男性不妊症の原因が精子がない無精子症の場合、発がんリスクが8倍になるという驚きの論文

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少子化、晩婚化の問題と共にクローズアップされているものとしてお子さんに恵まれない「不妊症」があります。

不妊症って女性だけに問題があるわけではありません

やっと国も重い腰を上げて不妊症に対して補助を出すことになって良かったと思っています。女性に原因のある不妊症については以前ブログ「妊孕力って言葉知っていますか?ART (生殖補助医療)ではあまり高齢の出産は薦めていないことの理由を調べてみました。」で述べてあります。

不妊と言えばなんとはなくに女性に問題があるようなイメージがありますが、男性に問題がある場合も少なくは無いのです。私が学んだ医学生時代でも不妊の原因は女性三分の一、男性三分の一、不明が三分の一と学びました。もちろん30年ほど前の事ですので、原因は追究され不明は現在ではもっと少なくなっていると思われます。

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男性側に問題があり出産できない場合を「男性不妊症」という名で呼ばれていますが、何科を受診すればいいかをご存じない方も多い様です。男性の不妊症の原因のほとんどは泌尿器分野に存在しますので受診をするなら「泌尿器科」へどうぞ(実は私は専門は泌尿器です)。

でも、一般の泌尿器科では詳しい検査は出来ませんし、治療実績も積んでいません。最近、不妊で悩める男性を啓蒙する意味で獨協大学泌尿器科の岡田弘教授が「精子力」という名前で男性にも泌尿器科を受診しやすい環境づくりに非常に熱心に活動されています。

男性不妊症の人はがんになるリスクが高いという研究がありました

岡田先生の一般の方が読んでも分かりやすい「男を維持する「精子力」」という本を読んで、得意ではない男性不妊症について調べていたらショッキングな論文を発見しました。

スタンフォード大学泌尿器科の医師が2000人の男性不妊患者さんを対象に研究を行ったもので、「不妊症の男性は他の男性と比較してがんになるリスクが高い」というものです。正式な論文は「Increased risk of cancer among azoospermic men 」(Fertil Steril. 2013 Sep;100 (3) :681-5. )です。azoospermicとは「無精子症」と呼ばれるもので、精液中に精子が含まれていない状態を指し男性不妊の原因の一つとなっています。

アメリカでは男性不妊症と診断されている人が400万人もいるそうで、そのうちの15万人が「無精子症」だと考えられています。無精子症になってしまう原因も色々ありますが、それは岡田先生の本に詳しくかいてありますので、ご興味のある方はお読みください(ゴマすりすり)。私の古い男性不妊症の知識でも無精子症の方は睾丸腫瘍、精巣がんになりやすい傾向があることは知られていました。しかし、他のがんの発症リスクが高まることは恥ずかしながら考えてもいませんでした。

今回の研究は男性不妊症と診断された人の精液検査をおこない、そのうち451人が無精子症と診断されました。ここで無精子症と診断された人を約7年間追跡調査してその間にがんになった人をカウントしまいした。

その結果は

  • 男性不妊症の人は調査期間中に2238人中29人ががんを発症していた
  • 一般男性ががんを発症する可能性は2238人を対象にした場合16.7人と予想された
  • 男性不妊症の人はそうでない人と比べてがんになる可能性が1.7倍高かった

男性不妊症を治療すればがんになりにくくなるか?

そんな単純な疑問が当然湧いてきます。

この結果の解釈としては不妊症になった遺伝子的な問題が男性の全てのがんの発症を高めた可能性があるというのが一般的です。ということは男性不妊症を治療してもがんの発生リスクを抑えることはできないことを意味しています。

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上記論文よりさらにこの研究は厳しい結論を導き出しています。

30歳未満で無精子症の男性の発がんリスクはそうでない人の8倍に達する。

がんになる人とならない人の差が8倍もある因子ってあまり聞いたことないです!

無精子症の男性はどうすればいいのか?まずは男性不妊症の原因を調べることです

もちろん治療が先決問題です。睾丸で精子がつくられているのに精液に精子が混じり込めない病気もありますので、妊娠させることが出来ないとあきらめることはありません。男性不妊症の治療は専門家(私は専門家ではありません)によって驚異的な進歩を成し遂げています

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睾丸から直接精子を取り出して人工授精をすることだって今の医学では可能なのです。しかし、今回の研究結果を参考にするならば、若い時に無精子症と診断された場合は全てのがんのリスクがたかまりますので、定期的に健康状態を診断する必要があります。

当院では男性不妊の精液検査は行っていますが、より詳しい検査や治療が必要なときは専門医である元町宮地クリニック獨協大学泌尿器科横浜市立大学医学部泌尿器科の小川毅彦医師等のプロフェッショナルをご紹介しております。実際上プロフェッショナルと呼べる医療機関は全国でも45か所くらいしかありません。

もちろん当院は無視して上記の医療機関を直接受診していただく方が無駄な時間が省けますね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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