蜂蜜の殺菌作用を期待して医療現場で使用されているけどほんとに効果あるの?

更新日:

ハチミツに殺菌作用があるらしいというのは「おばあちゃんの知恵」的なものだと思っていたら、海外では実際に医療現場で使用されているという話にまずは驚きました。

医療現場で蜂蜜が使用されていたけどその効果を研究・調査した人がいて「抗菌薬を上回る効果は無かったよ」との論文を発表したってことに更に驚かされました。どんな人がけがをした時「あっ、傷の処置は蜂蜜でお願いします」とか医師サイドが「この傷は蜂蜜塗っておきますね」なんて会話が病院で行なわれていたら、始めから家でハチミツ塗っておけばいいんじゃないのですか?

なんと医療用のハチミツもあったりするのです。

医療用蜂蜜の効果を検証した意地悪な人

腎臓の働きが悪くなった人に「人工透析」という治療をすることは知られていると思いますが、わざわざ透析専門施設に行かなくても自宅で透析をする方法があり「腹膜透析」と呼ばれています。日本ではあまり普及していませんが、医療費を抑える効果がある為に海外では割と使用されている治療方法です。お腹に管を入れますので、その部分にばい菌がつかないようにする為にオーストラリアやニュージーランドでは医療用ハチミツ(Medihoney) が使用されています。

医療用ハチミツ(Medihoney)

今回お腹に通す管の周囲に一方はこの「医療用蜂蜜」を、もう一方は感染した時のみ抗生物質の塗り薬を使用してどのような結果がでるか、という調査研究をした人がいます。なんだか、前者には選ばれたくない研究ですし、人道的にいかがなんでしょうか?と思ったのですがこのMedihoneyは医療用とされていますから、オーストラリアとニュージーランドの人はあまり気にしなかったことが予想されます。

やっぱり殺菌効果は期待薄の蜂蜜

今回の研究は186人は通常のカテーテルのケアにプラスして医療用蜂蜜を毎日、お腹に塗りました。もう一方のグループ185人は通常のカテーテルのケアに加えて抗菌剤をお腹に塗りました。
その結果

  • 蜂蜜グループはカテーテル周囲の感染リスクが1.85倍高かった
  • 蜂蜜グループは腹膜炎のリスクが2.25倍高かった

という圧倒的に蜂蜜グループにフレイな結果が出てしまったのです。 「antibacterial honey for the prevention of peritoneal-dialysis-related infections (HONEYPOT) : a randomised trial」(The Lancet Infectious Diseases, Volume 14, Issue 1, Pages 23 – 30, January 2013) に掲載されていた、当たり前といえば当たり前の結果を導いた研究でした。

これはどうでもいいことなんですけど「HONEYPOT」というタイトルを今回の研究につけていますが、頭文字をとったものかと眺め回しましたが、そのようなイニシャルは見つけられません。ひょっとしてこの研究に携わった人の名前のイニシャルかとも思いましたが、それも違います。「HONEYPOT」って他に何かスラング的な意味があるのでしょうか?ご存知の方がいらしたらぜひご教示くださいませ。

医学論文ランセット蜂蜜の効果

はちみつの抗菌作用の有利な点もあります

抗生物質・抗菌剤は使用しているうちに「耐性菌」と呼ばれる薬が効かない菌が出現してきます。例えば「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」略してMRSA。通常であればなんて言うことない、ありふれた「黄色ブドウ球菌」ですが、抗菌剤の日常的使用や乱用によって、薬の効果が期待できない「薬に耐性をもった菌」として遺伝子を換えて出現してきます。体力がある人であればご自分の免疫でやっつけることができます。

しかし、高齢者や幼児の場合、これらの菌に感染してしまった場合、効果のある抗生剤が存在しないため重篤な感染の場合は死にいたることがあるのです。このような耐性菌を生み出してしまっている大きな原因として「医療サイドの安易な抗生物質の使用」が挙げられます。今回の研究も耐性菌を生み出すことの無いと考えられる「医療用蜂蜜」をなんとか有効に使用できないものか、ということで始められたものです。単に風邪をひいただけで抗生剤を処方する医師はダメな医師であると、あの近藤誠氏が本に書いています。近藤氏の本にケチをつけてきた私ですが、この点に関しては「御意」と言うしか無いのです。

風邪は数百種類のウイルスが引き起こすありふれた病気ですが、相手はウイルスですから抗生剤・抗菌剤は効果を発揮しません。軽い風邪症状であれば抗生物質は全く意味がありませんが、実際に診療をしていると風邪ですぐ来院する方は少なく、細菌による二次感染も引き起こしている患者さんを多く見受けます。そんな時は抗生物質を投与する必要がありますが、実際に菌に感染していることを明らかにする為の検査って結果が出るまで数日間を要するのです。

結果がでる前に風邪だったら普通治ってしまってますって❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・形成外科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
木・日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック