私たち医師がマスクを診察時や手術時にマスクをするのは、自分たちの飛沫が患者さんに感染させないためです。自分たちが感染しないように防御するために使用するのはN95と呼ばれる特殊なマスクであり、サージカルマスクで感染を防ぐことは出来ない、と多くの医師は考えています。
新型コロナの感染拡大に伴い、一般の方が使用するマスクが品不足になっており、その影響で私たちが通常の診察で使用するサージカルマスクもN95マスクもほとんど入手することが出来なくなっています。一部の心無い転売屋によるマスクの買い占めによって、本当にマスクを必要としている人々は危険にさらされています。
本記事の内容
とうとう医療機関でもマスクが手に入りにくい状況になっている
新型コロナ(2019-nCoVと呼ぶのが正式) の感染拡大に伴い、世の中でマスク不足が騒がれています。まさかと思っていたら、とうとう医療機関でもマスクが手に入らない状況になってしまいました。
毎月末に定期的にマスク等の消耗品をオーダーしていますが、今回は新型コロナによる肺炎(ヘンテコな感染症とメディアは呼んでいる)の影響で在庫切れとのこと。
私は今まで数回にわたってマスクすることによって、マスクをした自分がウイルスに感染することを予防する効果は、かなり限定的であることをお伝えしてきました。
ウイルス感染予防効果のないマスクをなぜ人々はパニック的に買い求めてしまうのでしょうか?
医療機関向けのマスク配給業者でさえ、在庫切れ、ということは、心ない医療機関が買い占めしたのか、感染症の知識に乏しい医療関係者が、焦って買いだめしたのか?
とにかく、科学的根拠に乏しい医学健康情報が拡散されたことによって、本当に必要としている人や場所にマスクが届かない事態に陥ったのは間違いの無い事実です。
今後このようなことが無いように、マスクに話を絞ってウイルス感染に対するマスクの効果は限定的というか、効果ないよ、をお伝えします。
そう言えば、今回の新型コロナが報じられた為に、空間除菌グッズも売り切れ状態になったようです。
空間除菌グッズはウイルス感染予防効果は無し、と断言しておきますね。
この会社、今でも強気で広告しているらしいです。
マスクの正しい使用方法を伝えているサイト自体が間違いだらけ
半パニック状態であるマスク界隈の話題として、ネット上には「マスクの正しい着用の仕方」情報が大量に生産されているようです。
私が気になったのはテレビに登場した新型コロナ感染を監視する立場の人、海外から帰国してインタビューに応じた一般人のマスク姿に対して、「これじゃあ、意味ないよ」「マスクが逆だよ」との半可通さんのご意見がネット上に飛び交っていたことです。
マスクの折り目(プリーツ)が逆である❗と怒りながら海外からの帰国者を批判していたツイートもありました。
でもこのマスクの場合は上下をどっちにしてもプリーツは上を向いちゃうんだけどなあ⋯。
テレビに映し出された情報だけで、「マスクの使用方法が間違っている❗」と強硬に主張された人は半可通というか、知ったかぶりの人であり、そのような人が撒き散らす感染症予防指南の信頼度が疑われます。
「そのマスクの使用方法、裏表逆じゃん❗」も気になりました。ほとんどのマスクの包装や箱には正しいマスクの着用方法が書かれています。書いてなくても、包装にはマスクの画像がプリントされており、使用説明書を読んでからマスクを着用することが当然のはず。
正しいマスクの使用方法を必ずお読みくださいね。通常はマスクを使い慣れていない、初心者的マスクユーザーは特に取扱説明書はしっかり読んでくださいね。
この時期に正しいマスクの使用方法を知っていますか的な記事を書いている人の多くが、医学の素人さんである点にもご注意ください。
中にはお手製のマスクを披露している方もいるようですが、それこそウイルス予防効果は疑わしいものだと判断します(今の時期、花粉症の方にはそれなりに有効だとは思います)。
そもそもマスクのウイルス感染を防ぐ効果はかなり限定的です
イオンが従業員に対して、マスク着用を禁じたような話が昨年末に話題になりました(厳密には必要としている人は着用はOKであったようです)。そこで私は今回の新型コロナが中国で見つかってはいましたが、今のようには日本国内ではパニック的な状況では無かったので、マスクの予防効果について、このようなブログをアップしました。
さらにこのような関連ブログもアップしました。
この時点では外国人によるマスク買い占めがメディアで話題になりだしていました。
私がマスクの効果が限定的である、と強気で主張しているのは主として、この論文が背景になっています。
JAMA (The Journal of the American Medical Associationの略 米国医師会雑誌)という質の高い医学専門誌に掲載されたものです(質の高い専門誌でも時々ヘンテコな論文は掲載されますけどw)。
この論文は一般的なサージカルマスクと特殊なN95マスク(半可通は今回の新型コロナ騒動でこのN95マスクを買い漁っているかも)とのインフルエンザ感染予防効果を比較したものです。
446人の看護師をサージカルマスクをするグループとN95マスクをするグループに分けて、マスクのウイルス感染予防効果を調べた研究です。
その結果、サージカルマスクを着用した看護師の24パーセントがインフルエンザに感染していました。気になるN95マスクを着用した看護師がインフルエンザに感染した割合は、なんと23パーセント。両者で感染予防効果に差はありませんでした。
サージカルマスクであろうと、N95マスクであろうとインフルエンザ感染予防の為に外出先でマスクを着用していたとしても、インフルエンザに感染してしまうのです。
外出時にマクスをすることは、ウイルス感染予防になるとは言えないのです。
品薄状態のマスクを買い求める為に複数のドラッグストアをめぐっている人も多い、とメディアは報じています。
マスクを求めて、街中をウロウロする事の方がウイルス感染リスクを高めてしまうと感じるのは私だけでしょうか?
ウイルス感染予防はマスクより、とにかく手洗いが一番の予防手段です
マスクはあくまで感染した人が咳やくしゃみによって、ウイルスを周囲に拡散させないようにすることを目的とした手段です。
家族が重病にICU(Intensive Care Unit 集中治療室)に入院した時に面会した経験がある方は、入室時にマスクはマストアイテムとなっていますよね。
入院している患者さんから、ウイルス等の病原菌が面会者に感染することを予防する為にマスクをするのでしょうか?
化学療法中の患者さんは免疫システムが弱っている為に、感染しやすい状態なのです。面会に来ている人から入院患者さんへウイルス等が感染しないことを目的としてマスク着用が義務つけられているのです。
これからもウイルス感染していない人が感染予防として、マスクをすることは無意味であることがご理解いただけると思います。
正しい手洗い方法に関してはこれがわかりやすいと思います。
私たち医療関係者は一般的にはマスクをメーカーから直接購入するのではなく、問屋さんを通して購入しています。現時点で問屋さんが「在庫切れ」と医療機関に連絡しているのは、本当に在庫が切れたためではなく、流通量を調整していると、私は性善説に立って理解しています。
残念ながら医療機関の中には、買い占めを試みたところもあるらしいとの話も耳に入ってきていますが真偽は不明です(以前、ワクチン関連では買い占めを試みた医療機関が複数ありました)。
ドラッグストアでマスクを購入することができなかった人が「医療機関ならあるのでは?」と考えて、かかりつけ医を訪れて、「マスクを分けてもらえないですか?」という場合もあるかもしれません。
感染が疑われる人、感染している人など以外に不用意にマスクを渡す、あるいは売ってしまうところが出ないように医療機関も毅然とした態度で臨んでもらいたいと思います。
これはあくまで一例です。
科学的な根拠が無いマスクのウイルス感染予防効果、しかし、なぜかメディアはマスク不足を取り上げ火に油を注いでいるように感じてしまう今日この頃です。
私の聞き間違い、空耳でしたら失礼します。先日、22時頃の某報道系テレビ番組でマスク不足を取り上げていました。その時、右側に座っている女性アナウンサー(女性キャスター?)が「私達の番組でも、以前からウイルス感染予防策としてマスク着用を呼びかけていたのに、このような状態になると困りますよねー」的なお話をしていました。
「あんたが騒ぐから、マスクが不足するんじゃん❗」と叫んでしまった私です。
本当にマスクを必要としている人にマスクが届かない可能性もありますので、何度でも繰り返しますね。
通常のマスクでウイルス感染を予防することは不可能です❗
当院は開業して23年になります。複数回このような感染症の流行や災害を経験してきた為に、消耗品に関しては1ヶ月分を目処に、ある程度の在庫を抱えるようにしていました。税理士さん・会計士さんには在庫を抱えるな、と常々指導されてきています。しかし、このような状況の発生に対応する為には、一見無駄、キャッシュフローが悪化する原因になったとしても、在庫を抱える必要はあるんですよ。
おまけ:手元にあるマスクは全て「MADE IN CHINA」と書かれています。中国の人々によってマスクが買い占められているとの話も伝わってきていますよね。中国で生産されて日本で販売され、それを中国の人が買って自国に帰る。一見不思議な動きですが、中国ではマスク着用が義務つけられているようなので、しかたないことなのかもしれません。
少なくとも日本国内では、皆様が冷静にご判断いただけること、お願いいたします。
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