ベビーピール、古くて新しいケミカルピーリングの効果と注意点。

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美容系の施術とか美容機器とは絶妙なネーミングが付けられることが多いです。最近当院で入れた新しいケミカルピーリングの薬剤として「ベビーピール」なるものが人気です。

サリチル酸マクロゴール+コウジ酸=ベビーピール

ベビーピールは英語だと「baby peel」ですから、直訳すると「赤ちゃんを剥いちゃう」というかなりヤバいことになってしまいます。

もちろんベビーピールは赤ちゃんのような肌になれるケミカルピーリングの1つ方法です。ケミカルピーリングは美容医療初心者からベテランまでに利用されている、美肌になるための基本中の基本です。

ベビーピールの主成分はサリチル酸マクロゴール(サリチル酸をマクロゴールという基材にとかしたもの)。

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美容医療に使用する薬剤とは思えない質実剛健的な容器にベビーピールは入っています。

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いわゆるテクスチャーはこんな感じのです。ドロドロ、ネバネバかな。

サリチル酸(salicylic acid) は皮膚を柔らかくする作用があり、角化した皮膚を除去する(剥ぐ Peelする効果)を期待して、ケミカルピーリングの薬剤の1つとして知られていました。しかし、サリチル酸がどこまで皮膚の奥底まで届いてしまうのか、時間によるものか濃度によるものか、明確な見解が出ていませんでした。

ちなみにイボやタコができた時にドラッグストアなどで、手にしたこともある方も多いと思われるスピール膏の主成分はサリチル酸です。だからあのようにベロっと皮膚が剥がれるのです。

しかし、サリチル酸の働きによって、タコやイボが取れるかの如く、皮膚がベロっと剥がれてしまったら大騒ぎですよね。

そこで考案されたのがサリチル酸マクロゴールです。

サリチル酸にマクロゴール(macro goal 別名はポリエチレングリコール「polyethylene glycol」、化学式は HO- (CH2-CH2-O) n-H)に溶かし込むことによって安全にケミカルピーリングが行えるようになりました。マクロゴールは毒性が無いと考えられているために軟膏剤、坐剤の基剤など医薬品分野で使用されています。

ベビーピールはサリチル酸マクロゴールに美肌作用のあるコウジ酸(kojic acid) を加えています。

ベビーピール、サリチル酸に期待できる効果

サリチル酸は水に溶けにくい性質を持っています。熱湯には溶けますけど、それをピーリングの施術に使用したら当然やけどを起こしますので、扱いにくいピーリングの薬剤でした。

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それをマクロゴールという基材に混ぜ込むことで安全にピーリングを行うことが可能になったのです。

サリチル酸は次のような効果があります。

●微生物に対する抗菌性

●角質を剥離する

●皮膚を柔らかくする

この作用を考えると、ニキビにお悩みの方向けのピーリング薬剤として有効です。

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「Salicylic acid peel (Acne peel) 」(Hong Kong J. Dermatol. Venereol. (2005) 13, 83-85)

これは海外(韓国)の症例です。ニキビに効果があることがわかります。

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https://www.skintherapyletter.com/melasma/melasma-post-inflammatory-hyperpigmentation-treatment/

この症例は肝斑に対してサリチル酸ピーリングを二回行ったものです。コメントとして「結果は微妙。複数回の組み合わせ治療が必要」と厳しいことが書かれています。しかし、サリチル酸だけだとPHは1.7くらいあったような気がするけど大丈夫なのかな⋯。

肝斑に対するサリチル酸によるピーリングには限界があるようです。そこでコウジ酸がプラスされたベビーピールの効果を検証してみます。

ベビーピール、コウジ酸に期待できる効果

コウジ酸は漢字で書くと麹酸ですね。このコウジ酸は現在では化粧品業界が注目している成分です。

日本酒を作る時に麹を使います。日本酒を作る作業を行う杜氏の人の手が綺麗で白いことに気付いた人が、その後研究を重ねてコウジ酸がその美白成分であることを突き止めた、なんてストーリーがありますが、真偽は不明です。

私が知る限りでコウジ酸を麹から分離して医薬部外品として厚生労働省に承認を得たのは三省製薬です。

三省製薬の資料によるとコウジ酸の美白効果はこのように説明されています。

メラニンをつくる酵素の働きを抑えるだけでなく、メラニンの生成が始まる前に先まわりする、早い段階からのアプローチ。中でも、メラニン生成を促す「情報伝達物質の産生」「活性酸素の発生」「炎症」の3つのダメージを効果的に抑制し、メラニン生成を未然に防ぎます。

https://www.dermed.jp/technology/kojicacid/より

さらに

コウジ酸は細胞やその機能は傷つけず、メラニン生成だけを抑える、安全性と美白力に優れた成分である

と述べています。

またコウジ酸には老化によって肌の黄色いくすみも改善するとのことです。

上記よりコウジ酸は私見としては肝斑に効果が期待できると判断します。

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少し古い論文ですが、効果の根拠はあります。

これは動物実験レベルですが、シワに対する効果もコウジ酸にあることが報告されています。

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「Prevention of the photodamage in the hairless mouse dorsal skin by kojic acid as an iron chelator.」(PMID: 11137872)

ベビーピールの流れ

まずはクレンジングをします → 美容スタッフが適量のベビーピールを手にとって(当然手袋着用)、手で温めつつ伸ばします → 顔全体にベビーピールを塗り広げます → 5分程度待ちます → ベビーピールを拭き取ります → 肌にベビーピールが残らないように洗顔をしていただきます → その後、イオン導入によって必要と思われる薬剤を肌に入れ込みます

ざっとこんな流れで、要する時間は15分程度。費用はベビーピールとイオン導入を合わせて1万5000円(税込です)。

ベビーピールを受ける前に注意があります。

●ベビーピールを受けた後の日焼けは厳禁

●ピリピリした感じがしますので、そのような刺激に弱い方はご遠慮ください

●妊娠中の方・授乳中の方

●施術部位に傷のある方

以上に当てはまる方にはおすすめできません。

ベビーピールを行う上でメーカー側は注意喚起をしていませんが、当院としては次のような点に注意をしています。

●サリチル酸の特性上、アスピリン喘息のある方はご遠慮ください。

塗ったサリチル酸が原因で喘息が起きる可能性は低いですが、美容医療は一般の医療と違って病気を治すことを目的とはしていないので、リスクを犯すことも無いと判断します。

アスピリン喘息が心配な方向けに、他の薬剤を使用したピーリングやピーリングと同等の効果が期待できる施術もあります。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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