当院はエステティックという業態を今まで決して否定する意向を示したことは一切ありませんでした。私たちが行っているものと全く違った位置づけで考えていたからです。
化粧品の安全性よりエステの危険性
・美容皮膚科⋯治すところ、治療するところ
・エステティック⋯リラックスするところ、表面を整えるところ
それでは化粧品に対しては当院はどのような位置づけで考えてきたでしょうか
・化粧品⋯口元、眼の周りを鮮やかに表現するための道具・生活に潤いと華やかさをそえるもの
・基礎化粧品⋯肌本来の若さを維持するもの、そして化粧品の効果を十分に発揮できるベースをつくりあげるもの
このように考えてきました。
今回のカネボウの基礎化粧品は私たちが考えている基礎化粧品の範疇を超えてしまったために起きた悲劇と考えられます。
では美しさを求める段階としては
基礎化粧品⇒化粧品⇒エステティック⇒美容皮膚科
エステで行われている代表的施術です
Japan Esthetique Research Foundationよりお借りしました
という流れがあると思います。エステティック業界のトラブル・クレームはどのようになっているのか少し調べてみました。
☆医療でも理美容でもないエステティックの微妙な立場
医療機関は医師免許を取得した医師や看護師免許をもった看護師が中心となって医療を行っていく機関です。床屋さんや美容室も国家試験に合格した理容師や美容師によって運営されている業種です。
そのために開業にあたって面倒な手続きが必要であることはもちろんのこと、開業後も厚生労働省、自治体の保険所などへの報告義務や監督・指導が行われている業界です。
国家として資格をあたえた業種であるために、行政側も監視する必要がある、ある意味かなり制限を掛けられた仕事なのです。
理美容ニュースより(http://ribiyo-news.sakura.ne.jp/?p=6568)理美容界はエステを問題視しているようです
一方、エステは業務は医療行為であってはならないことはもちろんのこと、一部の施術が理美容師とオーバーラップしていますが、その施術がエステシャンの技能に有意性が明らかになっておらず、また「資格」が国が認定したものでないために、過大な広告や無理強いをする営業活動、さらには医療機関でした許されていない施術の横行などのトラブルがクローズアップされてしまっています。それがトラブル・消費者クレームの増加につながっているようです。
細胞の若返り??
例として本年、景品表示法違反で問題になったエステのトラブルをあげてみます。
問題1
某大手エステサロンがチラシやネット上で
「細胞レベルでの若返り」
とやってしまいました。気持ちは分からないではないのですが、私たち医療機関でさえ「細胞を若返らす」ことは非常に難しい技術なのです。また、それには様々な医療機器だけではなく、十分な知識がなく使用すると当然トラブルが起こってしまう薬剤・薬品も使用します。
このエステは細胞レベルでの若返りを証明する効果測定を行っていなかったために、改善知れが出されました。
問題2
ある某大手エステサロンチェーンの場合は、料金表示に問題がありました。「期間限定のキャンペーン特別体験価格」が適用期間が終了しても同じ金額で提供されていた点が指摘され、違反として指導されました。
恥ずかしながら当院でも時々キャンペーンを行いますが、期間を過ぎても強引にキャンペーン価格での治療を希望する患者さんに押し切られることがありますが、それとは違った状況の様です。安い価格でお客さんを引き込む、お客さんが焦って体験するように仕向けるキャンペーンが常態化していること、つまり「特別に今回だけ安い訳じゃないじゃん」ということが問題だったのです。
問題3
「小顔矯正」「即効性と持続性に優れた施術」と広告をしたエステサロンが裏付けとなる根拠を提出できなかったために,措置命令を消費者庁が下しました。このようなデータを提出して治療法が優れていることを証明するのは私たち医療機関でもかなり難しい作業となります。
とくに使用前・使用後の症例の比較は画像修正機能が発達した現在ではプロの私たちでも見分けることが、難しくなっています。効果を証明するには写真や治療を受けた人の感想だけでなく、数字に裏付けられた科学的データが必要になってくるのです。
エステの今後
ここからはあくまで私見ですが、エステティックで気分転換して、肌のバランスが整って、さらに自分ではケアできない場所をケアしてもらえるということは良いことだと思います。
特に毎日ハードな生活を送っている女性にとってはリフレッシュ効果は抜群だと思います。しかし、あくまで気分的に、見た目的に効果があるのと割り切って考えていただきたいのです。
美容皮膚科に求めるようなレベルの治療をエステに求めること自体が間違いです。それは今回のカネボウの化粧品による美白効果を求めたために起きてしまった「白斑」とおなじ間違いが起きる可能性があります。
エステ業界の方もお客さんからより効果の高いものを求められ、それに答えるためには自分たちの知識レベル・技術レベルそしてさらに国によって許されているレベルを超えなければ⋯つまり違法でありリスクの高いことを行うことになってしまいます。
消費者側もエステサロン側もその点に注意をしながら、エステ業界が健全に運営されていくとことを期待しています。