発酵鍋が大ブーム!流行中に水を差す「食中毒は大丈夫か?」

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トレンドとか大ブームって誰かが意図的に仕掛けたものが多かったりするのですが、令和初の鍋のトレンドというものがあるようで、発酵鍋が大ブームとかトレンド入りだとかの記事がウェブ上で目に付きます。私としては発酵食品神話もここまで来ちゃたんだ、と考え発酵鍋ブームをちょっとイジってみます。

発酵鍋がトレンドらしいけど、食中毒とか気になっちゃうなあ⋯。

発酵と腐敗は現象としては同じものであり、人間に害を及ぼした場合は「食中毒」と表現されます。

発酵は酵母などの微生物によって食材が変化する現象であり、そもそも酵母等の微生物は熱には弱いはず。発酵食品中に含まれる酵母等の微生物は鍋にしてしまったら死滅しちゃうんじゃないかな、などと朝っぱらから考え込んでしまいました。

そこそこ人気のあるとも噂されている私のブログの欠点は女性ファンが少ないこと。もともと女性心理がわかっていないと家庭でも職場でも評価される私が、大ブームでトレンド入りしたらしい発酵鍋に関して、食中毒の危険性や酵母等の微生物はどうなっちゃうのかを女性ファンがさらに減少することをわきまえながら少々述べさせていただきます。

「発酵鍋」で検索すると、出てくる、出てくるヘンテコな能書き

昨年2019年から確かに発酵鍋は流行っているようです。私は発酵鍋という用語を本年20120年になってから知ったのですが、そもそも「発酵鍋」はこれがきっかけになって流行したのか、トレンドになったのかもしれません。

発酵鍋のレシピ本

https://pr.gnavi.co.jp/promo/trendnabegp/2019/vote/?sc_lid=nabe_sp_spm_all

世の中の流行とかブームとかトレンドとはとんと無縁の生活を送っている私には詳細不明だけどね。

「ぐるなび」とか「食べログ」とか「クックパッド」とかでは、やたらめったら「発酵鍋」が取り上げられているようですが、発酵と腐敗は同じ現象であり、食中毒は大丈夫か?とついつい感じてしまいます。

発酵鍋は産経新聞によると

発酵鍋は代謝促進による美容効果や、整腸作用によって風邪予防をはじめとした免疫力アップの効果も期待できる。

とのこと。
産経新聞「今年の鍋 流行は発酵」(https://www.sankei.com/life/news/190922/lif1909220033-n1.html)より

さらにこんなことも書かれています

「食べることで高価な化粧品や風邪薬代を浮かせられ、節約志向の強い味方になる」と予測する。

だははっ、と思いながら発酵鍋について色々と情報収集したところ、こんな危惧を抱いてしまいました。

そのうち「一晩寝かせた発酵鍋」なんて感じのリスキーなメニューも出てくる可能性も否定できないような気がします。

発酵食品の効果・効能というか良い点は微生物が食材を変化させ、独特の香りや旨味を引き出してくれる点です。さらに発酵した食品が腸内細菌叢のバランスを整えて、お腹の調子を良くしてくれる点も効果・効能と言えるでしょう。

逆に発酵食品は腐敗と同じ現象であり、食中毒と背中合わせであることに注意が必要です。発酵食品をもりもり食べてお通じが快適と思っていたら実は下痢だった、なんてことも起きかねません。

発酵食品に関してこんなことがありました。

さようならクロワッサン、発酵食信仰をこじらせたようですね。

さようならクロワッサン、発酵食信仰をこじらせたようですね。

さらにお役所もやらかしました。

やっちまった消費者庁、酵素ジュースの腐敗に気づかないとは⋯ニセ医学推進しちゃダメだよ❗

やっちまった消費者庁、酵素ジュースの腐敗に気づかないとは⋯ニセ医学推進しちゃダメだよ❗

下痢程度ですめば良いのですが⋯。

一晩寝かせた鍋、これはかなりリスキーです

「一晩寝かせたカレー」の美味しさは誰でもが経験していると思いますが、そのうち「一晩じっくり寝かせた発酵鍋レシピ」が登場しないとも限りません。

実は一晩寝かせたカレーは慎重に取り扱わないとかなりリスキーです。こんな注意勧告をハウス食品がわざわざしているくらいですから。

一晩寝かせたカレーには要注意

一晩寝かせたカレーには要注意❗夏も冬も気を付けたいカレーの保存」 (https://housefoods-group.com/activity/e-mag/magazine/30.html)

