外科手術を受けるとなったら誰でも「名医」と呼ばれている医師にお願いしたいでしょう。ところが美容整形における外科医は名医は少ないのです。テレビや雑誌で見たことのある有名な医師=名医ではありません。名医とは優れた医者です。医師は患者さんを選ぶことはできませんが、みなさんは医師を選ぶことができます。美容整形外科医選びのポイントをお伝えしましょう。
美容外科医が信頼できる実績経験を積んでいるかを簡単に見分ける方法があります
今まで何回がブログに書いてきましたが、美容外科医は基本的に形成外科を学んでいるうちに「美」という面に大きく重点を置いた医療に興味がある医師が選択してきた歴史があります。形成外科教室自体が無かった大学もありましたので、整形外科を学んでいるうちに形成外科の重要性に心を動かされ、さらに美しくなる素晴らしさを多くの人に知ってもらいたく美容外科医を志した医師が私の美容外科医のイメージでした。ですが、現状はかなり違ってきています。以下長文になりますが、是非知っておいていただきたいのです。
しかし、今では基礎的な医療の経験を積まなくても一見華々しく見える美容外科などの「美容医療」にいきなり入ってくる若い医師が増えているのです。ブログで「今どきのチャライ美容系の医師」と書いたことで、完璧に実力のない若手美容医療系医師を敵に回してしまった私ですが、美容系の治療を希望する方に一発でその医師が信頼できる修業と経験を積んできたかの判別方法をお教えします。
日本は世界で4番目に形成外科医がいる国ですので、医師選びは慎重に行ってください。
たった二つの質問で美容外科医の実力が分かります
あなたが美容医療を行っているか、主治医を探しているなら次の質問をしてみてください。
- 「小耳症の手術を先生は何例くらい経験しましたか?」
- 「永田法をご存知ですか?」
この2つの質問に即答できない美容系医師は避けることをお薦めします。
その理由を少し長くなりますが述べていきます。
質問1「小耳症の手術を先生は何例くらい経験しましたか?」
「小耳症」と聞いてもどんな病気?と思われた方も多いのではないでしょうか?小耳症とは耳が生まれつき通常より小さくなってしまっている状態で、言葉はあまり良くないのですが医学的には「奇形」と呼ばれるものです。形は一見普通でも大きさ自体が小さいものから、耳たぶしかないもの、全く耳がないものと様々なパターンが存在しています。
小耳症の形成外科手術は細心の注意と高度なテクニックさらに美的感覚が必要とされる
耳が無いだけではなく耳の穴である「外耳道」がふさがっている「外耳道閉鎖」と呼ばれる病態も決して珍しいものではありません。その場合は聴力障害も一緒になっていますし、耳が小さいとメガネすら掛けることができなく、見た目だけの問題ではなく通常の生活を送ることも大変難しいことになってしまいます。
ではどのくらいの頻度で小耳症の方が生まれてくるのでしょうか?
この正確な統計は存在しません、というのも先天的な疾患であり家族としてはあまり外にその事実を知られたくないとう現実問題が付随してきており、プライバシーの面からも国を挙げてデータを収集しているわけではないからです。形成外科医によれば経験的には1000人に一人は多すぎるけど、10000人に一人よりは遥かに多いとのことです。
一刻も早く耳を作ってあげたい気持ちは医師もご家族も同じなのですが、成長の途中で両側バランスのとれた耳を作ってしまうと、もともと健常であった側の耳は順調に成長していきますが、肋軟骨をフレームとして形成した耳の側は自然に大きくなって成長するということが無いために、子供時代に早めに小耳症の手術をすると成長に従って治療した側が小さくなってしまうため、つまり左右不対称になってしまうのです。そのご家族の耳がどの様に成長していくかの参考にするためにご両親だけではなくご兄弟の耳の形も参考にさせていただき、将来どの様な耳の形になるかを想定して中学生入学前後の患者さんには心苦しいのですが少し大きめの耳を形成させてもらいます。
小耳症で生まれてしまったお子さんを見ると、物心がつくころには友達から耳が小さいことを指摘され精神面で深い傷を残すことを考えると一刻も早く手術をして上げたいのが医師として純粋な気持ちですが、残念ながら小耳症の手術には耳の形をつくるフレームとして肋軟骨を使用します。耳の形の基礎となるその肋軟骨ですが、耳がある付近の皮下に埋め込む手術を要しますが、小学校低学年までは胸部の骨自体が細すぎて綺麗な耳を再生するのに必要な十分なボリュームを確保することが出来ない為に10歳から12歳くらいまで待っていただかなければならないことに心を痛めます。耳は立体的であり、よくよく見ると非常に複雑な形態をしています。片側の小耳症の場合は、健常なもう一方の耳を参考にして再建手術を行います。両耳が小耳症である場合はご両親の耳を参考として形作っていきます。
小耳症の手術の画期的な方法を日本人が開発
当院の美容担当医師の松下も京都大学病院で修業をしたときはこの小耳症の手術をかなりの数の症例をこなしていました。以前は「タンザー法」や「ブレント法」という術式が採用されていましたが、完成まで6回手術を繰り返す必要があるのです。その様な形成外科の小耳症の治療に革命的な手術法を考案した日本人医師がいます。
その医師が考案した手術方法はフレームとする肋軟骨を患者さんの胸から4本取り出しますが、その為には細密な設計図をどの様な耳の形にするのかの完成形を予想してプラスチックシートに実寸大で書き出し、フレーム作成時にこの設計図と寸分違わないように軟骨を取り出します。この取り出した軟骨から6個のパーツを作成してワイヤーを使って80か所固定して、そのフレームを彫刻刀の様な手術道具を使用して3次元のフレームを作り出します。このフレーム耳のある側頭部に埋め込んで一回目の手術が終了です。
このフレームを埋め込んだ手術が終了して約1年は軟骨がシッカリと側頭部にくっつく(生着するといいます)の確認して第二回目の耳を立ち上げる手術を行います。
旧式の方法では合計6回手術が必要でしたがこの方法だと2回で済んでしまうのです。患者さん、患者さんのご家族にとって肉体的にも精神的に辛い手術だったのですが、さらに仕上がりも格段に向上させた術式を考案したのが永田悟医師です。当院の美容担当の松下医師の大学の大先輩でもあります。
質問2「永田法をご存知ですか?」
永田悟医師は「永田小耳症形成外科クリニック」という名前で埼玉県で開業しておりますので、万が一ご家族やお知り合いの方で小耳症の赤ちゃんが生まれた時は大学病院より永田医師に治療相談することをお勧めいたします。
現在は日本の永田医師が開発した「永田法」が世界の標準術式になっています
テレビに出まくっているわけではありませんし、大学の教授でもありませんが、真面目に勉強をしてきて辛い修業をこなした経験のある形成外科医であれば必ず知っている、知っていなければならない形成外科医の名医なのです。
美容外科医が信頼できる実績経験を積んでいるかを簡単に見分ける2つの質問の解説は以上になります。
この2つの質問に即答できない美容外科医は、一般的に言えば「モグリ」と言えますし、少し古い言葉ですと「なんちゃって美容外科医」と判断して問題ありません!!
ご自身の体はあなただけのものとも言えますが、あなたと関わる人たちにとっても健康でいることが何よりも大切です。悔いのないようドクター選びは慎重になさってくださいね。微力ながら、役立つ情報を今後も発信して行きます!