歯ぎしりとにストレスは本当に関係あるの?という素朴な疑問⋯原因と結果が逆じゃない?

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歯ぎしりの原因はストレス説って真実なのか?何でもストレスが原因と言っとけば誰もが「なるほど」と理解しがちですが、五本木クリニックの方針では病気の原因を「ストレスからです」とか「気にし過ぎですよ」と説明することは厳禁。 ストレスの種類は様々で、それぞれ測定する方法がちゃんとあるのです。

歯ぎしりの原因はストレス説ってホントかね?

何でもストレスが原因て言っとけば皆さん「なるほど、なるほど」と理解してくれるでしょうけど、当院の方針は病気の原因を「ストレスからです」とか「気にし過ぎですよ」と説明することは厳禁としています。

いろいろなストレスを測定する方法があるのですが、その精度はウソ発見器レベルです。話は飛びますが海外ドラマなどでウソ発見器ってテレビなどで登場することがありますが、使用することは問題ないですけどその結果は裁判では証拠とはならないってご存知ですか?ウソ発見器をつかって刑事とか検察が「こいつはウソをついているだろうから次はこんな質問をしてウソを暴く証拠を見つける」という使い方しかできないのです。

話がそれましたが、歯ぎしりをする人は頭痛を起こしたり、首が痛くなったらり、肩こりになりやすく「歯ぎしりを治せば肩こりから何々まで⋯・治る」という論調の広告を目にしてほんとかよと素直じゃない性格の私は素朴な疑問を持ってしまったのです。

起きている時間はあまり歯ぎしりってしていないと思います。悔しがって我慢する時の表現として「歯ぎしりする」という使い方があります、慣用句としては「ごまめの歯ぎしり」なんて言葉もありますが、若い人は使いませんね。他のいい方では「歯噛みする」というのもあります。

どちらにしても悔しさ・残念な事があって我慢する時に奥歯を中心に「歯を食いしばる」行動をしめしています。悔しいことや残念なことがあり我慢するのは当然ストレスをためてしまいますので「歯ぎしりをする人はストレスが溜まっている証拠という主張も出てくるでしょう。

歯ぎしりとストレスは関係ない説

世の中には私のように疑い深い人もいるようで「Stress, anticipatory stress, and psychologic measures related to sleep bruxism.」なんいう論文をピッツバーグ大学の人が書いていました(J Orofac Pain. 1995 Winter;9 (1) :51-6.)。睡眠中の歯ぎしりとストレスの関係を研究実験したものです。歯ぎしりをする人100人を対象に行った研究ですが、前もってストレスをどれだけ感じているかを精神分析的質問をして、15日間にわたって筋電図で寝ている最中にどれだけの力で歯をかみしめているか、つまり歯ぎしりをしているかを調べたものです。
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そしてその結果ですが
・ストレスによって歯ぎしりをしていると思っている人ほど歯ぎしりを強くしていた
・歯ぎしりをしているけど、ストレスはあまり感じていない人もいた
という結果になりました。

ということは自分はストレスを感じているから歯ぎしりをする、と考える人ほど歯ぎしりをしてしまい、逆にストレスをあまり感じていないけど歯ぎしりをする人も多かったという、ことになります。つまりストレスが溜まるから歯ぎしりをするということにはなっていませんでした。

歯ぎしりをするとストレスが発散される説

マウス(実際に私たちが実験で使う時はなぜかネズミと呼びます)を使ったこれは動物実験です。ストレスのかかるグループとストレスがかからないグループの二つの条件下においてマウスのストレス度をストレスがかかった時に分泌される胃酸を測定することを行ったものです。どうやってストレスを掛けたかという方法はネズミが可哀そうなんでここではあえて書きません。
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Elevation of histidine decarboxylase activity in skeletal muscles and stomach in mice by stress and exercise より

するとストレスを掛けたマウスほどガリガリとこの「歯噛み」させるための板を齧ったとの結果が出ました。相手はネズミですからピッツバーグ大学の方法のように前もって性格分析なんてことは出来なかったでしょうが、胃酸等から推測されるこの論文では「うつ症状」とされるネズミほど板をかじっていたという結果でした。「歯ぎしりでストレスを発散している説」はこれを基にしてネット上では広がっているようです。

歯医者さんの歯ぎしりを防ぐ方法

歯ぎしりをすると歯がすり減ってくるのと歯と歯茎に多大な力がかかってしまうので歯医者さんとしては、歯ぎしりは改善しましょうとおっしゃっている方が大多数です。歯に余計な物理的な力が掛かってしまうので良くないという話は専門外の私でも十分に理解できます。

