「トンデモ」という表現があります。医学的裏付けの無い治療はトンデモというより、デタラメ、インチキという言葉が適切である悪質な治療方法を喧伝している医療関係も残念ながら存在しています。
日々の健康を考える方にとって、食事は重要だと考えて当然です。栄養のプロである管理栄養士の中にも残念ながらトンデモさんが混入しています。ウェブ上で活躍されているトンデモ管理栄養士がどのように医学的な間違いを冒しているのか、医師としてチェックしてみました。
本記事の内容
ウェブ上ではトンデモ管理栄養士さんが大活躍
トンデモさんと呼ばれる、コンタミ(コンタミネーション 予想していな異物の混入)とかバグは、どんな職種であっても一定数混じり込んでしまうのはしかたの無いことと判断しています。現役医師は30万人程度、一般書籍やウェブ上でトンデモ系ニセ医学を拡散していると私が確認済みの医師は300人前後。トンデモ率は0.01パーセントくらいです。
ここ数年、トンデモ系管理栄養士さんの半可通の知識が満載の記事が目に飛び込んでしまいます。
栄養学は医師より管理栄養士さんの方が詳しいと判断して、ついつい管理栄養士さんの記事を読む癖が私についてしまっていることも影響しているとは思えますが
人体の構造を理解して記事を書いているとは思えない管理栄養士さんが目立ちます
料理や食材で病気を予防しよう、病気を治療しようと考えている人々をかなり惑わせていると思われる管理栄養士さんのトンデモ記事を引用しつつ、どこが栄養学に詳しくなくてもどこがどのように間違っているのかを解説していきます。
なお、管理栄養士として登録している方の人数は20万人程度なので、医師の例から考えると200人はトンデモさんが混入している可能性があります。
これは私のデスク脇に常備している食品や栄養学等関連の書籍です。書棚には玉石混交てんこ盛りです。
酸化作用を抑える抗酸化物質で免疫力がアップするわけ無いじゃん
本年2020年1月に発見した管理栄養士さんのトンデモ記事はこれです。
この免疫力アップ記事をお書きになった管理栄養士さんは根本的に免疫システムを間違って解釈しています。
体内でバイ菌と戦ってくれるのは、白血球です。
ここまでは合格です。ウイルスは菌では無いですが、一般の方に伝える手段として「バイ菌」と表現するのはわかりやすくて問題ないと思います。しかし、それに続く
この働きを助け、それ自体も抗酸化作用があるのが、コンディション管理に欠かせない栄養素、ビタミンCです。
ご自分で書いていて、「なんか変だな」と思わなかったのでしょうか?
白血球がバイ菌と戦って殺菌する仕組みは白血球が活性酸素を生み出し、体内に入り込んだバイ菌を活性酸素が最終的に次亜塩素酸に変化して殺菌作用を示します。活性酸素を減らす抗酸化作用があるとされるビタミンCを摂取すると、白血球(正確には好中球)のバイ菌を殺菌する作用を邪魔するんのではないですか?
私は泌尿器科医なので、こんな論文を管理栄養士さんがお読みになることをおすすめします。「好中球活性酸素産生能か」らみた高齢者の感染防御機能」、高齢者の場合、好中球活性酸素産生能が若者と比較して有意に低下していることを報告しています。
活性酸素が少ないから高齢者は細菌感染、真菌感染しやすいのです。
管理栄養士おすすめのインフルエンザ予防に効果的な栄養素、これまたヘンテコ
食材や料理によって免疫力アップを求める気持ちは理解できますが、ビタミンDを食べることによって免疫力がアップすることが医学的に認識されているのでしょうか?こんな記事がありました。
この記事は2019年12月に見つけました。
管理栄養士はこのように書いています。
特にインフルエンザは毎年大流行するので、大事な受験や仕事などのためにしっかり対策したいという方も多く、様々な情報が飛び交っています
正しくない間違った健康情報が人々に混乱を引き起こしていることを憂いているのでしょう。しかし、これは本当のことなんでしょうか?
日照時間の減少や外での活動量の減少により、体内の「ビタミンD」が低下することで免疫バランスを整える働きが弱まってしまいます。
例えばこのようなデータがあります。
東京の日照時間はインフルエンザが流行する12月、1月が高くなっています。日照時間とビタミンDが関係していることは間違いではないのですが、日照時間が長ければ免疫力がアップしてインフルエンザ予防対策になるとは言い切れないと思います。
比較的日照時間が長い日本の場合、ビタミンDが極端に不足することは無いと考えられています(公益財団法人長寿科学振興財団 「ビタミンDの働きと1日の摂取量」などによる)。
さらにビタミンDが豊富に含まれている食材はこれらです。
管理栄養士さんがおすすめするメニューの食材とかなり違っているように感じてしまいます。ビタミンDが不足していない状態で、もりもりビタミンDを食材として摂取してしまうと、過剰な状態になり心臓や血管や腎臓に石灰化させてしまうリスクがあります。できれば管理栄養士さんはこのような文献へ目をお通しになってから記事をお書きになることを希望します。
The Tolerable Upper Intake Level (UL) is not a recommended intake. Rather, it is intended to specify the level above which the risk for harm begins to increase, and is defined as the highest average daily intake of a nutrient that is likely to pose no risk of adverse health effects for nearly all persons in the general population. As intake increases above the UL, the potential risk for adverse effects increases.
Google翻訳を使えば簡単にかなり正確に内容が理解できます。
許容上限摂取量(UL)は推奨摂取量ではありません。むしろ、害のリスクが増加し始めるレベルを指定することを意図しており、一般人口のほぼすべての人に健康への悪影響のリスクをもたらさない可能性が高い栄養素の最大平均1日摂取量として定義されています。摂取量がULを超えると、副作用の潜在的なリスクが増加します。
健康に関する記事を書く場合はもう一手間お願いしたいです。
乳酸菌が免疫力アップさせて、インフルエンザ予防効果あることは、どこで証明されたのでしょうか?
私が一番目にする管理栄養士さんのお一人である方のこの記事には驚かされました。
プラズマ乳酸菌 免疫細胞の司令塔(pDC)を活性化することで、免疫力がアップし風邪やインフルエンザの症状が軽減することが分かっています。
と記載されています。このプラズマ乳酸菌は確かに免疫細胞の司令塔(?なんだけど、ここはまぁ、大人の対応をします)を活性化することは、実験レベルで確認されていることに間違いはありません。これは私が実際にこの研究結果を出した研究者とお会いしていますし、その際にデータも見せていただきました。
免疫力がアップして風邪やインフルエンザ対策として有効であるとの論文「「Preventive effect of Lactococcus lactis subsp.lactis JCM 5805 yogurt intake on influenza infection among schoolchildren.」はかなり欠点があります。この管理栄養士さんは論文をお読みになったのか、かなり疑問があります。
まず、インフルエンザと確定診断された人数では無いし、学校側が「この子はインフルエンザだ」と考えて提出したデータをもとにしていますし、事前にインフルエンザ予防接種を受けているグループといないグループに分けてさえいないのです。
この辺りは以前ブログで指摘しています。
医師にも多数ヘンテコなトンデモさんが混入しているのは間違いの無い事実です。管理栄養士さんの国家試験はかなり難しいものだと聞いています(新卒は9割、既卒だと2割強)。難しい国家資格をとってもトンデモさんは混入することを認識しながら、ウェブ上の健康関連記事を読む必要があります。