Facebookの健康医学情報、意識高い系の人がマウントする場になっている模様。

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ソーシャルメディアではなぜか健康関連・医学関連情報でマウントする方が目立ちます。

医師からすると、笑い飛ばすような健康医学情報であっても、マウントされた方はありがたがって、「シェアさせていただきます」とやっているのがFacebookでしきりに目にすることがあります。特に海外在住の日本人による、「日本って遅れているのよね!」に押し切られてしまうFacebookユーザーは自分でその指摘されたことの真偽を確かめることはしないようです。

自然派と呼ばれる方々のマウンティングを医学的視点から検証してみました。最終的にはご自分の代替医療に導くことになっている点がかなり気になりました。

Facebookは食に関するトンデモ健康情報は意識高い系のマウント行為の温床

ソーシャルで根拠のない知ったかぶり健康情報を流して、マウンティングする人が目につきます。マウントしている方々の知識はどう見ても専門性にも欠け、調査量も知識量に関しても乏しいものが多いと思います。

私が特に気になっているソーシャルがFacebookです。医師でもFacebookを巧みに利用して、信者的な支持者を集めながら、間違った健康情報、ニセ医学などを拡散しているヘンテコなものさえいます。

Instagramもかなり凄まじい状況にあるとの話も聞きますが、インスタまで手を広げていない私は今回たまたま見つけたFacebookにおける意識高い系のマウンティングに関して、医学的な疑問と反論を行ってみます。

Facebookのユーザーの属性はこのようになっています。

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2018年「公表データ」で見る主要SNSの利用者数と、年代別推移まとめ(https://appbu.jp/share-of-social-media)より

私が意識高い系(意識が高い、とは別もの)と感じている年齢層とドンピシャです。子育て中のママはトンデモ系マウンティングさんの格好のターゲットですからね。

私が見かけたFacebookの投稿はこれです。

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Facebook(https://www.facebook.com/mariko.thompson.1/posts/2106480429460570)の正式な埋め込みがうまく動作しないので、スクショで失礼します。

海外在住の典型的な「日本は遅れているのよ〜」系マウントさん

プロフィールを拝見すると、米国で代替医療の情報収集を行っており、トンデモ系ニセ医学であるリーキーガット方面の著作もあり、さらにサプリメントとかオーガニック系サプリメントも販売している会社を運営しているようなので、素人さんではなくビジネスの一環として、これらの発言を行っていると判断しますね。

海外在住、海外情報の発信、日本の行政や医療に対する考え方は遅れている、海外ではこんなに素晴らしいことが行われているよ〜、知識の乏しいあなた達に教えてあげる的なマウント手法です。

日本が開国して170年近くが経過しています。今でも外国、特に西欧文化にはコンプレックスを抱いている人が多い状況を利用した、トンデモ系ニセ医学マウンティングさんについて検証してみます。

米国では日本の食品に健康に関しての警告表示が義務つけられているのよ〜

私も時々、上から目線とのご指摘を受けることがあります。しかし、トンデモさんの撒き散らす間違った医療情報に対しては、自制を心がけても出ちゃうんだよなぁ、この点に関しては今後さらなる猛省で自分をコントロールするようにしますね(無理かなぁ)。

この方はFacebookでこのようなことを書いています。

カリフォルニア州は中でも全米一健康志向が高い州で、州法で全ての食品を含む商品に「有害物質の表示」が義務付けられています。そうなると、日本の食品(特にスナック菓子)は軒並みこんな感じに・・! 

日本のスーパーやコンビニで普通に売られているカルビーの「ポテトチップのりしお」の注意書きを画像でアップしています。

フライドポテトはアクリルアミドが含まれていて、カルフォルニアではがん・先天性疾患・生殖器への影響を警告している文章ですね。

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前掲のFacebookより

アクリルアミドの毒性に関して、米国のがん協会(American Cancer Society 略してACS)はこのような見解を示しています。

Some foods with higher levels of acrylamide include French fries, potato chips, foods made from grains (such as breakfast cereals, cookies, and toast) , and coffee.

確かにフライドポテト・ポテトチップス・シリアル・コーヒーなどはアクリルアミドが多く含まれた食品だと書かれていますね。

アクリルアミドが発がん性のある物質であることも警告はしていますが、あくまで動物実験レベルでの判断なのです。

疫学調査の今のところの結果としては、食品として摂取されたアクリルアミドが人間のがん発症リスクとの関連が低いこともしっかりと書かれています。

ACSは、アクリルアミドが含まれる食品の規制は米国でさえなく、FDA (アメリカ食品医薬品局 Food and Drug Administration)はアクリルアミドの使用を減らしましょう、と呼びかけている段階です。

