先日、ブログで「睡眠不足は肥満のもと」というものを書いていたら、今日のYahoo!newsに「睡眠不足で太る脳のメカニズムを解明、米研究」という記事がAFP発信で載っていたので、あせって元になった論文を調べました。
というのも先日のブログは「起きている時間が長いからお腹が空くから太るんじゃないの」なんてチョッピリ辛口の意見を書いてしまったからです。今回の論文の結果が私の意見と全く違うものであったら大恥をかいてしまいます。
脳の活動を調べた研究から見えてきた睡眠不足で太る脳のメカニズム
睡眠不足で太る脳のメカニズムを解明したというニュースで紹介されている論文のタイトルはThe impact of sleep deprivation on food desire in the human brain(Nature Communications 4, Article number: 2259)となっています。「脳が食品に対して欲望を感じるのは睡眠不足が影響する」とでも訳しましょうか。米カリフォルニア大学のStephanie M. Greer氏が主筆になっています。
NATURE COMMUNICATIONSのHP今回の論文はデータの複雑な解析や統計学的な知識を必要とする疫学的な研究ではなく、いくつかの条件のもとで実験を行い、その結果を発表したという、わりと簡単なものでした。
実験方法
- 対象は23人
- 各人に睡眠不足の日と十分に睡眠をとった日を設定する
- 翌日に80種類の食べ物の写真を見せ、どれをどれくらい食べたいか?を選択させた
- 食べ物の選択をさせている時の脳の活動をMRIを使用して観察した
簡単にまとめると睡眠不足だと食欲はどのようになるか?を脳の活動によって観察する実験です。睡眠不足つまり起きている時間が長いとその時間に間食をしてるんじゃないの、という今までの睡眠時間と肥満の関係を調べた研究論文に対する突っ込みは出来ない実験です。
このようにしてMRIで脳の活性化を調べたようです(上記論文より)
この研究によれば以下の結果に。
- 睡眠不足の場合、大脳皮質の食欲と満腹感を感じる領域の活動が低下した
- 睡眠不足の場合、欲望を感じる脳の部分の活動が活発になった
つまり、睡眠不足だと良く言われるところの満腹中枢の反応が鈍くなって、ついつい食べ過ぎてしまう原因となることが予想されたのです。
今までの論文と違った切り口です
今までの論文は、睡眠不足の人は肥満傾向にある、または睡眠不足と肥満は関連性がある、という結論を導いたものが多かったのです。そうすると「長い時間おきているんだから、お腹が空いておやつとか食べるから当然太るじゃん」という解釈もできてしまいます。
お腹の空き加減は自己申告するしか方法は無いようです(上記論文より)
しかし、今回の実験は睡眠不足になった翌日に食欲が増し、さらに満腹中枢の抑えが効かなくなる可能性を示唆しています。でも、人によっては寝不足の翌朝って食欲ないようことが多い気もするのですが、皆さんの場合はいかがでしょうか?
コメントが余分です
共同執筆者のMatthew P. Walker氏のAFPの取材に対する発言が余分です。執筆者の最後に名前が書いてありますが、医学論文は偉い先生の名前を最後に書くことが多いので今回の研究では一番の権威者と思われます。
先生は「睡眠不足によって正常な判断ができなくなり、欲求に対する脳が活発化し高カロリー食を欲してしまう」とのコメントをしていますが、それは少し勇み足ではないでしょうか?
だって、実験に参加した人がもともと高カロリー食を好む人か好まない人かを選別していないのではないでしょうか、今回の実験。常に低カロリー食を意識している人は睡眠不足でも低カロリー食を選択する可能性もでてきてしまいます。
せっかく睡眠不足と肥満の関係についての解明ができ、肥満を防ぐ手段が検討できるかもしれない非常に興味深い研究なんですから、追加の実験が違った方法で行われるといいですね。
追記:昨日論文として掲載されたばかりのものを大慌てで読み込んでブログにしました。ひょっとしたら間違った解釈をしているかもしれませんので、ご指摘いただけると助かります。