膀胱炎で悩んでいる人も悩んでいない人も名前だけは知っている小林製薬のボーコレンという膀胱炎治療薬は認知度抜群。ボーコレンって効くの?という疑問について泌尿器科医が検証しました。
本記事の内容
またまた小林製薬の膀胱炎治療薬「ボーコレン」の効果を検証してみます
膀胱炎と言っても、専門的には複数の膀胱炎の分類があります。
多くの人が膀胱炎と考えているのが、専門的には急性単純性膀胱炎と呼ばれる細菌が原因となったものです。膀胱炎の症状は
- 排尿痛
- 頻尿
- 尿混濁
この3つが主であり、さらに血尿、残尿感、下腹部不快感などが挙げられます。
テレビ広告で「ボーコレン」という治療薬を見かけたことはありませんか?このボーコレンはあの小林製薬が販売している膀胱などの炎症、排尿痛、残尿感、頻尿に効く薬としてプロモーションされています。
膀胱炎の特徴的な症状である排尿痛、残尿感に効果があるように思える記載ですよね。
そこでボーコレンで膀胱炎は治るのか?という素朴な疑問を検討してまいります。林製薬にとっては余計なお世話でしょうけどね。
ところでボーコレンの効き目が気になる皆さんは「菌を押し流し、痛みを抑える」という薬効というか効果をきけば、なんとなくなるほどね〜って思えてしまうのではないでしょうか?はい!ココに小林製薬が得意とする広告手法が見え隠れします。
まあ、今までも小林製薬のくすりに関してはいろいろと疑問を投げかけてきました。
例えば
動物実験の結果だけから、認知症に薬が効くような表現になっています。
また、これもひどい。
誰だって出来てしまったシミが消すことが可能な商品と受け止めますよね。
この小林製薬の広告には怒ったがん患者さんは多いのです。
どうみても、がん治療に役立つようなイメージ戦略。
小林製薬の広告がついつい目に付いてしまう私でした苦笑。
膀胱炎の原因は細菌感染。それって漢方薬で治るの?
膀胱炎ってなぜか医療機関が休みの日になってしまって困った経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
時々、なぜか家にあった抗菌剤を飲んで休日明けに来院される方もいます。
抗菌剤を飲んでしまうと、膀胱炎の原因菌も特定できないし、処方した薬が本当にその原因菌を退治できるかを判定する薬剤感受性検査もできなくなってしまいます。
ついつい市販薬で膀胱炎を治そう、膀胱炎の症状をやわげようとドラッグストアに駆け込んだときに進められるのが、小林製薬の「ボーコレン」です。
ボーコレンの実態は漢方薬の五淋散(ごりんさん)です。
漢方薬で細菌感染が原因の膀胱炎が治るの???
小林製薬のサイト(https://www.kobayashi.co.jp/seihin/bkr/)をたどって五淋散に関する詳しい情報を見つけました。
五淋散料エキスの服用5日後に尿中の菌数を測定しました
この説明で、尿中の菌が74パーセント減少、と誇示しているのが下のグラフなのですが⋯
このグラフがどーしても理解できません❗
だって正常な尿って無菌状態じゃないといけないんだよ❗
ボーコレン、つまり五淋散を5日間服用しても、菌は残存しているじゃん、ってことになるんです。
膀胱炎が細菌によって起こることは
尿路感染症の多くが,直腸常在菌による上行性尿路感染である.
感染症治療ガイドライン2015
と日本感染症学会による「感染症治療ガイドライン2015」にもしっかり記載されています。
私はこのグラフが嘘をついている、とは申しません。間違いなく尿中の菌の数は減少しているのですから。でも、しつこいけど、正常な尿は無菌状態なんだよねえ⋯。
正常の尿が無菌状態であることは「尿路感染症のマネジメント」(医学書院 2009年1月号)などによって泌尿器科医や感染症を専門とする医師の間では定説となっています。
クリニックが休診だ、ボーコレンを飲んで症状を誤魔化しました、は大歓迎
小林製薬の研究結果である「膀胱炎を改善する」(最初に掲示したグラフね)は、泌尿器科医としてはありがたいボーコレンの薬効です。
先ほど述べたように、本当はNGであるなぜか家にあった抗菌剤を飲んでから泌尿器科を受診すると、原因菌も判定できませんし、薬剤感受性も判定できません。
となると、膀胱炎の原因菌を壊滅状態にはしない、要するに細菌を残してしまうボーコレンを服用して症状を誤魔化しつつ休診明けに泌尿器科を受診していただけるという、患者さんにとっても私にとってもありがたいメリットがあります。
ボーコレンを服用して、膀胱炎の原因菌を殺すことなく症状だけを誤魔化した場合、怖い怖いリスクがあります。ご注意くださいね。
ボーコレンで膀胱炎の症状を誤魔化した場合の危険性
膀胱炎の症状で発熱はあまり見かけません。でも膀胱炎を放置しておくと、腎盂腎炎という高熱を主訴とする厄介な病気になってしまうことがあります。
さらには寒気や腰痛も同時に症状として現れることも多く、全身衰弱状態(まるでインフルエンザの症状)になってしまうのです。
私たち泌尿器科医は通常は腎盂腎炎であっても外来処方ですますことも多いですが、内科の先生だと慎重に大事をとって入院という選択肢を提示することもあります。
ボーコレンの研究結果によると、なんと膀胱炎を改善するために5日間から15日間もボーコレン(正確には五淋散)を服用させています。
これでは腎盂腎炎を併発してしまう可能性が高くなっちゃうのではないでしょうか?
日本薬学会第138会で2つのグラフの研究発表が行われたようですが、一次ソースを見つけることが現時点ではできません。詳細がわかったら続報予定です。
しかし、これ効果が無かった人にも延々と15日間服用させたのかねえ、かなり気になる研究です。
休診日に膀胱炎になった場合の対処方法
年末年始はどうしても一般のクリニックは休診になります。当院も年末年始は私の意に反して休診にしざるえません(ブラックって言われちゃうからね)。そんな時に限って
「先生〜、膀胱炎になったのに先生休んじゃうんだもん❗」
とお正月明けはオバさま方にお叱りを受けます。
先生に休み中に膀胱炎になった時用に抗生剤ちょうだいって言ったのに〜怒
でもねえ、抗菌剤を飲んじゃうと原因菌がわからないくなっちゃうし、本当に治ったかの判定もできなくなるって説明したよね
こんな返答しても、オバさま等は納得しないことが以前は多かったんです。
今はこんな指示を長期の休み前に、膀胱炎になりやすいオバさま等にお伝えしています。
普段から、おしっこは我慢しないで、膀胱を洗い流すイメージで年末年始を過ごしてね
万が一、膀胱炎っぽくなったら市販の膀胱炎治療薬で症状を誤魔化してよ
高熱が出たり、全身倦怠感が強かったら救急安心センターの#7119に電話して相談してみて
これは大きな声では言えないけど、たぶん家の中に飲み残しの抗菌剤があるんじゃないの?それ飲んじゃって、治ったと思っても休み明けに受診してね
もしも可能だったら、零売(れいばい)をやっている薬局を探してみて
零売についてはこちらをご覧ください。
などなど開業23年間の血と汗と涙によって得た知識で年末年始の膀胱炎に対応しております。
2020年1月14日追記
泌尿器関連で「ユリナール」という市販薬がありましたので効果等に関して検証しました。
なんとこれも小林製薬さんの商品ではありませんか、驚きました(棒)。