容に大きな疑問をもっているのです。

ワイドショーの主張がまかり通ったら医療崩壊の大きな原因になります。

テレビに登場しているコメンテーターや医師の主張がどのように間違っているのかを、できるだけ誰でもがわかりやすいように解説を試みてみたいと思います。

私は感染症の専門家でもありませんし、権威ある医学研究者でもありません。普通の町医者である点をご理解の上、お読みくださいませ。また、政府の今までの対応への文句もないわけではないです。また、医療費および経済的な混乱等に関しては今回は切り離します。

とにかくPCR神話に多くの方が惑わされている現状を微力ながらどうにかしないといけないと考え、記事を書き進めます。

昨日はこんなの書きました。

【モーニングショー】ヘンテコな感染症の検査におけるバックファイア効果とダニング・クルーガー効果。

【モーニングショー】ヘンテコな感染症の検査におけるバックファイア効果とダニング・クルーガー効果。

翌日もおなじようなPCR至上主義ワイドショーを観てしまい、第二弾を書かずにはいられなくなっちゃいました。

楽天がやらかしちゃったようです(2020年4月23日追記)。

楽天の検査キットは私たち国民の努力を無駄にする。

楽天の検査キットは私たち国民の努力を無駄にする。

医療崩壊を防ぐための外出自粛という、私たち国民の努力が一気に吹っ飛びます。

PCR検査で早期発見したら早期治療につながり重症化を防げるか?

病気を早く見つけ、早く治療することが重症化を防ぐ、あるいは命を救う、と一般的には考えられています。間違いでは無いのですけど、中には治療する必要が無い病気を見つけてしまうことがあります。

病気を早く見つけることが重症化を予防するとは限りません。効果的な治療方法が確立されていない病気を早く見つけても、重症化や死亡リスクを下げることが可能にはなりません。

新型コロナによるヘンテコな感染症の効果的な治療方法はまだ世界中で模索中であり確立はされていません。

さらに重症化、残念ながら死亡した方の傾向は持病がある、高齢である以外には見つかっていません。

中国が発表しているデータより

https://mainichi.jp/articles/20200220/k00/00m/040/301000c

2020年2月20日にわかった中国のデータです。

PCRは入院が必要な肺炎の中でさらにウイルス性肺炎が疑われる場合に行われるのが原則です(日本環境感染症学会 「水際対策から感染蔓延期に向けて」参考)。

肺炎のような症状が出てしまう疾患は多数あります。PCR検査を多用しても重症化および死亡リスクを下げることにはならないのです。

中国・武漢の病院、長蛇の列 募る恐怖といら立ち

AFP「中国・武漢の病院、長蛇の列 募る恐怖といら立ち」(https://www.afpbb.com/articles/-/3265340)

新型コロナのPCR検査を受けにいって感染してしまうリスクもあることにご注意ください。

医師が直接公的機関にPCR検査を依頼しても、拒否された、との話の疑問点

テレビの情報番組で見かけた場面です。受診した患者さんがひょっとして新型コロナ感染していると判断(診断?)した医師が保健所に直接PCR検査を依頼したら断られた、と話をしていました。その話を聞いたコメンテーターらは「医師が直接依頼してもPCRができないなんて、保健所はなにをやっているんだ!」的な怒りモードで満載でした。

でもこの話は大混乱であったとしても事前に新型コロナ感染者に対する対応方法が通達されています。

1:熱がある、体調がすぐれない方はまずは直接医療機関を受診しないで、帰国者・接触者相談センターに電話相談する、これが鉄則です。

発熱をはじめとした自覚症状がある方へのお願い

これは医師会から配布されたものです。

「PCRお願いします」と市中のクリニックを受診してもダメですし、大病院に行ってもダメです。たまたま公表はされていない帰国者・接触者外来を設置している医療機関をたまたま直接受診した場合にどのようになるかは不明です。

普通は一般開業医からの紹介状がないと通常の診療も受けられませんし、感染疑いの方が一般の出入り口を利用したらその病院は一時的に機能が麻痺します。絶対におやめください。

注意:帰国者・接触者外来を設置している医療機関が感染症指定医療機関だとは限りません。逆に感染症指定医療機関が帰国者・接触者外来を設置しているとも限りません。

かかりつけ医がある方は電話で担当医に相談するのも可能で、明らかに新型コロナ感染では無いと判断されたら、その医療機関を受診することも可能です。

2:重症化しやすい、あるいは基礎疾患のある方も、まずは帰国者・接触者相談センターに電話相談することが最優先です。帰国者・接触者相談センターからかかりつけ医を受診するように指示されたら、かかりつけ医に電話で相談をします。

感染が疑われる人はどこに連絡して、どのような対応を受けるべきかのフローチャート

新型コロナ感染症に関しては、医療機関向けには事前に情報が厚生労働省を通じて各医師会から伝達されています。

上記画像は医師会が配布した「帰国者・接触者相談センターへ相談後のフロー」。これは厚生労働省が公開しています(https://www.mhlw.go.jp/content/000600880.pdf)。さらに詳しく知りたい方はぜひ全文をお読みください。

