近藤氏の問題点は異常に数字に弱いところなんです。別に医学に詳しくなくても、算数さえできればこの本がおかしい点が理解できます。「医者に殺されない47の心得」に対しては以前ブログで勘違いを指摘させていただきましたが、続く著書『「がんもどき」で早死にする人、「本物のがん」で長生きする人』では近藤氏の算数音痴が明確になっています。
本記事の内容
近藤誠氏の本の間違いは算数さえ理解していれば判ります
2014年10月3日のTBS「金スマ」に出演した近藤誠氏ですが、あまりの酷い内容なので追記しました。現時点でがんと闘っている方がいるのによく言うよ、ホントに 怒❗
ちなみに前述ライブドアブログにあったコメントです
◎TVが無いので番組は見ていないが、近藤誠医師に診てもらう費用も紹介したのかな?
◎寝る間も惜しんで働く医療関係者と寝る間も惜しんで著書を書いて金儲けしてる近藤誠医師?とを同列に見る事は出来ないよ。
◎金スマ、近藤氏を完全に英雄扱いだな。何も知らずに観れば、「そうだったのか!」と納得してしまうような作り方。これは酷い。
と多くの方は近藤氏の主張のおかしさに気づいているのは、不幸中の幸いです。
理屈っぽくなりがちな私のブログですが、算数ができれば近藤氏の主張のヘンテコさが十分にご理解いただけると思います。
著書のP41にがんの成長のスピードに関する記述があります。そこには直径1センチのがんの体積は4ミリリットルと書いてありますが、多分「直径」と記述してあるのですから「球」をイメージしているのは間違いありません。
日能研のHPよりお借りしました、タイトルは「算数好きになるくすり」です。
直径1センチの球の体積は 0.5×0.5×0.5×4×3.14割る3=0.523mlのはずなんですが、どのような計算式で4ミリリットルが導きだされるのでしょうか?ここはまあ大人の対応で「半径と書くところを直径と書いてしまった」と許してあげましょう、と思ったらさらに次の計算がおかしいんです。1センチで4ml、それが直径10センチだったら500mlと明記してあります。少しでも数字に敏感な方なら1センチが10センチになったら間違えるにしても400mlになると感じないでしょうか?
さらにさらに、もう少し算数に敏感なら「体積だから長さが10倍になったら三乗の1000倍になる」ということに気がつくと思います。直径1センチの球体の体積が4mlとしましょう(間違っているけど)、直径が10倍になったら体積は1000倍になるので4000ml(もちろん間違いですが)になんなきゃおかしいって、普通瞬間的に判るんですけど。こんなざっくり計算でも大間違いする人がもし臨床で患者さんに抗がん剤を処方をしていたらトンでもない大医療過誤事件を起こしてしまいます。
近藤氏ががんの治療に対して、抗がん剤を使用しなかったことは不幸を招かない為にも正解だったのかもしれません。正解は直径1センチのがんの体積は0.523ml、10センチのがんなら523mlです。
40年間で、診療した患者さん数万人??
数万人のがん患者さんを診療してきたって書いてあります。本の書き方からするとそれは延べ人数(再診も含む)とは思えない、表現を使っていますので、カルテでいうと数万人分のカルテがあるということです。それを計算するとおかしな問題が発生しますよ、近藤先生。1万人から9万9999人を診察していれば数万という表現が取れますが、仮に真ん中を取って5万としてみます。
40年間の医師生活で外来を週3日担当した場合、先生が出勤しても病院の外来が年末年始等で休診体制の日もあるでしょうから、年間の診療日は150日程度(3日×50週)だと思います。一年間で1250人診察する計算になりますので、そうすると診療日一日当たり8.3人の新たな患者さんを診察しているんですよね。一人の患者さんに初診とはいえ、約1時間も診療に充てるなんて、なんて素晴らしい医療なんでしょうか。
初診患者さんが再診を受けなかったとして、やっと40年間で数万人のがん患者さんを診察できます、もちろん3分診療だったら数万人のがんの初診と再診の患者さんを診察できますけど。「延べ数万人の患者さんを診てきた」とはどこにも一切書いてはありません。
がんの患者さんを数万人も一人の医師が診察していることって普通では考えられないのです。慶応大学病院でがんで入院した人が年間6000人程度ですので、近藤氏がその20パーセント(年間1250人新たな患者さんを診察していると仮定するなら)を受け持っているのでしょうか?
この数万人って患者数ですが、近藤氏の信者150人が月に一回のペースで一年間に12回、23年間通ったと計算すると41400人になりますので、ひょっとしてその計算なんじゃないですか?
マック赤坂より低い近藤氏の支持率
どの著書にも出てくる話で「23年間、がんを治療しない患者さんを150人診てきた」というのがあります。近藤センセイ、数万人の患者さんを診てきてセンセイの治療方針に従った方って、仮に5万人診察していたとしたら、たった0.3パーセントしかいないんですか?東京都の都知事選が昨年ありましたが、あのマック赤坂氏でも38855票獲得していて全投票数6447744票のうち0.6パーセントの支持者を集めていますので、支持率で考えると近藤氏はマック赤坂氏の2分の一となります(マック赤坂氏についてはwiki等でお調べくださいませ)。
データや論文を記載すれば記載するほどツッコミ箇所が増えてしまう 近藤本
医学データも羅列(ほんとうに羅列です)しているので、ただでさえ医療は一般の人には判りにくいのに、さらにいい加減な数字を見せられると信じてしまう人が出てきてしまう可能性が大です。
がんの治療は何もしなくても生存率は同じ、と強調するときに出てくるデータって英国の1803年から1933年の250人の乳がん患者さんのものを使用していますけど、1803年って日本は江戸時代 (享和3年)、欧州ではナポレオンが戦争している時代なんです。何もそんなに古いデータを引っぱりださなくっても、というかもう少し新しいデータ無かったんでしょうか?
この時代の医学統計データを出されても、困ってしまいます。医学的な統計の解釈の間違いや米国の行政機関の発表の一部を並べ,もっともらしい意見が書かれていますが、データや論文の一部だけにフォーカスをあて持論を強引に肯定する手法が目立ちます。
本来ならば権威のある医師がこの近藤誠氏の本に対して反論を試みるべきですが、「そろそろ退職のお年だから,そうっとしてあげようね」とか「反論するのもバカバカしい」といった意見が大勢を占めていますので、あえて一町医者である私が書かせていただきました。
このブログを最初に投稿した時点では近藤氏はまだ慶応大学に在職していましたが、現在は開業をしているようです。2014年10月4日追記しました。