拒食症、過食症という言葉が一般的になってかなりの期間が経過しました。特に青少年に起きる精神疾患として死亡率が高いことが問題になっています。「痩せたいから食事を極端に減らしているんじゃない」「食べ過ぎたと思っているから吐いているんじゃない」なんて軽く考えてはいけません。
拒食症だけではない摂食障害
イギリスの学会誌BMJに摂食障害に新しい診断例が出来たことにより、この病気が明らかに増加していることが論文となっていましたので紹介します。
The incidence of eating disorders in the UK in 2000–2009: findings from the General Practice Research Database (BMJ Open 2013;3:e002646) というタイトルの論文です。
新しい分類の特定不能の摂食障害
摂食障害の分類は
- anorexia nervosa(神経性食欲不振症)
- bulimia nervosa (神経性過食症)
- eating disorder not otherwise specified(特定不能の摂食障害)
に分類されるようになりました。
eating disorder not otherwise specified略してEDNOSは今までの診断基準を満たさない、でも明らかに異常である状態につけられる病名です。
- 月経は順調であるが拒食症である
- 体重は減少傾向にあるが正常体重内に入っている
- むちゃ食いがみられるが週に2回未満
- 食べ物を食べた後に嘔吐をするが体重は正常範囲
この様な症状を示しますが、厳格に定められた神経性食欲不振症や神経性過食症の診断基準は満たさないものです。
実は先進国で問題になっている摂食障害に対して罹患率を詳しく調べた研究は意外と少ないのです。今回、Nadia Micali1氏たちは2000年から2009年までにかかりつけ医に上記三つの摂食障害と診断された患者さんの詳しい調査を行いました。
データベースはイギリス国民の5%をカバーする the General Practice Research Databaseをもとにしています。 結果は
- この期間に摂食障害と診断された人は9072人
内訳はEDNOSが3505人、神経性食欲不振症が2134人、神経性過食症が3433人でした - 2000年には10歳から49歳の摂食障害は人口10万に当たりの摂食障害32.3人
- 2009年には10歳から49歳の摂食障害は人口10万当たりの摂食障害37.2人に増加
- 15歳から19歳の女子は人口1000人に対して2人(10万人当たりとすると200人)
となっていました。スタイルとかを気にする年代に女子に目立って摂食障害が多いのがきになります。実は今回の調査によって摂食障害が増加している原因としてEDNOSが加えられたことによる可能性が示唆されています。
私たちの身近でも別にガリガリに痩せているわけでもなく、かといって非常に肥満であることなしに、「食べては吐く」を繰り返している人が一人や二人いるのではないでしょうか?
痩せていることがいいことか?
ファッション誌に登場するモデルは通常の生活で出会うことが非常にまれであるようなスリムな体型の人が中心です。そのような素敵な女性に憧れる思春期の女子の心理も十分理解できます。
健康的に素敵なスタイルを手に入れるためには、規則正しい生活、栄養がある食事を適切な量食べる、そして運動が必要となります。しかし、精神的に不安定な時期に悩み事などが重なるとついつい不健康なライフスタイルになってきてしまいます。
そのストレスを抱えながら希望するスタイルを維持することは難しいことになってしまいます。
摂食障害は明らかな精神疾患です。また思春期においてはうつ病に次いで多く発症する病気です。年頃のお子様を持つ方は食生活の異常に気付いたら、親として子供に諭すより専門家に相談する勇気が必要ではないでしょうか?
摂食障害は「お年頃だから」なんて安易に考えているのは危険です。死亡率が高い病気であると認識してください。中枢性摂食異常症と診断された場合は難病に指定されているくらなのですよ。詳しい診断基準が難病情報センターのHPに掲載されています。