ビタミン神話崩壊?過剰なビタミンB12摂取は死亡リスクを高める可能性有り。

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ビタミンは身体に良い、と思っている人も多いようです。

さらにビタミンは副作用が無い、と判断している人も多いようです。神経痛の治療に処方されるビタミンB12は安全と考えらえており、比較的長期処方されることが多い傾向があります。このビタミンB12でさえも、副作用のリスクがあるのです。

オランダの研究でビタミンB12を過剰に服用すると死亡率が高まるとの報告がありました。ビタミン剤は安全で副作用が無いと判断して、過剰に服用するとリスクが伴うことをお伝えします。

ビタミンB12には予想もしなかったリスクがあった

以前、ビタミンB12の効果に対してdisったブログを書いて、各方面からお叱りのお手紙、メール、ソーシャルでのコメントを頂いた私です。

ビタミンB12って神経痛や末梢神経障害に本当に効果あるの⁉

ビタミンB12って神経痛や末梢神経障害に本当に効果あるの⁉

まあ、この時は坐骨神経痛に悩まされていて某整形外科の有名医師にビタミンB12を処方されたけど、一向に痛みが消え去る気配がなかったための、恨み節的なブログであったことは反省しております。

それ以来、ビタミンB12に関してアンテナを高くして情報収集に務めていたところ、こんな論文を見つけてしまいました。

「Association of Plasma Concentration of Vitamin B12 With All-Cause Mortality in the General Population in the Netherlands.」(PMID: 31940038)はタイトルを直訳&意訳してビタミンB12と死亡率の関係、ビタミンB12の濃度が高いと死亡リスクも増加❗という感じで、週刊現代や週刊ポストが見出しにしそうな内容の論文です。

ビタミンB12に恨みがあるわけじゃないですが、当時「あんたは整形外科医に真っ向から絡むわけぇ〜」とか「お前はビタミンB12に親族でも殺されたのか」なんて恫喝をしてくれた医療関係者を装おった変な人向けに、この論文をお返ししますね。

ビタミン至上主義、ビタミン手放し信奉者の方々へ

ビタミンってなんとなく体に良いイメージがあります。ビタミン信奉を拗らせた方は医師でも医療関係者でも多いようで、私はその方々界隈へ時々疑問を呈しています。

例えば

医師が知らないニセ医学【その3】メガビタミン療法ってなんだ?

医師が知らないニセ医学【その3】メガビタミン療法ってなんだ?

とか

高濃度ビタミンC点滴療法、「がん治療に効果が無し」には医学的根拠が多数あります。

高濃度ビタミンC点滴療法、「がん治療に効果が無し」には医学的根拠が多数あります。

とか。これはかなり決定的にビタミンはなんでも体に良い説を覆すものだと思います。

抗酸化サプリの代表「ビタミンE」、肺がん治療には逆効果の可能性が高い。

抗酸化サプリの代表「ビタミンE」、肺がん治療には逆効果の可能性が高い。

真っ当な医師の中でも、「ビタミン系サプリは毒にはならないから」と言ってしまう人もいますし、「水溶性ビタミンは摂取しすぎても、過剰なビタミンは体外に排出されちゃうから、大丈夫」と患者さんに告げてしまう人もいるでしょう。

でもさあ、ビタミンB12欠乏症でもないのにサプリメントで過剰に摂取してしまうと、全死亡リスクが高くなってしまうのですぜ。

安全だと考えられていたビタミンB12を無闇に服用すると死亡リスクが増える、を読み解く

過ぎたるは及ばざるがごとし的な研究結果を出した前述の「ビタミンB12の過剰摂取は死亡率を高める」論文の詳細を見ていきましょう。

  • 対象はオランダに住む18歳から75歳の5571名
  • ビタミンB12を服用した人と服用しない人の2つのグループのその後を追跡調査したコホート研究
  • 血液中のビタミンB12の濃度によって4つのグループに分けた
  • もっともビタミンB12の血液中濃度が高いグループは445.41pg/mL以上、もっともビタミンB12の血液中濃度低いグループは338.85pg/mL未満
  • 追跡期間は平均8.2年
  • 結果として、ビタミンB12の濃度がもっとも低いグループは年間33.8名死亡、もっともビタミンB12の濃度が高いグループは年間65.7名死亡

これらからビタミンB12の血中濃度が高いと死亡リスクが1.85倍になるとの結論を得ています。

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Q4が一番ビタミンB12の血中濃度が高かったグループ、Q1がビタミンB12の血中濃度が低かったグループです。時間の経過とともに生存率が乖離して行くことがわかります。

世の中にはびこるビタミン信奉者さんはどのように反論するのか?

