年末年始の太らないための対策は正月太りの原因を知ることが重要です。お正月に太りやすい原因として、冬は太りやすい時期である、運動不足だから太る、飲み食いを普段よりしてしまうから太ってしまうなどの解説されていることが多いようです。これは本当なのか医学論文ベースで検証してみます。
本記事の内容
正月太りを気にするなら、まずは原因を知ってから予防法と解消法を
世の中では「正月太り」との言葉があります。年末年始は特に太りやすい時期として多くの方が受け止めている一方で
お正月は冬なので、もともと代謝が落ちて太りやすい時期であるのが原因、だから太りやすい
と医師が医学用語を多発して、お正月太りの原因を季節的なものであると述べている記事もあります。
そのためかお正月太りを予防するためには、食べ方に工夫をしましょうと、栄養士さんが食べ方の工夫を述べたりお正月太りは原因はこれだから、こんな方法で解消しましょうと、トレーナーの方が懇切丁寧に解説しているサイトが目につきます。
そもそも、お正月は太りやすい原因は季節・時期であるのか、お正月太りを予防する食事方法は正しいものなのか、そもそもお正月に体重は増えるのか、などなどを出来るだけ医学論文等を引用しながら検証してみます。
冬は太りやすい季節であるのが原因、だからお正月太りしてしまう、これって本当?
あるサイトで医師がこのようにお正月太りに関して医学的っぽい用語で解説しています。
医学的にいえば、冬に太る要因にはさまざまなものがありますが、日照時間減少・照度低下により、体内で重要な役割を果たしている三大伝達物質のひとつである“セロトニン”の分泌量が低下してしまうことから、セロトニンの持つ精神安定作用や食欲コントロール作用も弱まり、食欲増進しやすくなる面もあります。
「kufura」なぜか太る⋯!悩ましい正月太りの原因はこれでした【医師に聞く正月太り対策#1】
セロトニンが減少する → 精神安定作用が弱まる → 食欲コントロールができなくなる → 食欲増進してお正月太りになる
そもそも日照時間が減ることが原因である、ってことになるようです。実際に日光とセロトニンは関係が深いものと解釈されています。でもさあ、こんなデータがあるんだよなぁ。
日照時間に関しては東京の場合は6月が低く、お正月前後の12月と1月は他の月と比較して日照時間は長いのです。金沢の場合は逆に年間を通してお正月前後は日照時間は短いです。
セロトニンの影響によってお正月太りがしやすいとなると、金沢の人はお正月太りをしやすくて、東京の人はお正月太りとは無縁である、との結論になってしまいます。
金沢の人と東京の人のお正月太りの現状がわかるような詳細なデータを得ることはできなかったけど、常識的に考えてセロトニンの分泌量がお正月太りの大きな原因では無さそうです。
お節や食材の食べ方を工夫すればお正月でも太らない、は正しいか?
冬は代謝が落ちやすい、だから太りやすいとの話が出回っていますが、この真偽に関しては今回は触れません。
お正月太りを食べ方は食材に注意すれば予防になるし、万が一お正月太りしても解消になる、と記載された記事が多いです。
例えば
食べる順番によって、太りやすいかどうかが左右されるということは知っていましたか。特に食事の中でも、急激に血糖値をあげるような炭水化物系は後回しにしたいところ。
「TABI LABO 」年末年始の正月太りを予防するために気をつけたい7つのこと
野菜を主食より先に食べることによって血糖値やヘモグロビンA1cが下がることは、半ば常識化しています。これは食べる順序が逆になっただけで、それ以外の条件が同じであれば医学的に正しいものです。
これは「A simple meal plan of ‘eating vegetables before carbohydrate’ was more effective for achieving glycemic control than an exchange–based meal plan in Japanese patients with type 2 diabetes 」(PMID: 21669583)という日本人研究者によって発表された有名な論文です。
これが一次ソースとなって、食事するときは野菜から食べれば太らない説が巷に流布したものだと思われます。実はこの研究には疑問点があるのです。
野菜を先に食べてもらったグループには、緑色野菜を食べることを推奨し、フルーツを食べることを控えるように指示し、さらに20回は噛むように伝えています。
さらに野菜を先に食べるグループは先に主食を食べるグループより一日あたりの野菜摂取量が半分になっています。
その代わりに、主食であるコメの摂取量が野菜を先に食べるグループと比較して、減少している量が少ないのです。血糖の上昇値に関する医学的な検証は確実とは言えませんし、長期的な血糖の動きをチェックするヘモグロビンA1cの変化にも疑いが生じてきます。
野菜を食べてお腹がいっぱいになった → 後回しになった炭水化物は多く食べられなかった →ひょっとしたら体重が減少するかもしれない
これが正しい解釈だと私は判断します。
同じ量を食べるなら、野菜を先に食べようが炭水化物を先に食べようがお正月太りの予防法にも解決法にもならないんじゃないでしょうか?
