嬉しい報告がありました。
男性型脱毛症の治療薬は前立腺がんの予防になるが、悪性度の高い前立腺がに対してはリスクが高まるかも知れないと、ブログに宿題として書きましたが、その答えが出ました。
Robinson先生ありがとう
答えは5α還元酵素阻害剤による悪性度の高い前立腺がんの有意なリスクは認められませんでした。
これで安心して男性型脱毛症AGAの治療が積極的にこの薬を使用して行うことができますね。朗報ではありあませんか、世の中オッサン仲間よ!
この答えを与えてくれた論文は「Use of 5α-reductase inhibitors for lower urinary tract symptoms and risk of prostate cancer in Swedish men: nationwide, population based case-control study」というタイトルでBMJに投稿されていました(BMJ 2013; 346)。イギリス医師会雑誌 (British Medical Journal) を略してBMJと呼びますが、医学雑誌のクオリティを表す指標であるインパクトファクタは17.215 (2012年) とかなり権威のあるものですので、内容もかなり厳しい精査を行われており正しい情報元の一つと考えていいと思います。
Robibson先生はスウェーデンの研究者ですが、今までの研究では5α還元酵素阻害剤は前立腺がんの発症リスクを抑えることは示されていましたが、前立腺がんの悪性度をみるGleasonスコアが8以上のものは、逆にリスクを高めてしまうのではないかとの、疑問が呈されていました。
今回の論文によれば単純にいうと「悪性度の高い前立腺癌に対し5α還元酵素阻害剤(プロペシア等)の投与は有意なリスクを認めなかった」という結論に達しています。
今回の論文の内容
2007~2009年に前立腺癌と診断された26735人が対象となりました。その中でGleasonスコアが8~10の悪性度の高い前立腺癌と診断された人のうち412人が事前に5α還元酵素阻害剤を使用していました。
解析の結果、以下のことがわかりました。
- 前立腺がん発症リスクは5α還元酵素阻害剤の投与が長くなるほど低くなっていた
- 三年を超えて5α還元酵素阻害剤を服用していると目立って発症リスクが低くなった
- Gleasonスコアが8以上の場合は5α還元酵素阻害剤を服用期間が長くてもリスクの低下は認められなかった
- Gleasonスコアが8以上の場合はリスクが上昇することはなかった
つまり、悪性度の高い前立腺がんの発症を抑える働きは残念ながら認められませんでしたが、悪性度の高い前立腺がんになりやすいとは言えないという結果だったのです。
注意すること
プロペシア等の5α還元酵素阻害剤は前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAの値に影響を及ぼすことが知られています。影響はPSAを低くしてしまうために、前立腺癌が発症した場合血液検査上は低く表れてしまいますので発見が遅れてしまう心配がありました。
さらに、今までの論文ではひょっとして悪性度の高いものを引き起こす可能性があるのじゃないかとの疑問が提示されていたのです。今回の論文によればそのような傾向は認めませんでした。
しかし、男性型脱毛症の治療をする場合は将来のリスクを回避する為に、PSAの検査は必須事項と考えていただきたいと思います。