低気圧で体調が悪くなるのは事実です。
以前、ブログで「低気圧や台風は痛みなどの体調不良と本当に関連があるのか?「低気圧と体調」の関係について考えてみました。」という記事を投稿しました。低気圧と体調不良の関係についての記事でしたが、お読みいただいた方には、膝の痛みや腰痛、古傷の痛みが低気圧と関連することはなんとなくご理解いただけたと思います。
今回は低気圧と喘息発作の関係につい掘り下げていきます。
本記事の内容
気圧に左右される「喘息」ですが、果たしてこの病気は台風と関連があるのでしょうか?
気管支が細くなって呼吸ができなくなるのが喘息です。
「台風の翌日は病院が混雑する」なんて言っている人もいますが、台風当日は外出しない為に、翌日受診する人が多いだけだと私は考えています⋯こんな考え方だから敵を作ってしまうのかもしれません、私。
もちろん台風の影響で怪我をしたり、低気圧の影響で関節痛や全体的に体調不良になる方もいることはいます。気候が左右すると言われている「喘息発作」について調べてみました。
実は台風翌日は喘息患者さんは減るのです
これは私の経験ではないのですが、何人かの呼吸器専門の医師に聞いた話です。それを裏付ける論文がありました。「台風通過時の喘息患者数の変動,公害健康被害補償予防協会委託業務報告書」村山貢司氏が1997年に報告したものです。
喘息発作は命に係わりますので、緊急の場合は119番へ
http://www2.astrazeneca.co.jp/より
これによりますと、1978年ー1994年の間に東京周辺を台風が通過した前後5日間に喘息の患者さんが発作を起こして、救急車で搬送された数をカウントしたものです。それによると台風が接近して通過しても救急車で搬送された患者さん数は変化が見られなかったのです。
逆に
台風通過後は患者数は減少さえしていた
のです。
つまり台風が接近する、低気圧が接近すると「喘息発作」が発生するリスクが上昇するという結果は少なくともこの報告では否定されてしまったのです。
気圧じゃなく気温の変化が喘息発作を起こす
このことをしつこく研究した人がいます。寺道由晃医師は「台風が喘息発作を誘発する」ということにかなり力を入れて研究され、人工気象室を使用して実験を行いました。こども医療センター医学誌,9:321-325.14)を参考にさせていただきました。
その結果導き出されたものが「気温の低下と気道の閉塞との関係」が一番発作を起こす可能性が指摘されました。つまり、寒暖の差が原因と考えらえるのです。
ということは季節の変わり目は寒暖の差が大きいですから、「季節の変わり目に発作がでちゃうのよね」と言っている患者さんの言葉は正しかったのです。
台風の翌日は果たして全患者数は増えるか?
私の経験です
「昨日は台風だったから翌日は洗濯物が溜まって受診できなかった」
「台風の翌日は患者さんが殺到して混むから他の日に受診するね」
「台風の翌日は買い物とか、庭の掃除でいそがしいの!(少し怒りモード)」
なんて患者さんが当院の場合は多い様です。台風の次の日はそんなに混まないのが当院の実情です。
でも「台風の翌日は空いているってブログに書いていたのに今日は待たされた!」とお怒りになる患者さんもいらっしゃるかもしれませんが、一言追加します。
「医学データは基本的に後ろ向きの調査(専門用語でhistorical study)が多いために、未来を予想する前向きの研究 (専門用語でprospective study) は非常に少ないのです」
もう一つアドバイスを⋯医師が専門用語を振り回しだしたら、たぶん患者さんをけむに巻く作戦にでたと思った方がよろしいかと。