発がんの危険性が確実視されていて、それをスーパー等で堂々と販売しているワケないです。

こっちは危険性を書いたんだから、万が一がんになっても当店は知らないよ、とのアメリカ式エクスキュースでしょうね。

カルフォルニア州によって義務つけられているとしても、当局がのちのち責任を負わされないための事前の処置だと思います。

この方に悪意があるなあ、と感じたのがアクリルアミドに関する警告が貼られている位置です。

これは別にカルビーの「ポテトチップのりしお」に対する警告ではなく、加熱調理したポテト全体に対する警告なんだけどねえ⋯。

詳細な情報を得る努力をしないで、海外で見かけたマウント材料を誇示するのが、こんな意識高い系の人々の特徴ですよね。

このトンプソンさんの投稿自体も他の方(Grace Machiさん)の投稿を引用したもののようです(私は一次ソース的な投稿を見つけることはできませんでした)。

このようにしてトンデモ医学健康情報がマウンティングによって拡散していくことも知ることができます。

ちなみにアクリルアミドが間違いなくがんになるリスクを高めているものは、タバコです。

すき焼きのタレの警告文にも異常に反応

日本人が通常抵抗なく食している食材に関して、「あなた達は知らないだろうけど、海外ではこのように日本の食品は危険と警告されているのよ〜」とマウントが職業の1つになっているようです。

まあ、そりゃそうだよな、代替医療を推進してありもしない病気の危険性を声だかに叫んでいるのですから。

阿鼻叫喚のFacebookにこんな投稿もしています。

これまた、開国してたった170年しか経過していない遅れている国である日本のスーパーで定番的に売られているエバラ「すき焼きのたれ」の成分にあらぬ誤解をかけています。

こんなことを

調味料も・・この「化学物質」って、具体的には鉛だそうです!

エバラすき焼きのたれに鉛が入っていることにお怒りのご様子。

このエバラすき焼きのたれに鉛が含まれている記事はすでにネット上で拡散してしまっているようです。

中には「鉛は発がん性の最も高い化学物質です」と余計なお世話をしているウェブサイトもあります。

まあ、このサイトはトンデモ系の甲田光雄医師の信奉者の手によるものですから、信頼度はかなり低いですし、医学・科学系の知識もプアーだとは思いますけどね(https://acoaco21.com/%E3%83%9D%E3%83%86%E3%83%88%E3%83%81%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%9D%E3%83%86%E3%83%88%E3%81%AF%E6%82%AA%E9%AD%94%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%8F%93%E5%AD%90/⋯消滅確認2021年5月17日)。

鉛が口から入った場合の急性毒性は体重1キロに対して4グラム、体重60キロだとしたら240グラムの鉛を食べたら致死的です。しかし、鉛を240グラムも口にする人がいるでしょうか?

鉛で問題になるのが神経毒性です。発がん性もあると考えられていますが、その量は動物実験レベルでは体重1キロに対して、10ミリグラム。体重60キロの人だと、毎日毎日鉛を600ミリグラム食べ続ける必要があります。

エバラすき焼きのたれに鉛が含まれているかは、エバラ食品の日本のウェブサイトでは確認できませんでした。発がんのリスクが上昇するほど、この「化学物質は鉛だそうです」さんは毎日毎日すき焼きを食べているのでしょうか?

トンデモさんの特徴である「量の概念に乏しい」との私の定説の正しさを裏付けていただけたようです。

トンデモさんはそそっかしい慌てん坊さんが多い

このエバラすき焼きのたれの画像に添えられているもう1つの画像、よくよく見ると別の商品のラベルですねえ。

どうもミツカン「特選ポン酢かおりの蔵 丸搾りゆず」のラベルのようです。

ここに先ほどのポテトチップスと同じ警告が書かれていて、そこに書かれている「化学物質」が鉛である、と必要ない恐怖を煽っています。

そりゃそうですよ、柑橘類を絞ってポン酢を作っているのですから、人体に影響のない範囲の鉛は含まれますよ。鉛に関しては農林水産省が農薬の残留基準量を設定しているくらいですから、含まれていて当然。

ポン酢に含まれる柑橘類以外の原料に鉛が含まれていたとしても、大々的に売られている食品に危険な量の鉛が含まれてるはずない、と私は考えるんだけどなあ。

まあ、開国して170年足らずの日本で生活している私ごときが知らないだけであることも否定はしませんけどね。

このようにしてFacebook界隈は無責任な意識高い系の自然派拗らせたトンデモ系ニセ医学健康情報を垂れ流す人にマウンティングされる、いたいけない人々が溢れかえっているようです。

しかし、こんなヘンテコな裏付けの無い話を信じる純情なFacebook住民はシェアするときに「シェアさせていただきます」って言っちゃうのかも不思議です。マウントする側としては、「シェアさせていただきます!」が快感なんだろう、と私は想像しています。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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