女性の安易な鎮痛剤使用は危険です!「痛み止め薬の過剰摂取による死亡者5倍増」と米国での報告

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米国疾病対策センター(略してCDC)の報告によると1999年と比べて2010年は鎮痛剤の過剰摂取による死亡者の数が約5倍の1万5300人に達したとのことす。

今まで医師にだけに許されていた処方箋による薬が、処方箋なしで薬局で購入できるものも出てきました。女性の場合、生理痛などで鎮痛剤、いわゆる痛み止めを常用している方も多く見受けられます。痛み止めの副作用は胃を荒らす程度に考えているととんでもないことになりかねません。

CDCから怖いレポートが上がってきました。

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このデータによると痛み止め薬(鎮痛剤)による死亡者はなんと麻薬での死亡者より多いことになります。2010年における紫色の丸印の薬による死亡者の数の増加数には驚かされます。

一般的な鎮痛剤との違い

特に死亡者が多いのは白人女性であり、45歳から64歳まで約半数を占めていました。

薬の中には米国では処方箋なしに薬局で購入できるものが、日本では医師の処方箋を必要とされるものもあり、日本は米国に比較して薬に対して煩すぎる、規制が多すぎるとの意見もあります。ネットでの薬の販売も国側のあまりにも慎重すぎる体制に強いクレームをだしている企業もあります。

OTCとスイッチOTCの違い

古くから一般的に使用され薬局で処方箋なしで購入できる薬をOTC(Over The Counterの略)と呼んでいます。大衆薬として親しまれているものが大多数です。近年では医師が処方していた薬でも処方箋なしでドラッグストアなどで購入できるようになってきました。このような薬は「スイッチOTC」と呼ばれています。スイッチとは一般薬に転換されたという意味合いで、胃薬や鎮痛剤に多く見られます。この傾向は国民の医療費の高騰に頭を悩ませられていた国側の医療費減少を狙った方針との解釈もできます。

医師が処方する薬は危険で副作用が強いか?

といわれれば今までは医師の処方箋が必要だったものでも、現在は処方箋なしで買える薬「スイッチOTC」で多くの方が副作用を引き起こした、という報告は日本ではありません。それは医療機関で長年にわたって使用されデータが蓄積されていたものに限って、販売されているからです。

このCDCのレポートに対するつっこみ

話が長くなりましたが、このCDCのレポートを詳細に読んでみると、患者さんが勝手に自己判断をして過剰摂取したとは言い切れないのです。なぜなら対象となった薬は「Prescription」と書いてある、ということは医師が処方箋を発行して患者さんが薬を薬局で購入したということす。いくら自由の国アメリカとはいえ処方薬は処方薬であり、患者さんが密売でもされていない限り気軽に薬局で購入できるものではないのです。

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医師側がもっと注意をしていれば、鎮痛剤の過剰投与による死亡はかなりの数が防げたのではないでしょうか?線グラフで上位に位置している鎮痛剤は皆さんが一般的に薬局で購入できる薬とは成分が大きくことなっています。

最近の鎮痛剤の傾向

近年、慢性の疼痛に悩ませられている方に対し、非ステロイド性の鎮痛剤 (一般的な痛み止め)では効果が充分ではないので精神神経系に影響を及ぼす成分が含まれた薬が処方薬として使われる傾向があります。痛み止め+高ぶった神経を安定させるという薬は非常に効果が高く、特に慢性の疼痛や不定愁訴的な痛みには劇的な効果を表します。

乱用すれば麻薬的な快感や禁断症状的なものも出現することは当然予想される事態です。

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このグラフは過剰投与で救急搬送された方の数です。実際に膝が痛いとか腰痛に悩ませられる高齢者が少ない傾向に注目してください。
若い方から中年にかけて救急搬送された方が非常に多いのは鎮痛効果以外の効果を求めたための様な気がしますが。

どんな薬でも過剰に服用すれば副作用が引き起こされるのは当たり前のことです。このレポートは残念ながら死亡者数だけがクローズアップされており、死因についての詳細は明記されていませんでした。

患者さんを疑って処方することになる

この様なリスキーな薬がスイッチOTCになるとは思えません。一方、痛みどめ希望で来院する患者さんの中には乱用を目的としてくる方もいるかもしれません。最近、人気歌手が「アンナカ」なんていう大昔に使用された特殊な薬の乱用でマスコミに取り上げられました。こんなマイナーな薬を乱用することによって薬本来の効果以外の効果があることを医療関係者以外が知っていたことに驚きました。

乱用者はかなり勉強好きで情報集めが上手なようです。米国でも実証されているように、処方薬でさえ通常使用量以上を患者さんは手に入れることが可能なのです。これは日本においても睡眠薬系の薬は一回に処方できる量が決められていますので、乱用傾向のある人は多数の医療機関を巡り巡って大量の薬を確保するそうです。処方する医師も薬の固有名詞を指名して処方を希望する患者さんには注意を払う必要がでてきてしまいます。

過剰摂取を防ぐ方法はあるか

患者さんを疑いながら診察するような事態は避けたいので、せめて患者さん一人一人の処方歴を全国の医師が情報を共有するシステムって確立できないのでしょうか?

以前「国民背番号制」なんて変てこな悪いイメージで法案化が潰された国民の共通番号制度ですが、「マイナンバー法案」として名前を変えて今年可決されました。個人情報を国が一括管理するというリスクに重点を置いた意見もありますが、せめて医療だけでも「マイナンバー制」的なものが取り入れられると薬の過剰処方や飲み合わせによる副作用の発現もかなり防げると考えているのは私だけではないと思います。

「生理痛処方薬、投与後3人死亡=厚労省が注意喚起」というニュースが2014年1月17日になって飛び込んできました。これは鎮痛剤では無く、月経困難症に使用されるホルモン配合剤です。「生理痛薬で死亡者!と報道されていますが、鎮痛剤ではありません」というブログを追加投稿しましたので、そちらもご覧ください。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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