「この後、車を運転されたりしませんよね?」誰しも薬局や病院で服用の際に、このような確認された経験があるはずです。
クスリは服用すると眠くなるものが多く、眠くなりにくいをアピールする製品も少なくありません。今回取り上げるのは眠くならない風邪薬問題です。本当に眠くならないのでしょうか?
本記事の内容
風邪薬の気になる副作用は「眠気」、眠くならない風邪薬はあるのか?
風邪薬って眠くなるからイヤだ、飲みたくない、という方も多いのではないでしょうか?なぜ風邪薬を飲むと眠くなるのか?眠くならない風邪薬と普通の風邪薬をはどんな違いがあるのか?年末年始は通常の医療機関はほとんど休みです。ドラッグストアで処方箋無しで買うことのできる眠くならない風邪薬は眠くならないで、本当に風邪の症状に効くのか?との素朴な疑問がふと頭に浮かびました。
上気道と呼ばれる鼻やのどがウイルスの感染によって様々な症状が現れるのが、医学用語でいうところの急性上気道炎であり、つまり一般的には風邪と呼ばれていますね。
風邪を引いた場合の代表的な症状は、くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・のどの痛み・咳・たん・発熱と様々であることから「かぜ症候群」とも呼ばれています。医療機関が休診だけど救急病院を受診するのは控えるべきですし、控えようと考える方が多いのが風邪。そんな時にドラッグストアで風邪薬を購入するでしょうけど、「眠気のこない風邪薬をください」と伝えませんか?市販の風邪薬が嫌われる主な原因の一つが副作用である「眠気」ではないでしょうか。
大手調剤薬局のサイトでも風邪薬の副作用としてこのような症状が書かれています。
このサイトでは風邪薬を飲んだ時の副作用として「眠くなる」がトップに記載されています。風邪薬の代表的な副作用は眠くなることなんでしょうね。
市販薬の風邪薬で眠くなる原因として考えられるものは、鼻水を抑える抗ヒスタミン剤であると作用機序からは医学的に判断されています。そうなると眠くなる成分の抗ヒスタミン剤が含まれない「眠くならない風邪薬」はかぜの主症状である鼻水には効果が無いことになりますね。
風邪薬(総合感冒薬))は一般用医薬品(OTC)市場で販売額は常に上位に入っています。
市販の風邪薬の眠気の原因として咳止め目的に成分に含まれる「デキストロメトルファン臭化水素酸塩」もありますけど、今回は鼻水などの鼻関連の症状を抑える成分に関して考察してみます。
眠くならない成分が入っていない風邪薬はあるのか?
市販されている風邪薬の鼻の症状を緩和する目的で成分に含まれる、抗ヒスタミン剤が眠気の原因だと考えて話を進めます。抗ヒスタミン剤はクロルフェニラミンマレイン酸塩・マレイン酸カルビノキサミン・塩酸ジフェンヒドラミンなどが代表的です(他にも多数あり)。ちなみに1位は「パブロン」だそうです。
そこで個人的に市販の風邪薬として思い浮かぶ、第一三共ヘルスケアが販売している「ルル」シリーズの添付文書をチェックしてみました。
ルルシリーズの風邪薬の特徴として、効果効能に「鼻水」「鼻」「鼻詰まり」が書かれていないのは「ルルアタックFXa」「ルルアタックEX」「ルルアタックEX顆粒」「ルルアタックTR」です。
しかし、ルルアタックFXaは抗ヒスタミン剤であるクレマスチンフマル酸塩が含まれていますし、ルルアタックEXもルルアタックEX顆粒もクレマスチンフマル酸塩が含まれています。最後に残ったルルアタックTRだってクロルフェニラミンマレイン酸塩(眠くなる薬として有名な処方薬であるポララミンの主成分)がしっかり含まれてます。
残念ながらルルシリーズは全部抗ヒスタミン剤が含まれてるので、眠くならない風邪薬はルルシリーズに無いようです。
眠くならない風邪薬をウリにしている市販薬として、私が見つけることができたのは漢方薬「葛根湯」を主成分とした「改源」と「麦門冬」を主成分とした「パブロン50」(これはあまり聞いたこと無いなあ)くらいしかありませんでした。
でもさあ、抗ヒスタミン剤が入っていないからと言って、本当にこれらの風邪薬は飲んでも眠くならないの?
ちなみに副作用が無い、あるいは少ないと考えられている漢方薬でもこんな副作用があります。
特に年末年始はご注意くださいね。
眠くなる成分が入っていない風邪薬も眠くなる可能性があるぞ❗
前掲の調査によると一番売れている風邪の市販薬はパブロンシリーズとのこと。数多くあるパブロンシリーズの中で、眠くならないことを強く主張しているのが大正製薬の「パブロン50」です。大正製薬のサイトには以下のように記載あります。
でもさあ、アセトアミノフェンが一回服用量中に150mg入っているよねえ〜。アセトアミノフェンはかぜ症状を緩和させる目的で処方薬として多用されていますし、インフルエンザになった場合に副作用の面から安全性が高いとして処方が推奨されているカロナールの主成分です。眠くなったり、尿が出にくくなる抗ヒスタミン薬、便秘を起こしやすいジヒドロコデインリン酸塩、糖尿病や高血圧に影響を与えるdl-メチルエフェドリン塩酸塩が入っていません。
https://www.catalog-taisho.com/04537.php
カロナールの添付文書をよくよく見てみると
成人55人にカロナールを服用してもらった臨床成績の結果として「軽度の眠気」が書かれています。
ということは、鎮痛解熱効果を狙ったアセトアミノフェンは副作用として「眠気」が出てしまうことになりますね。
副作用が全く無い、ゼロリスクの薬はありません
私たち医師の多くは、薬はそれなりの効果があれば必ずそれなりの副作用がある、と考えています(中には変な医師もいる可能性は否定しませんけど)。
聞きなれない言葉だと思いますが、ノセボ効果というものがあります。
この記事でノセボ効果について書きましたが、偽薬効果であるプラセボ効果の真逆の現象、薬の作用機序から考えてもありえない副作用が出る現象が「ノセボ効果」です。
薬の効果を調査する治験においてはノセボ効果によると考えられるものでも、しっかりと報告する義務があります。眠くならない風邪薬としてパブロン50を飲んでも眠くなる可能性はゼロでは無いです。
風邪の症状の1つとして「眠気」があります。
これは疲労や寝不足が風邪をひくきっかけになっていることもあるでしょう。医学的な風邪の仕組みを考えるとこのようにも解釈できます。
風邪をひくと、風邪の原因であるウイルスを体内で退治するために免疫機能が活性化されて(免疫学や感染症の専門家はこの辺りの表現のツッコミはご遠慮ください笑)、サイトカインと呼ばれる物質がウイルスが増殖することを防ごうとします。このサイトカイン自体に眠気を引き起こす作用があるので、眠気は風邪の症状とも考えられます。つまり、風邪を引いた場合はどんな風邪薬を飲んだとしても眠気は出ちゃうのです。
先日イオンが従業員に対してマスク着用を禁止する通達を出したことが話題になりました。
そもそも、人にうつす可能性のある病気になった場合は薬で症状を誤魔化すのでは無く、しっかりと自宅等で休養をとること、つまり病欠を認めてくれる環境作りが優先されるべきだと考えています。