熱があるのに、震えて寒いと感じる現象、この仕組みは謎だらけ!

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風邪をひいたときの悪寒。どれだけ厚着しても毛布に包まってもガタガタ震えが止まらない・寒くてたまらない、きっと経験あるはずです。

寒くて仕方がないのに熱があるという矛盾ともいうべき謎の現象。

この悪寒と熱の仕組みについて医師が解説します。なぜ風邪をひくと体温があがるのか?といった発熱の仕組みについても説明いたしますので是非御覧くださいませ。

風邪で熱が出ているのに寒いと感じるのはなぜ?

風邪のひき始めゾクゾクしたり、いつもより寒いと感じたことは誰でも経験していると思います。

そもそも身体が震えるのは体温を上げるための仕組みと考えられていますが、実はそのメカニズムが明らかになったのはついつい最近のことなんです。

冬の朝、外にでると意識しないでも身体がゾクゾクして小刻みに身体が震えてきます。外気が冷たいと感じたことによって自律神経が身体を震えさせて体温を上げる、つまり熱を作り出している、ここまではすんなり理解できますよね。

でも、風邪を引いた時に熱が出て体温が上がっているのに、寒気を感じて身体がガタガタと震えてくる現象、あらためて考えてみるとちょっと変じゃないの?

例えば悪寒と呼ばれる症状は一般的には細菌やウイルスによって体内の免疫システムが活性化して高熱が出る時に生じる寒気として説明されていることが多いです。実際に発熱して体温は上がっているのに、なんで寒気を感じてしまうのでしょうか?

実際は熱があるのに、なぜか頭の中では寒いと感じてしまう現象、この素朴な疑問に対する答えはすでに医学的に出ているのかと思ったら、違っていました。

発熱と身体の震えの関連性と仕組みは最近になって、そのメカニズムが明らかに(一部だけど)なっています。

今回は風邪などのウイルスや腎盂腎炎の原因となる細菌による発熱した時に、体温は上がっているのになぜ寒気を感じるのかを中心に考えてみます。

人間の身体は熱を出してウイルスや細菌などの外敵が増殖しないようにしているけど⋯。

体内にウイルスや細菌などの人体にとって敵を防ぐために体温を上げる仕組みがもともと備わっています。外的である微生物は基本的には平熱の状態より体温が上がっていると増殖できないことを、自然淘汰、進化の歴史として人類は数万年の間に獲得したからだと考えられています。

しかし、体温を上げる仕組みはそんなに単純なものではないことを「Central efferent pathways for cold-defensive and febrile shivering.」(PMID: 21610139)によって京都大学の研究者はつきとめています。

Central efferent pathways for cold-defensive and febrile shivering

この論文、私レベルの医師にはかなり難解な内容なので間違いって解釈していたらこっそりご指摘いただけると幸いに存じます笑。

ウイルスなどをやっつけるために、三段階で体温は上がる

論文によると体温を上げる仕組みは3つに分かれるようです。最初の段階は体温を維持すること、熱を逃さないように体表の血管を収縮させて熱が逃れないようにするのです。冷たいプールに入ると、口唇が紫色になったり冷たい水に手を漬けると白っぽくなるのは、血管が収縮して熱を逃さないようにしていることが原因です。

体温を上げる二段階めは、体内に溜め込んだ脂肪を分解して熱を産生します。この仕組を担っているのが「褐色脂肪組織」(Brown Adipose Tissue 論文中では略してBAT) と呼ばれているものです。以前、肩甲骨ダイエットなるものがあって、その理論的背景に「褐色脂肪細胞」があり、なんだか嘘っぽいなあ、と感じてこんなブログを書きました。

褐色脂肪細胞と肩甲骨ダイエットの深くない関係「肩甲骨には痩せポイントがある」はニセ医学では?

褐色脂肪細胞と肩甲骨ダイエットの深くない関係「肩甲骨には痩せポイントがある」はニセ医学では?

