街ブラロケで、さまぁ~ずのおふたりが訪れたお店で足湯デトックスを紹介していましたが、ツッコミどころ満載でしたので記事にします。
足湯は気持ちいいものです。ですが、その水に水素水(とされている)を使い、しばらくするとその水が茶色いヘドロのように変色し、体内から毒素が排出されたということにするインチキビジネスです。
インチキとんでも商法をTVを使って宣伝し、それが私の好きな番組だったので、医師としてというより一人の男性として許せません。どうぞご覧ください。
足湯デトックスに水素水をトッピングとは。絶句。
世の中には誰が見ても笑っちゃう健康法があって、実践する人が真面目にトンデモ健康法をやればやるほど違った意味で楽しめるのが、私が定義するところの「トンデモ医学」。
例えばこれねw
ニセ医学に騙された❗って怒る人がいても金銭的損失も無さそうだから、許す(笑)。
しかし、先日2019年12月22日に放映された人気番組(私も時々観ます)「モヤモヤさまぁ~ず2 日本橋周辺~粋だね!老舗だらけの足汁SP~」はちょっとねえ⋯。
水素水を使った足湯デトックス、トンデモニセ医学の二乗じゃん❗と判断して良さそうです。
足湯に浸かってリラックス、全く問題ないです。その足湯の湯が水素水、まあこれも水素の性質を知っている人にとっては笑っちゃうレベルで、目くじら立てるのも大人げない。
私は水素水をつかった足湯デトックスの効果効能というか、理論説明が疑似科学でありニセ医学である点が気になって仕方がないのです。
どうみても科学実験を利用した純粋な化学反応であり、デトックス効果の証明にはなっていません。
ちなみにモヤさま2で紹介された足湯ロケで使われているフットバスは「ゴッドクリーナー」という機器だそうです。
メーカー?さんも堂々と言ってますけど、ただの水の色を変える機器ですね。
フットバスによるデトックスに関しては以前に「便秘は美容の大敵⁉毒素を出してデトックスのウソとホント」という記事を書きました。なぜ水の色が汚く変化するのか、足湯デトックスのからくりに触れていますので是非そちらもお読みください。
足湯デトックスも足裏シートでベトベトの毒素ガーも同じニセ医学です
足裏シートとか足裏樹液シートとか呼ばれるグッズがあります。足の裏に貼り付けて翌朝起きてみるとそのシートが茶色く汚れている、この汚れが毒素です❗ってやつ。
女子会などで旅行に行って、歩き周ってむくんだ足裏にシートを貼ると、あら不思議、翌日にはむくみがスッキリ取れて、足裏シートがめっちゃ汚れてる。それを見て「うわー、毒素がいっぱいデトックスできて、むくんだ足もスッキリ」なんて風景は微笑ましいですね。
ところがモヤモヤさまぁ~ず2で田中アナウンサーが試した「水素水をつかった足湯デトックス」に登場した方の説明が怪しすぎ。
足の方に体の悪いものってプラスイオンとなって溜まる。
だから水素水をつかった足湯デトックスでは
プラスイオンをマイナスイオンの水が引き出す。
との不思議なお話をされています。
電化製品等がつかっている「マイナスイオン」は通常の科学で使われる「陰イオン」とは全くの別物であることは賢明なる私のブログの読者はご存知ですよね。
この方は電気を使ってプラスイオンがマイナスイオンとどうのこうの、と解説していますから科学で使用する「陰イオン」のことをおっしゃっているはず。
まあ、医師の中にも「マイナスイオンで糖尿病が治る」的な変なことを言い出す人がゼロとは言いませんけど(苦笑)→ 「遠赤外線効果」とか「マイナスイオン」とか、医学部名誉教授が言っちゃうのはどうなの⁉
足湯デトックスの基本構造は水に浸した電極が、水分中の成分に反応して(例えば鉄とか)、あるいは電極自体が反応して水に色を付けているのです(多くはフットバス中の水になんらかの成分が含まれています)。
こんな実験があります。足湯デトックスとかフットバスと呼ばれるデトックスグッズに足も手もいれないでブクブクさせたら、なんと桶の水はしっかりと濁ったそうです。
足湯デトックスがインチキであることを証明した論文があります
フットバスデトックスとか足湯デトックスは世界中で一時期流行しました。桶に水素水を入れるというものは日本が初見じゃないかな?