このフロー(4フローあります)を取り上げて議論しているワイドショーは私は少なくとも目にしていません。

かかりつけ医が新型コロナを強く疑った場合、相談者は事前に知らされている帰国者・接触者相談センターにその旨を電話連絡をして帰国者・接触者外来が設置されている医療機関へ誘導されます。

かかりつけ医と帰国者・接触者相談センターの判断によって、新型コロナ感染が濃厚となった時点で初めて帰国者・接触者外来が設置されている医療機関を教えてもらえて、受診することになります。

もしも、一般医療機関を受診するように指示され、受診した時点で様々な情報をもとにやはり新型コロナ感染症の疑いが強い場合は、帰国者・接触者相談センターに電話相談した時に伝えられた帰国者・接触者相談センターの電話番号に再度連絡をします(患者さんが会話できないような状態であったら、診察した医師からの電話も受け付けています。これは確認済み)。

3:新型コロナのPCR検査はたとえ帰国者・接触者外来を設置している医療機関や感染症指定医療機関でさえ検査機器を自前でもっているとは限りません。

そのため国立感染症研究所などの限られた機関へ患者さんから得た検体を提出して検査結果を待ちます(いまのところ翌日になることが多い)。どのような病気であっても症状等から判断した優先度があるので、PCR検査が後回しにされてしまうこともあります。

感染指定病院で明らかに新型コロナではない、と判断されたら「PCR検査は必要ない、他の疾患である」と言われることもあるかもしれません。新型コロナと他の疾患を鑑別診断するのにPCR検査だけに頼るのは、まっとうな医師はいないはずです。

私が観たワイドショーに登場していた医師の話は、医師が直接帰国者・接触者相談センターに「PCRをやってください」と2時間かけて話しても受け付けてくれなかった、との内容でした。

厚生労働省のサイトを見たり、医師会からの伝達事項を見ていなかったのでしょうか?と素朴な疑問を私は抱いています。

なぜ上記のような手間がかかる仕組みになっているのでしょうか?

理由は簡単です、帰国者・接触者外来を設置している医療機関に患者さんが殺到して通常の医療活動ができなくこることを避ける必要があるからです。

画像 クリニックの入り口に感染症予防対策のお願いのお知らせ

混乱回避、院内感染予防の為に、当院は入り口にこのような表示をしています。

PCRはとにかく必要、じゃあ、偽陽性・偽陰性問題はどうするの?

どのような検査であっても間違った判定をしてしまうことがあります。以下の話は難しいものではないのでお付き合いください。

まず、定義を知ってください。

PCR検査の定義

●感度

ウイルスに感染している人のうち、検査が陽性になる人の割合

●特異度

ウイルスに感染していない人のうち、検査が陰性になる人の割合

●偽陽性率

ウイルスに感染していないのに、検査が陽性になる人の割合

●偽陰性率

ウイルスに感染しているのに、検査が陰性になる人の割合

●有病率

検査する人全体の中で、ウイルスに感染している人の割合

現時点で新型コロナのPCR検査の感度も特異度もわかっていません。また、有病率もわかっていません。

PCR検査をどのような症例であっても受け入れるべきだ、と強く主張している医師がこのようなことをツイートしました。

「新型コロナのpcrの陽性的中率の議論。私は風邪患者の2割程度は新型コロナだと考えています。感度7割、特異度9割」その陽性的中率はこうなったよ、とのツイートです。

陽性的中率という言葉がでてきました。陽性的中率は次のように定義されています。

●陽性的中率とは?

検査で陽性になった人のうち、本当にウイルス感染している人の割合

これを当てはめて1000人にPCR検査を行った場合はこのようになります。

画像

陽性的中率はa/a+bですから、140人/140人+80人=0.6363⋯。

陽性的中率は64パーセントになります。

なぜかこの先生は陽性的中率を間違えていますけど⋯

@KamiMasahiroのtweet

https://twitter.com/KamiMasahiro/status/1232529986243837952

ここで問題になるのが偽陽性と偽陰性。

上記の場合、

偽陽性と判定される人は80人、偽陰性と判定される人は60人でてしまいます。

本来ならば感染していないのにウイルス感染していると診断されたらどのような気持ちになりますか?

もしも、ウイルス感染しているのに感染していないと診断された人が街中をうろうろしていたら、感染がさらに拡大してしまいませんか?

新型コロナによるヘンテコな感染症と診断するための1つの手段であり、PCRの結果だけで確定診断を下す医師は稀だと思いますし、思いたいです。

今回の新型コロナによるヘンテコな感染症を国難と表現しているテレビ番組さえありました。

国難と言うのであれば感情論ではなく、たんなる経験談ではなく、科学的医学的な根拠に基づいた判断が必要なのではないでしょうか?

ワイドショーにおける新型コロナによる感染報道の間違いや誤解を招く表現について事実および根拠をもって批判させていただきました。

本当はもっと具体的に登場する医師のへんてこな発言に対する疑問が多数あるのですが、できれば安寧な生活を送りたいのでこの辺りでやめておきます。

追記 感度ばかりが注目されていますが、特異度も考えないとね。

新型コロナウイルスPCR検査は感度だけじゃなく、特異度も考えないとダメ

新型コロナウイルスPCR検査は感度だけじゃなく、特異度も考えないとダメ

淡々と計算したら、かなり混乱を招くことがわかり、自分でも驚きました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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