抗酸化作用を期待して抗酸化物質を服用すると悪性黒色腫の転移リスクを高める可能性があります。
抗酸化作用はとにかく身体に良いと思い込みがちです。本来ならばがんを予防しても良さそうな抗酸化物質ですが、スウェーデンの研究者によるマウスをつかった研究では悪性黒色腫の転移リスクが2倍にもなることがわかりました。
抗酸化作用をもったサプリメントを服用して、エイジングケアや病気を治す効果やがんの予防効果を期待するのは大いに疑問が生じます。安易にサプリメントを摂取することはリスキーであると考えることもできます。
本記事の内容
抗酸化作用をもったサプリを飲むと、がんになる可能性が
数年前に、抗酸化作用のあるサプリを飲むと、がんになるリスクが2倍になる、と報告した医学論文があった記憶があります。年末年始にグッチャグチャなった資料を整理してやっと、一次ソースであるその医学論文を見つけましたのでご紹介します。
「Antioxidants cause malignant melanoma to metastasize faster」(PMID: 26446958)、ざっくり日本語訳すると、抗酸化物質は、悪性黒色腫(メラノーマ)の転移を増加させる可能性がある、になります。衝撃的な論文なのに、なぜかEvernoteに記録していなかったのには理由があるのですが、それは後述します。
抗酸化作用ってとにかく健康に良い・がん予防になると考えている方に人気のサプリの広告文で強調されていますよね。
この抗酸化作用自体が悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんのリスクを2倍にするのですから。
抗酸化作用のあるサプリは皮膚がんの1つである悪性黒色腫のリスクが2倍に(マウスだけど)
老化や病気の原因は細胞が酸化するからである。その活性酸素とかフリーラジカルとか呼ばれるものがすべての悪さの原因である、との考え方があります。
そこで酸化した細胞に対して、水素水は抗酸化作用があることによってエイジングケアやがん予防もなるし、その他諸々の病気にも効果がある、との論法がまかり通っています。
要するに抗酸化作用至上主義者のロジックは体が酸化することによって発生するフリーラジカルを抗酸化作用のあるサプリが除去する、だから抗酸化物作用のあるサプリはガンを予防するだけじゃなくて、がん治療にも効果を発揮する、です。
今回、ご紹介する論文はスウェーデンの研究者が行ったマウスに対しての実験です。その結果で導かれたのが抗酸化作用のあるサプリメントは悪性黒色腫の転移リスクが2倍になるという、抗酸化作用神話に対して問題提起する上で参考になる研究論文だと思います。
この論文ではわざわざ小見出しとして「Double the rate」と書かれています。
しっかりご自分の写真まで掲載しているところに、この論文に対する自信が伺われます。
安易に抗酸化作用のあるサプリを飲むと悪性黒色腫の転移リスクが2倍になるよ!と強調したいのですね。そもそも悪性黒色腫が局所にとどまっていれば手術で取り除くことができます。問題は悪性黒色腫が転移することなのです。
悪性黒色腫の標準治療方法です。
メラノーマという一見ほくろに見えても、実は悪性黒色腫とよばれる皮膚のがんにマウスとはいえ、抗酸化作用のあるサプリを服用してると2倍なりやすいとの結論をみなさんはどのように受け止めるでしょうか?
どうしても標準治療になんらかの方法を上乗せしたいとの気持ちになってしまうのも、わからなくはないです。でも、抗酸化作用のあるサプリを選択してしまうと転移リスクを高めてしまう危険が潜んでいるかもしれないのです。
ScienceNewsでは、肺がん転移のリスクさえ上げるとの話まで掲載されていました。
こんなバカバカしい抗酸化作用の説明を信じますか?
以前ブログに書いた抗酸化作用の作用の説明にこんなバカバカしい実験(?)をご披露していた人がいました。
今でも水素水の次はケイ素水だ❗と張り切って販売している会社もあるようですが⋯。そもそも人体に備わっている酸化作用は細菌類をやっつける働きもありますので、活性酸素が悪者で、抗酸化作用があるからエイジングケアがあり、病気を治し、がんの予防やがん治療に効果があるとの結論に到るまでは、まだまだ研究の余地が山ほどあるのです。
論文として発表されています。
代替医療を選択してしまうことは、死亡リスクを高めることが明らかになっています。
まずは標準治療を選択しましょう
今回取り上げた論文はマウスが対象です。マウスにとっては転移の可能性があったとしても、人体の場合は違った結果になるのでは、つまりがん治療効果がある可能性も全否定はできません。
しかし、マウスの実験でこのような結論になった抗酸化作用のあるサプリメントを実際に悪性黒色腫になってしまった患者さんに対して投与する臨床研究、特に前向きの研究が倫理上の問題で許可される可能性は低いと思われます。
自分が、あるいは家族が病気になってしまった時、ついつい一般の治療、標準治療以外の手段を試してみたい気持ちになってしまうのはしかたのないことだと思います。標準治療だと普通の治療になってしまうので、なんかを上乗せすればさらに効果が出るのでは、と考えるのも当然です。そこで登場するのが、トッピングの1つがサプリメントです。
悪性黒色腫になってしまって、標準治療だけでは不安という方がヘンテコな医療機関を受診して、抗酸化作用のあるサプリの購入を薦められたら、患者さん負担の人体実験、それもかなりリスキーな人体実験を行っていることになります。
サプリメントなんて毒にも薬にもならないので、ついつい病気の治療中に飲んでいてもいいですよ、と言ってしまいがちな医師も少なくないと思います。
マウスに対する実験結果ではあっても、少なくとも悪性黒色腫の患者さんには、「抗酸化作用のあるサプリメントの服用は控えてね」と告げるべきなんでしょうね。
追記 2020.1.7
肺がんの場合はビタミンEが転移リスクを高める可能性があります。
良かれと思って抗酸化作用を期待してビタミンEを服用すると逆効果です。