実はフットバスとか足湯デトックスの効果というか、なんらかの毒素を体外に排出、つまりデトックスと言われている現象は全くのインチキであることを証明した論文があります。
「Objective Assessment of an Ionic Footbath (IonCleanse) : Testing Its Ability to Remove Potentially Toxic Elements from the Body」(J Environ Public Health. 2012; 2012: 258968.)によれば、結論として
身体から有毒成分の除去を促進することを示す証拠は見つかりませんでした
となっています。
足湯デトックスも検証すれば当然同じような結果になるはずです。
そういえば一般の方も目にすることが多いと思われる「ナショナル・ジオグラフィック」でもこのような記事がありました。
「汗をかいてデトックス」はウソだった、研究報告
ナショナル・ジオグラフィック2018.04.13(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/041200164/)
この記事ではサウナ等で排出された汗を分析したところ、残留性有機汚染物質と呼ばれるような物質は検出されないで、2リットルの汗に含まれる汚染物質はあったとしても、たったの0.1ナノグラム以下であったことを報じています。
さらにこのようなことが書かれています。
つまり、どんなに大量の汗をかいたとしても、その日体内に摂取した汚染物質の1%すら排出できないということだ。ただし、ほとんどの人間の体内にある農薬やその他の汚染物質の量自体、極めて微量であるということも覚えておいてほしい。
トンデモさんは量の概念が乏しい、との私が以前からお伝えしている説と同じですね。
先日、世の中を騒がせた「血液クレンジング」騒動、あれも静脈血がどす黒く、オゾンを含ませた血液クレンジングによって鮮明な赤色に変化する光景が、「なんか効果あったっぽい」との印象を与えたトンデモでした。
今回の水素水をつかった足湯デトックスも、最初は透明な水がドロドロの茶色っぽい水に変化した光景が、「うわあ~、毒素がこんなに出ている」的な印象を与えたものなんでしょうね。
人間の体には不要になった物質を尿や便として体外に排出する解毒作用がもともと腎臓や肝臓に備わっています。薬や食べ物も一部は人体にとっては有害物質です。毒性のものは肝臓や腎臓で代謝もされます(お酒の飲みすぎで肝機能が悪化するのはもともとそなわった解毒作用の負担が肝臓に必要以上にかかったため)。
例えばこんなシステムが人間には備わっています。有害物質を食べた → 腸の上皮細胞が有害物質を検知 → 体内に備わった有害物質をやっつける酵素が選択される → その酵素が有害物質をやっつける → やっつけられ物質は細胞外に排泄され便となって体外に押し出される⋯こんな素敵な仕組みが人間には備わっているのです。
わざわざお金と時間をかけて、もともと有りもしない有害物質を非科学的な説明のニセ医学的手法を選択してデトックスする必然性が全く私には理解できません。女性がお楽しみで足裏シートをつかったり足湯を利用するのは否定しないけどね(最近増えた女性ファンをここで失うわけにはいかないぞっ、と)。
気になるこの水素水を浸かった足湯デトックスマシーンを調べてみたら、どうやらどっかの大学の名誉教授が推薦しているっぽい。この件については休診日にでもゆっくり検証してい見ますね。さらに「モヤモヤさまぁ~ず2」の取材に協力した店舗(医療機関ではない)のサイトの凄まじさも検証の必要があるような気がしないでもないです。
2019年12月29日追記
足裏デトックス方面でこんなブログを投下しました。
お時間があれば読んでくださいね。
拙著“意識高い系”がハマる「ニセ医学」が危ない!、この中でデトックスがニセ医学であることを書いています。ご興味のある方は買っていただけるとうれしいです。
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