歯軋りで歯が削れて減ってしまう

その為に、「マウスピース」や「ナイトガード」と呼ばれるものの使用を進めています。マウスピースはボクシングの選手がパンチを受けた時歯が折れたりしない様に使用していますし、スポーツ選手が全身に力を入れる時それこそ「奥歯を噛みしめて」パワーをだすので、その都度歯と歯茎に余分な力を掛けると良くないということで普及しています。また、力を入れる時に、マウスピースを装着しているといつも以上のパワーも出せるそうです。ナイトガードは睡眠時の歯ぎしりして歯を傷つけたり歯茎に負担を掛けない様にするために使用します。
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ストレスがあろうがなかろうが大人では5-8パーセントの人が睡眠時にはぎしりをしています(http://allabout.co.jp/gm/gc/302290/)。実は私は凄い歯ぎしりやさんで(そんな言葉あるかどうかしりませんが)、寝ている間にメチャクチャうるさいと家人にしてきされこのナイトガードを使用しております。私に似たのか子供も気持ちよさそうに歯ぎしりをしていますが、歯ぎしりをするのは大人より子供に多く見られる傾向があるとのことです。

歯ぎしりストレス原因説によればそれじゃ子供の方が大人よりストレスが掛かっていることになりませんか?日本の子供はそんな厳しい環境に育っているのかな?

よくよく調べたら今度は高齢者ほど歯ぎしりをしないというデータもあるようです。それって歯ぎしりするための歯自体が無くなって咀嚼する筋肉も弱っているからじゃないの、と嫌な突っ込みを入れたくなってしまいました。

歯ぎしりストレス原因説を反対方向から解釈している人

これはあまり言いたくないのですが、このブログで私が主張したいことです。「歯ぎしりを治すとストレスが解消します、だからかみ合わせを治しましょう」的な主張をされている歯医者さんがいるのですが、これ変です。

ストレスが歯ぎしりを引き起しているかどうかはまだハッキリした結果は医学上はでていません。歯ぎしりが歯医者さんのカバーする領域で歯を痛めてしまうから、歯ぎしりをさせないようにするために睡眠時にナイトガードを使うように指導するのも納得します。

でも歯ぎしりを治すとストレスが解消するってそれは原因と結果を取り違えていませんか?年を取って髪の毛が薄くなります、それを防ぎ、薄毛を解消する薬は多くの方に知られていると思います。極端なことを言えば「歯ぎしり直してストレス解消説」は薄毛を治して老化を防ぐと同じ論理になってしまうと考えるのは私だけではない思います。

さらにストレスが溜まっている人は夜間に歯ぎしりをしていてストレスを解消しているという考え方も動物実験からはできますので、歯ぎしりを解消したら、ストレスも解消できなくなっちゃいませんでしょうか?

医学的に歯ぎしり改善方法があるのか?

歯ぎしりをしている人に私たちだったら提案できる方法があります。しわ伸ばしで使われるボツリヌス菌を使って「小顔に実現」なんて売り文句を見たことが無いでしょうか?咬筋と呼ばれる筋肉にこの注射を行うといわゆるエラの張った顔は修正することが可能です。それによって小顔になることが出来るのです。このエラの原因が歯を食いしばった時に使う筋肉が盛り上がって大きく力こぶを作ることを、この注射をすることによって筋肉の収縮力を弱めることが出来るのです。

ということは
・筋肉を弱めることによりストレスからくる歯ぎしりが出来にくくなる
・もしも、ストレス発散が歯ぎしりという行動をとらせていたら、エア歯ぎしりは可能でありストレスは解消できる
・歯ぎしりが歯を無用にすり減らし、また歯茎を傷める心配がない
・ついでに小顔にもなれる
といいことだらけではないですか!

自画自賛ですので、お前は最終的にそれを言いたかったんだとの批判も出るかもしれませんが、当院では歯ぎしりの治療を目的とした注射治療は痛しておりません。

【結論】歯ぎしりはストレスと関係はしている。しかし因果関係があるとは言い難い

このブログでは歯ぎしりストレス原因説、歯ぎしりストレス発散説はまだはっきり証明されていないことをお伝えしました。そして、歯ぎしりを治すと万病が治るということも考えにくいという説明を中心に述べてきました。

でも歯ぎしりをすると肩こりが起こるとか頭痛を感じるという方も実際には多いので、さらに勉強をして調査を進めて「歯ぎしりと肩こりの関係」「歯ぎしりと頭痛の関係」なんてブログをアップしたいと思っております。私たち医科としては情報はもちろんのこと知識も歯医者さんにはかないませんのでぜひぜひ面白くてためになる情報がありましたらご教示いただけると幸いに存じます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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