白斑治療⋯早期完治を目指して 皮膚科で本当に治すことは可能なんでしょうか?

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カネボウの化粧品によって引き起こされた今回の「まだら美白 白斑問題」。

医師としてカネボウに特別な悪意を持っている訳ではありません。ただ一刻も早く患者さんの回復を祈るとともに私たち医師だったらこんなことができますよ、こんなお手伝いができますよ、という意思表明をしたいと思います。

カネボウに協力をしているはずの皮膚科学会のコメントをみて不安になります

白斑は通常かなり手ごわい相手なのですが、カネボウに協力をしているはずの皮膚科学会のコメントなどを見るとなんとはなしに不安になってきました。

カネボウも社員が被害者のお宅を訪問して誠意を示していることは十分理解できますが、カネボウのコメントにも疑問がわきます。

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これだと保険診療なのか自由診療でもいいのかはっきりしません。

カネボウサイドは治療に関する費用や通院にかかった費用は負担することを表明しています。しかし、交通事故の場合は加害者がはっきりしていますので通常の健康保険の使用はできないで、全額自己負担つまり加害者側が支払うことに成っています。

今回の場合は保険診療で行うのか、この場合自己負担分といわれる通常の三割を患者さんが支払うのですが、それをカネボウが負担するように取れる見解を示しています。でも、本来ならば白斑の原因が明らかにカネボウ化粧品にあるのであれば、残りの健保組合や国民健康保険が負担する7割もカネボウが負担しなければならないのではないでしょうか?

厚生労働省が認めたものだから

「医薬部外品有効成分ロドデノール 4- (4-ヒドロキシフェニル) -2-ブタノール」はカネボウが開発して、厚生労働省に医薬部外品として使用が認められた経緯があります。

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これらはラインナップの一部です

つまり、使用を許した国側にも責任の一端があるのではないか?という考え方も生じてきます。そのあたりの責任のなすりあいが起こってくると、被害にあった患者さんの立場が置いてけぼり状態になってくることが心配になってきます。

指定された医療機関で白斑は完治できるのでしょうか?

患者さんにとってはこれが一番問題になる点ではないでしょうか?一般に病気の一つと認識されている「尋常性白斑」でさえ完治させる方法は確立されていないのが現状です。

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皮膚科学会のHPではこのようになっていますが、多くの症例があるのならなぜ今までこの化粧品のリスクを警告していなかったのか謎です。

しかし、私たち美容を専門としているクリニックではまだらに生じた白斑は尋常性白斑以外に治療経験があります。

白斑が生じる原因としては

  • シミを治すレーザーを強くあてすぎてメラニン色素が無くなった。
  • 処方薬であるハイドロキノンを使用して一部まだらに白斑が生じてしまった。

まず、レーザーで色を抜き過ぎるということは通常ではありえないのですが、未熟な医師の治療では起こりうる症状です。他院で上記のような症状が出現した場合、修正治療を得意としている当院に相談で来られる方も多いのです。

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これはカネボウのHPに有ったのですが、メラノサイトが無くなっている症例があったら回復はかなり難しいです

この場合、メラニンだけが無くなっているのであれば治療はそれほど難しくないのですが、あまりにも強くレーザーを照射していると、メラニンを作り出すメラノサイトという細胞まで消失していると、皮膚の一部を白斑に植え付けるような治療をしないと完治できないことが起きてしまいます。患者さんにとっては費用、通院時間・期間に対してかなりの負担がかかってしまいます。

ハイドロキノンでまだらに白斑が生じる場合はそれほど多くはありません。美容の治療をする場合は、複数回患者さんに通院してもらいますので、そのたびに状態を把握することができますので、白斑症状が出現する前に注意を促すことが可能になってくるのです。

万が一白斑が出現した場合は、特殊なレーザーを使用して皮膚表面に刺激を与えて色素沈着を故意に生じさせることで白斑の完治を目指すことが可能になっています。

しかし、上記二点の白斑に対する治療方法は残念ながら健康保険の対象外で自己負担100パーセントの自由診療となってしまいます。

今回の治療にあたっての当院の方針

当院はカネボウが指定している大学病院ではありませんので、白斑治療をしたあとに「あそこは指定した医療機関ではないので医療費は負担しません」といわれる可能性が否定できません。

そのために今回のカネボウの化粧品によって「まだら美白 白斑」症状が出た方に対しては「無料で治療する」と宣言しています。

売名行為ではありません。なぜ、無料で治療するのか?その理由ですが単純です。

美容皮膚科で常用されるハイドロキノンと作用機序が似通っているロドデノールですので、もしハイドロキノン以上の効果を発揮するのであればそれはそれでカネボウの大発見となると思っています。副作用の重大さで一時期使用されなくなった薬が他の治療に有効であるとう事例は珍しくありません。例えばサリドマイドは悲惨な副作用をもたらしましたが、多発性骨髄腫の健康保険適応の治療薬としてサリドマイドの製造販売は現在承認されています。

使用上の注意を医師の監督のもとに行えば画期的な美白治療となる可能性を秘めています。また、一般の皮膚科の医師は保険治療外の方法はあまり慣れていないことが予想されます。ロドデノールがどの様な経過によって今回の被害をもたらしたかを事細かに研究したいと考えています。

私たち美容皮膚科では保険適用になっていない治療法や治療機器を使い慣れていますが治療費も高額になる可能性があり、費用の事を考えると当院への受診を控えてしまう方がでることを懸念しています。後でひょっとしてカネボウが保険外の治療費を負担してくれるかもしれませんが、そんなこと確認している時間さえ無駄だと考えています。費用の事を気にする前にまず治療とその発生機序をしることが重要なのです。ですから、無料で治療することにしました。

今後被害者の拡大が予想されますし、日本の化粧品は海外でも人気ですので、そのような事態になるまえに一刻も早く治療法、それも早期に完治を目指せるもの確立したいのです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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