「ストレスが病気の原因」という思い込みで死亡率が2倍⁉ストレスと病気の関係について

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体調が悪く医療機関を受診して医師から「ストレスが原因ですね」と告げられ、何とはなしに納得していませんか?

なんでも病気の原因をストレスのせいにすると⋯

「最近、風邪をひきやすくって」「ストレスが免疫を落としますからね」とか「最近にきびがひどくって」「ストレスたまっていませんか」とか「胃が痛いんです」「ストレス性の胃炎ですね」なんて良くありますよね。当院では病気の原因をストレスですね、と患者さんに告げるのは基本厳禁としています。医師にとっても楽チンな魔法のことば「ストレス」は一気に患者さんを納得させる方法ですが、当院はなぜか私を筆頭に理屈っぽい医師がそろっていますので、他の数字化できるか明らかに目視できる原因を探します。そういえば昔から「病は気から」という言葉があり、病気をあんまり気にしすぎるなよ、くよくよするともっと病状が悪くなるよという意味で使われていますが、これも医師が使ってはいけない無責任な言葉だと思っていましたが実は⋯。

違った意味でストレスが健康に影響を及ぼしているらしい

違った意味とはどう違うのでしょうか?少し意地悪な毒気があるフランス人が「ストレスが健康に悪影響だと思っているのなら、それは正解です。その様な考え方をしている人は心筋梗塞を発症するリスクが高いですよ」との結果になった医学論文が発表されました。題名は「Increased risk of coronary heart disease among individuals reporting adverse impact of stress on their health」でEuropean Heart Journal(2013; 34: 2697-2705)に掲載されています。

ストレスが自分の健康に影響している、と思えば思うほど病気になるとの結果

この論文は1985年から数千人の公務員を追跡調査したものでした。その結果はストレスが健康に影響を与えていると考える人とストレスが自分の健康に影響を与えていないと感じている人を比較したところ「ストレスが健康に影響していると考える人は心筋梗塞に2倍なりやすかった」という結果がでました。

調査の細かい内容

対症は英国の7268人の男女の公務員です。18年間に渡って追跡調査をしました(英国でも公務員はあまり転職しないので追跡しやすいんですね)。その人たちに「あなたが生活上で受けるストレスはあなた自身の健康にどのように影響していますか?」との質問をしました。答えは「全くない」から「多大な影響がある」までの5段階で答えてもらいました。対象となっていた人のうち、19年間で352人が心筋梗塞で亡くなったか、発作を起こしていました。

・「全くない」と答えた人と「多大な影響がある」と答えた人を比較すると後者が心筋梗塞で亡くなったり、発作を起こしていたリスクが2.12倍も高かった

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結果に影響する因子を考慮してもやっぱりリスキー

この調査をみて統計学に詳しい方は影響を与える因子が多いので単純に比べられないんじゃないとの疑問を持たれると思いますが、人の論文に突っ込みを入れがちなフランス人です。その当たりはしっかりと解析していて「生物学的因子」「行動学的因子」「心理学的因子」などのこの調査に影響を与える因子を調整したのちも同様の結果がでることを報告しています。これらの因子を検討して再解析してもリスクは49パーセント高かったのです、つまり1.5倍です。

追加でさらにねっちこい結果を報告

現代は以前に比べてストレス、ストレスと言われることが増えているためか、多くの人がストレスを感じているようになっています。
しかし、今回の研究は
・ストレスを感じる人は増えているが、ストレスが自分の健康に悪影響を与えると回答した人だけに心筋梗塞のリスクが上昇していた

つまり、全体的にストレスやプレッシャーを感じる人が増えていても、それが病気に影響すると思わない人は心筋梗塞になりにくく、気にする人ほど心筋梗塞のなりやすいとのことです。

となるとこんなツールを使ってストレスが病気の原因じゃないかなんて思っていると心筋梗塞になるということか?

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厚生労働省HP

ストレスの個人差

ストレスを感じやすい、感じにくいはもちろん個人差があります。神経質だとか、鈍感だとかそんな言い方もするかもしれません。しかし、どちらにしても「ストレスをストレスと感じる」こと自体を防ぐと、今回の研究から導かれた結果を考えると心筋梗塞のリスクは減少します。その為には個人個人に合わせたストレス解消法を考えていかなければなりません。例えば急速な情報機器の発達についていけないオッサンはPCなら何とかなるけどスマホを使いまわしている若者と自分を比較してストレスを感じているかもしれません。しかし、ストレスを外からの影響と大きな意味で捉えると人間が生きていく上では避けることが不可能なんではないでしょうか?ストレスを感じること自体が病気を引き起こすわけではなく、ストレスが自分を押しつぶしそして病気に導くという考え方がたった一つの例ではありますが、今回の研究では「心筋梗塞のリスクを高める」という結果になっています。となると昔から言われている

「病は気から」ということわざは案外、健康に人生を過ごす為に必要な名言かもしれませんね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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