ネットで痩せる方法として「肥満の手術ってどうですか?」的な質問があり、それに回答するもっともらしい情報が氾濫していまして、これは明らかに間違っているのでハッキリさせておきます。
肥満手術は美容的な痩身方法とは全く違います
肥満手術と呼ばれる方法は代表的なもので「胃バイパス術」「胃バンディング術」「スリーブ状胃切除術」などがあります。
対象は病的肥満の合併症を予防・改善するための手術ですので、決して美容的な痩身を目的として行なってはいけません❗あの肥満体国である米国でさえガイドラインでBMIが40超、あるいはBMIが35以上で肥満に関連する命に関わる病気を持っている人に対してのみ推奨されています。ちなみにBMI40といえば身長が160センチで体重が100キロオーバーの場合で、日本人ではかなり少ないのではないでしょうか?
このくらいがBMI40かな?
脂肪吸引だって肥満の治療にはなりません!
簡単に痩せる為に脂肪吸引という方法を選択する人もいると思いますが、脂肪吸引はあくまで部分的に気になる脂肪を取り除く為の方法であり、全身を脂肪吸引した場合は確実に死亡します。部分的に脂肪を取り除く方法は安全性を優先するなら超音波や冷却することによって脂肪を分解する方法がありますので、当院としては脂肪吸引はおすすめいたしません。
脂肪吸引にしろ、脂肪を破壊するライポソニックスやリポクライオであっても(当院が誇る部分痩せの治療法です)、あくまで気になる部分の脂肪を取り除くのであって全身の痩身を目指すならバランスの取れた食事や適度な運動が必要であり、魔法のように簡単に全身を痩せさせるとこはサプリではもちろんのこと、処方薬でも簡単にはいかないことは以前から強く当院が主張していることです。
リスクを伴う減量手術・肥満手術の長期的な利益は不確定なんです
日本においても生命に影響を及ぼすような高度な肥満の方は減量手術の対象となっています。しかし、この治療方法を長期に渡って研究したデータは少ないので、信頼性の高い医学専門誌とされているBMJに掲載されていた論文を参考として考えてみます。「Bariatric surgery versus non-surgical treatment for obesity: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials」(BMJ 2013;347:f5934)というタイトルです。方法としては世界中で行なわれた肥満手術と非外科的肥満治療を比較した論文を解析したものですが、確かに体重に関しては手術方法が効果を発揮しています。
・体重の減少は26キロと大きく手術が効果があった
・2型糖尿病に対しても減量手術は効果があった
・メタボリックシンドロームに対しても減量手術は効果があった
不利益な点もありましたが
・血圧に対しては両者で差がなかった
・貧血が多くなっていた
・再手術を8%の人が受けていた
というくらいで、目立って減量手術が不利益という結果は導かれませんでした。しかし、今回の結果は追跡結果はたった2年間なんです。つまり、肥満手術や減量手術と呼ばれる方法が長期的にどのように健康に影響を及ぼすかということは判明していないのです。
肥満解消に王道なし!
日本で今までに何人の方が減量手術を受けたか、明確な資料がありませんでしたが某クリニックが症例数日本一であるとHPに記載がありました。ある一人の医師が600名以上の治療をしており、日本における手術数の8割以上をこの医師が行なっているとのことです。と、いうことはどう多めに計算しても日本ではまだ1000症例は行なわれていないようです。一方、肥満体国の米国では年間に数十万人がこの減量手術を受けているという話もあります。
今回参考にした論文は世界中の肥満手術に関する研究を1988件ピックアップして、解析する為の基準を満たした研究11件を対象としています。症例数としては769例ですから、世界中で行なわれている肥満を対象とした減量手術のほんの一握りのデータであるので、効果や長期的な安全性についてはまだまだ議論の余地がある治療と考えた方が懸命ではないでしょうか?肥満が今すぐそこにある危機じゃやない限りは、地道な減量の努力をすることが一番の王道であると考えます。つまり、肥満解消に王道なし、痩身治療に近道なし、でも部分痩せは方法あり!と広告臭プンプンの本日のブログでした。