逆に冬は太りやすい季節じゃなくて、痩せやすい季節説は正しいか?
冬は気温が下がるために、それに伴い体温が下がるのでそれを修正するために脂肪が燃焼されるために、冬は痩せやすい季節である、との話を管理栄養士さんが述べています。
冬は太りやすい、というイメージがありますよね。 その理由を、「寒さで脂肪を蓄えてしまう」「代謝が落ちてしまうから仕方ない」と考えている人がいますが、本来は、冬こそ痩せるチャンスなのです。
「EPARK REPORT」冬に太りやすい理由。実は痩せやすいって本当?食事と運動で冬もダイエット
これ最初にご紹介した医師とは全く逆のことを言っています。
冬が痩せやすい季節である理由として
冬になり気温が下がると、人間の体温も必然的に下がります。体温が下がると、体温を保とうとしてエネルギーを使います。
だから冬は痩せやすい季節だそうです。
かたや冬はセロトニンの分泌が悪くなるから食欲を抑えられなくなり太りやすい、もう一方は基礎代謝が増加するので瘦せる、と真逆の説が出てきてしまっています。
そもそも、体重の減少に季節は関係しているのでしょうか?
古い論文で「体重発育における季節変動とその地域性に関する研究」(民族衛生 第59巻 第4号 158ー167 1993)というものがあります。
小学生の体重の変化を観察したものです。
個人別のデータについて,季節変動を求めた結果,多くの子どもで有意な季節変動が認められた.
体重は7月に最低となり、最高値はばらつきがあり特定の月に体重が増えることはありませんでした。
正月太りする人もいれば、お正月であっても体重にまったく変化ない人もいる、お正月は太りやすいとは限らないこれが私の結論です。きっと、昔の人はお正月には毎日の過酷な労働や体力を消耗する日常生活と比較すると、のんびりの日々を送り、通常の質素な食事より豪華なお節を食べるので、正月太りしていたのかもしれません。
そんなことより、みなさんに知ってもらって考えていただきたいことがあります。以下ガラリと話が変わりますので、お時間があったら読んでいただけるとうれしいです。
こんなことが今の日本では起きています。
大人が正月太りを気にしている日本は大問題を抱えています。
少子化が大問題となっている日本。お正月に太ることを気にしているより、こっちを気にしませんか?
夏休みには両親の田舎に家族で帰省、冬休みには家族でスキー。幼い頃、楽しかった思い出として多くの人の記憶に残る長期休暇ですが、その裏でひっそりと「つらい」「早く休みが終わって欲しい」と感じる子どもたちがいます
こども食堂が各地で設置されても、ボランティア中心で運営されているために実施回数は月に数日です。つまり冬であっても夏であっても長期に学校が休みになると体重が減少する子供がいるのです。
私はこの問題の解決策を云々するだけの知識もありませんし、勉強もしていませんし、聖人君子でもなければ、叩けばホコリの一つや二つはでてくるでしょう。でも、栄養が学校の給食頼りである子供がいるのは世の中は変だと思います。
将来的に少子化が問題になることがわかって数十年以上経過しています。ついに昨年2019年は出生数が90万人割れしています。子供がどんどん減っいく、日本の社会構造は変です。
昨年はある幼児虐待死事件で警察の捜査にほんの少しばかり協力をしました。こんなに子供が虐待され死亡者まで出るのは変な社会構造だからです。
少子化問題と貧困問題と虐待問題は多くの要因でからみあっているはずです。
私のような一町医者がゴチャゴチャ言ってもなんの解決にもならないことは十分わかっていますけど、この問題について少しでも多くの方が関心を持ってくれて、国として具体的な効果のある政策が取られるような2020年になるといいなあ、と考えてこんなブログで新年早々に書きました。
本年も思想信条に関わらず、「変なものは変」と言いつつ、微力ながら正しい医学情報をわかりやすく伝える努力を継続していく所存です。