この場合問題となるのが「ウェルシュ菌」です。このウェルシュ菌の発生数自体はあまり多くないのですが、お店で提供された食材が原因でウェルシュ菌による食中毒が発生すると一件あたりの発症者数が多いことが知られています。

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国立感染症研究所「ウエルシュ菌感染症とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/324-c-perfringens-intro.html

ウェルシュ菌はシワの治療有名となったボツリヌスと同じように、酸素を嫌う嫌気性菌なので真空パックにしても生き延びる可能性がある厄介な菌です(シワ治療に使用するボツリヌス菌は不活化してあるので心配は無用です)。

発酵鍋の食材として肉類を使用する時に、なぜウェルシュ菌に注意が必要でハウス食品がわざわざサイトに注意喚起する記事を掲載しているかと言うと、鍋の底のような酸素が少ない環境でも増殖するからです。

そこで必要となるのが再加熱、この再加熱も十分に行いつつ鍋の中をしっかりと撹拌することによってウェルシュ菌を撃退することが可能になり、安心して一晩寝かせたカレーを食すことが可能になります。

でもさあ、そうなると発酵食品に含まれる発酵食品の発酵食品たる所以である酵母等の微生物も死滅しちゃうんじゃないのかなあ、もちろん乳酸菌とかもね。

画像

https://www.excite.co.jp/news/article/Getnews_2205692/

菌活!腸活!美活!ってなんだろう笑

腸活は発酵食品を食べることによって腸内細菌叢のバランスを整えることを意味すると思います。でも発酵食品に含まれる乳酸菌とか鍋にしてしまったらその効力って維持できないと思ってしまうのは私だけでしょうか?ホットヨーグルトでお腹をスッキリ、なんて感じのキャッチコピーは少なくとも目にしたことはないぞ。

美活の意味はよくわからないけど、たぶん発酵食品を食べて美肌になろう、とか、美人になろう、ってことなんでしょうか?発酵鍋を食べて美肌になる理屈が理解できないし、美人になるメカニズムもわかんないよ~。こんな思考回路だから女性心理を理解できない、と評されることは重々承知しております。

菌活にいたっては私には意味不明です。

発酵食品に期待しすぎだろうよ。

発酵食品の酵母は熱に弱い、鍋にしたら死滅しちゃうぞ

体に良さそうな働きをしてくれそうな発酵食品、、そもそも酵母とか発酵に役立つ微生物は熱に弱いという欠点があります。逆にいえば発酵が腐敗とならないようにしっかり熱して食べことによって食中毒を防ぐことができます。

多大な期待を担う発酵鍋、熱を加えたらせっかく腸活とか美活とかの効果を失ってしまうのでは、との危惧は捨てきれません。

「ブーム」とは一時的に大流行することを意味します。「トレンド」は物事がこれからどのようになっていくかを表現した言葉。

発酵鍋がトレンド入りして、その結果ブームとなっても、ブームは一時的であることは皆さんも承知でしょうから、発酵鍋ブームにに水を差す必要もないかも。

くれぐれも発酵鍋はしっかり加熱してから食べてくださいね。乳酸菌とか死滅しちゃうけど笑。

へんな効果・効能を期待しないで、美味しいから発酵食品を食べる、美味しいから発酵鍋を食べる、それで良いのじゃないのでしょうか。

最後に一言、「酵素」と「酵母」は全く別ものである点にもご注意くださいね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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