私はビタミン欠乏が原因となっている病気の治療にビタミンを使用するな、と言っているのではありません。

ビタミンは体に良い、病気を治しちゃう、中には大量のビタミン、複数のビタミンを摂取することによってがん治療も可能である、と主張する素人さんや代替医療家や、医師の考えを知りたいのです。

効果がないだけではなく、副作用というような生易しいものではない、死亡リスクの上昇という大問題が無軌道なビタミン摂取には発生してしまう可能性が高いことを知っていただきたいのです。

今回取り上げた医学論文はコホートによる検証であり、エビデンスレベルとしては、中の上。過去のデータを分析する後ろ向きコホートよりは信頼度は高く、ランダム化比較試験よりは信頼度は低いものと考えられています。

一方、一般書籍等で見受けられるビタミンを使った健康法や治療法のほとんどは、症例報告であり、それよりは信頼度は明らかに高いものです。まあ、多くは検証に耐えられるようなレベルでは無い話がほとんどです。

ビタミンを使った健康法や治療法のエビデンスレベルは低い

http://www.howardisms.com/evidence-based-medicine/levels-of-evidence/

ビタミンB12が死亡リスクを高める、は上から三番目のLevel3であり、巷に出回っているビタミンでなんでも治しちゃうは、下から二番目のLevel5あるいは一番したのアイディアレベルであることに注意が必要です。

まだまだあります、必要以上のビタミン剤摂取のリスク

あるビタミンが欠乏していることによって引き起こされる一部の病気に対しては、ビタミン剤を投与することは有用な治療方法の1つであることは間違いの無い事実であり、科学的手法によって医学的治療方法として確立しているものもあります。

しかし、残念ながら標準治療による治療が困難である病気に対して、ある種のビタミン剤を投与することによって治療が可能であることを主張している一派が存在しています。

その方々はビタミン剤の有効性をエビデンスレベルの低い症例報告等で、もっともらしく一般の方々に告げることによって、一定数の熱烈な信奉者を獲得しているようです。

ビタミンB12対して、死亡リスクを高める、との可能性が今回取り上げた医学論文によってかなり強くなってきています。

手放しでビタミン剤の摂取によって病気を治す、と主張している方々にお尋ねしたいことがあります。

例えば「Effect of homocysteine-lowering B vitamin treatment on angiographic progression of coronary artery disease: a Western Norway B Vitamin Intervention Trial (WENBIT) substudy.」(PMID: 2049466)では、心臓の血管の病気(冠動脈疾患)に対するビタミンB12の有用性を検証しています。

結論としてビタミンB12が欠乏している状態の患者さんに対して、ビタミンB12を投与しても効果がないことを報告していますよね。

さらにこれはどうでしょうか?

「Association of High Intakes of Vitamins B6 and B12 From Food and Supplements With Risk of Hip Fracture Among Postmenopausal Women in the Nurses’ Health Study.」(PMID: 31074816 )はビタミンB12を大量に摂取している人の方が股関節の骨折リスクが高いことを報告していますよね。

今回取り上げた論文をPubMedで見てみると、このように右側に似たような論文も表示されます。

画像

この「Similar artcles」を追いかけていくと、次から次とビタミンB12に関する研究論文が提示されます。

手放しでビタミンなんちゃら療法を推奨している医師たちはこのような一手間をサボっているのでしょうか?ビタミンB12が冠動脈疾患に有効じゃない論文もビタミンB12で骨折リスクが高くなる論文もこうやって簡単に見つかるんだけどねえ。

ビタミン欠乏以外の患者さんに対して、ビタミンでなんらかの病気を治す、と強く強く主張している代替医療治療家さんや医師はぜひぜひまともな研究成果として、検証可能なデータをご提示くださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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