以前から「肝斑にレーザーは禁じ手」でしたが、近年実践派の美容皮膚科クリニックでは低出力のQ-YAGレーザーによる「レーザートーニング」という治療方法が主力となっています。
学会では「最近流行しているレーザーによる肝斑治療は行うべきではない」という見解です。
実際のところ、肝斑にレーザーは効果はありますが、確実な診断・治療が行える医師でないと逆効果になることが多いのです。詳しく解説していきます。
肝斑とは
肝斑とは以下のような条件を備えた顔における色素斑のことです。
- 16歳以上に発症する後天性の色素斑
- 左右対称の場合が多い
- ほほ、額、唇に出やすい
- 症状に変動がある
- 髪の生え際、眉毛の部分にはできない
- 女性に多い
肝斑に対してレーザートーニングは行うべきではない
この警告にはベテラン形成外科医の隠されたメッセージがあるのです
日本皮膚科学会が主催した日本美容皮膚科学会で「最近流行しているレーザーによる肝斑治療は行うべきではない」という発言が飛び出して驚いています。と、いうのも以前から「肝斑にレーザーは禁じ手」とされていたんですが、近年実践派の美容皮膚科クリニックでは低出力のQ-YAGレーザーによる「レーザートーニング」という治療方法が主力となっているからです。
そんな医師間のやり取りなんて興味ないよ、と思わないで読んでみてください、結構間違った知識って世の中にジャジャ漏れしているんですから。
- 肝斑とはどんな症状で原因は?
- 肝斑と一般のシミの違い
- 肝斑の薬の効果と作用
- 実践的な肝斑の治療方法
- 今回のレーザーは使用するべきではない発言の真意
以上の流れで記述していきます。なんで、こんな説明を入れて書いているんだとのご意見が当然出ると思いますが、私の場合「力」が入ると長文になり「話が飛びまくる」というご指摘がありましたので「読みやすい内容」を意識して書いていきます。
診断自体を間違っている医師も多い肝斑
シミの専門用語が「肝斑」だと思っている方も多いのではないでしょうか?だってCMで「肝斑は何々が効きます」なんての出回っていますからね、どう見ても専門家であれば肝斑と診断しない写真やイラスト入りで。一般の方はもちろん医師だって「シミ」と呼んでいる皮膚の状態はざっくり次の分類ができます。
- 老人性色素斑⋯これが典型的なシミです
- 母斑⋯アザとかbirth markとか呼ばれるもので生まれつきあるものがほとんど
- 雀卵斑⋯いわゆるソバカスです
- ADM⋯遅発性太田母斑様色素沈着(肝斑と間違える医師多いです)
- 炎症性後色素沈着⋯傷跡に色がつく状態です
- 肝斑⋯今回のテーマです(やっと出ていた)
これが肝斑です。左右対称に出現します。http://www.medicinenet.com/より
シミと簡単に言ってもこの6つの状態をシミと呼んで、または呼ばれていてこのなかから「肝斑」を見分けなければいけません、医師は⋯それを「鑑別診断」と言います(豆知識)。
肝斑の原因としては女性ホルモン説が世の中に出回っていますが、明らかに間違っています。だってオッサンでも肝斑の人いますもの。女性ホルモン説の間違いはブログに書いてありますので読んでくださいね。実は肝斑の大きな原因は擦りすぎ、いじりすぎなんです、本当は、ウソだと思うならなぜ薬で肝斑が治療できるかという次に書く項目でその理由がはっきりします。
これで列記した1,2の読みやすい説明が終わりました。
なんで肝斑の薬って効果があるの
これから肝斑の特攻薬もとい特効薬とされる「トラネキサム酸」の効果を説明しますね。この薬はかなり大量のCMによってご存知の方も多いですよね。これです
この広告も実は「あなたのしみが肝斑なら」って言っているでしょ。つまり、肝斑だけに効果があるよ、という事を正直に述べております。この薬はもともと医療現場で頻用される薬です、効果としては
- 抗プラスミン剤⋯炎症や傷ができると出てくるタンパク質であるプラスミンをやっつける
- 出血傾向を抑える
- 湿疹などの赤みと腫れを抑える
- 喉の赤み、腫脹を抑える⋯風邪で喉が痛いというと出されること多いです
となっています。つまり、「炎症を抑えることが肝斑治療の要」なんですよ。ということは皮膚科学会のいっているレーザーの乱用は禁じ手発言も納得いきます。レーザーって皮膚に炎症を結果的にはあたえる治療ですから、肝斑の原因をさらに加えている事になりますので。ここで大切な注意があります。トラネキサム酸は出血をおさえるということは、血の流れを止める働きもあるのです。という事は脳梗塞の原因となってしまいます。ある一定年齢の方は肝斑治療のために安易にこの薬をのむと、脳梗塞になってしまいます。この辺りは処方箋なしで買えるCMで流れている薬も注意書きに55歳以上の人は医師に相談をとなっていますが、多分多くの人が見落としていると予想します。知ったかぶり説明がweb上にやっぱりありました。
肝斑は保険治療は認められていませんし、更年期とは時期が重なっても、閉経後は化粧の頻度が少なくなり刺激とクレンジングによる擦りすぎがなくなって肝斑が薄くなるという理論が、今ではちゃんとしている美容皮膚科医の間では常識となっています。
詳しくはブログへ→あなたのシミは本当に肝斑ですか?ただのこすり過ぎの可能性もあります
これで3の説明は終わり(やっぱりなんだか長文になってきたぞ)。えっと次は
肝斑の治し方は
ご自分で治すなら前述の飲み薬でもOKです。その代わり余計な美白化粧品とか使わないで、洗顔もピーリング成分が入っているものなんて絶対だめです、そうっと優しく洗顔してなるべくいじらないようにしてください。時間とともに刺激による炎症が収まってきてかなり長期間かかりますが、肝斑なら薄くなっていきます。
でも、そんなに悠長に待っていられないし、化粧もしたいというのが女性の当然の反応だと思います。そこでレーザートーニングが大活躍するんです。でも、その出力や治療の間隔、治療期間中のスキンケアが重要でありちょっとやそっとの経験しかない美容皮膚医では、対応は無理です。とにかく肝斑治療は診断がまず一番大切であり、治療は十分な経験を積んだ医師に任せないと悲惨な事になってしまいます。
実は「肝斑にレーザートーニングは行ってはダメ!」と発言したのは、私がこの人の理論は納得と膝を多いに叩いた、大阪の葛西医師だったのです。つまり、葛西医師は普通の皮膚科がレーザーを導入して、肝斑に対してレーザートーニングなんて高度な技を使用したらいけませんよ、なんちゃって美容皮膚科で悲惨な目にあった患者さんが多いんです、ということをやんわりと学会で述べていたと私は解釈しています。
実際はレーザーで肝斑を治療することは可能ですが、一般的な「色を抜く」という理論ではなく、肌のターンオーバーを早める事が目的で使用するのです。
これで4,5の説明も終わりました。結構判り易く短く纏まったと自己満足していますが、考えてみればこんな事を書いているから長文になってしまうのですね、ということを書くからさらに文章が長くなって⋯。
レーザーは「バカとハサミは使いよう」のハサミであり、経験の少ない医師にレーザーを使わせることは「××に刃物」ということでもあります。
追記 2014年7月16日付けで「レブライト」という肝斑を治す専用のレーザーを導入したことをブログで書きました。