いまでも肩甲骨ダイエットって流行っているのかは不明ですが、褐色脂肪細胞(褐色脂肪組織)が脂肪分解に関わっていることは医学的事実です。この細胞を意識的に刺激してダイエットが可能なのかはいまでも大いに疑問だけどね。

褐色脂肪組織が活躍して体温を上げても十分じゃないと、脳の司令系統が判断すると(意識して判断するわけでは無い点に注意を)、身体をガタガタ震えさせて熱を生み出そうとするのです。

身体が震える仕組みはこの研究は動物実験のものなんですけど、こんな風に説明されています。

体温を上げて病気の原因となる微生物が体内で増殖しないために、このような複雑なシステムが意識しないでもスイッチ・オンされているんですね。

体温をあげる仕組みは複雑

前掲の論文より。体温を上げるには、めちゃくちゃ複雑な仕組みになっているのです。

ここまでの解釈は複数回論文を読み直したから、間違っていないはず(間違っていたら、こっそり教えて下さいませ)。

でも、風邪を引いた時に高熱なのに「寒い、寒い」と感じることを京都大学の研究者は明らかにはしていないと思うんだよなあ。実験対象が動物なんで、「寒いよ~」とも言わないだろうし、「悪寒がしますか?」と尋ねるわけにもいかないし。

そこで、私は次のように考えてみました。

まだまだ外敵を防げないよ、もっと体温を上げなさい❗と脳が司令している?

個々からはあくまで私個人の解釈であることにご注意くださいね。京都大学の研究者の論文では、風邪のひき始めにゾクゾクしたり、高熱でうなされるような状態であっても寒いと感じることを十分に説明していないです(もしも論文中でその説明があったら、老眼のために見落としたと好意的に解釈してね)。

身体が震えてくることを正当化するために、寒いと感じさせている

これが私独自の解釈です。もう一つ

今の状態では十分に病原体に対抗できる体温じゃない、寒いと感じさせて発熱システムの稼働スイッチをオンにする

この2つによって、熱があるのに寒いと感じて身体がガタガタと震えてくるんじゃないかなあ(繰り返すけどこれは私独自の解釈だからね)。

健康関連サイトの熱と震えの説明はもの足りない

熱と身体の震えの関係を調べたい人はたぶんこのようなサイトにたどり着くと思います。

日本最大の製薬会社である「武田」のサイトでは悪寒がみられる様々な病気が羅列されているだけで、あとは対処法が説明されているだけ。

悪寒について

タケダ健康サイト「悪寒」(https://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=okan)

なぜ悪寒がしたり身体が震えたり、ゾクゾクとしてしまう理由に関しては全く記載されていませんよね。

大病院のサイトはこのように説明しています。

発熱の原因の一つである「感染症」に対しては、発熱することによって免疫系を活性化させ、感染の原因微生物 (病原体) の増殖をおさえるための正常な反応と言われています。

関東労災病院「発熱のはなし」

かなりあっさりですね。

発熱した時に震えがくる仕組みに関しては、京都大学の研究者が解明の糸口を掴んだようですが、なぜ発熱しているのに寒いと感じるのかについての説明、ひょっとして私のほうが一歩進んでいるかもしれません(ってわけは当然無いだろうけど)。

高熱の時に震える理屈は理解できたとしても、なんで「寒い」って感じてしまうのか?

これをわかりやすく説明しているウェブサイトがあったら教えてくれるとうれしいな。

おまけ:褐色脂肪細胞、褐色脂肪組織について

褐色脂肪細胞を刺激してダイエットしましょう、と伝えている記事がウェブ上でかなり目立ちます。褐色脂肪細が存在するのが肩甲骨周りだとも書かれているサイトも多いです。

もっともらしいダイエット方法だと思います。褐色脂肪細胞が刺激されてダイエット可能だとしたら、京都大学の論文からわかるように体温が上がっているはずです。肩甲骨ダイエットで体温が上昇していることを明確に伝え医学論文は探した限りでは見つかりません。論文になっていないからエビデンスが無いじゃん、なんて窮屈なことを主張するつもりはないけど、褐色脂肪細胞刺激して肩甲骨周りをグリグリしてもダイエットにはならないと現時点では判断してよろしいかと思います。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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