ミトコンドリアという生き物が生命活動をするための、エネルギーを作り出す器官があります。ミトコンドリアにつてはブログにかいてありますが、エネルギー産生に必須の脂肪酸活性化物質がカルニチンなのです。
カルニチンは筋肉に多く存在しており、つまりエネルギーを大量に消費する場所に豊富に存在しているともいえます。カルニチンにもいくつか種類がありますが、今回は医学的データが豊富なL-カルニチンについて考えていきます。特に断りが無い限り文章中ではカルニチン=L-カルニチンと考えて下さい。
たしかにカルニチンはダイエットに効果はありそう⋯
カルニチン自体はリシンとメチオニンという必須アミノ酸から肝臓において合成されています。脂質をエネルギーに変える時に必要な物質ですので、当然ダイエットに効果があると思うのは自然の流れだと思います。
カルニチンをいっぱい摂取すれば、脂肪がどんどんエネルギーに変換され結果的に脂肪が減ってダイエット効果がでる。しかし、このあたりは医学的には理論的には有りですが、効果としては証明されていません。
カルニチンの不思議な扱い
カルニチンはかなり昔は医薬品としての取り扱いになっていました。いわゆる薬事法の管轄の薬です。
しかし、なぜか2002年から扱いが食品になってしまったのです。そこでサプリ業界がカルニチンに目をつけて「カルニチンダイエット」というものがサプリとして販売されるようになった歴史があります。
それをじっと見つめている製薬業界ではありません。今度は再度カルニチンを薬品として申請して認可されました。サプリに比べると余計な成分が入っていませんし、安全性も心配はないと考えていいでしょう。
食品という分野に組み込まれた流れを考えると薬でなくて、サプリとして使用しても重篤な問題は起こらないと考えています。
認知症に効果が期待できます
カルニチン欠乏症という病気があります。慢性的な疲労と倦怠感を主訴とする全身性の病気です。この場合脳へのカルニチンの取り込みに異常を認めることが多いのです。
認知症の一つとしてのアルツハイマー病の場合も慢性的にカルニチンが欠乏状態になっていることが知られるようになってきました。老化によってカルニチンの体内量に変化が起きることもわかってきています。なぜか男性では老化によって血液中のカルニチンは減少するのですが、女性は増加するという真逆のことが起きています。
その理由として女性のホルモンであるエストロゲンとの関係があることが示唆されています。血液中のカルニチンの量はあまりみなさんを納得させることにはなりませんが、組織中のカルニチン量は加齢によって明らかに減少することが、実験動物を調べることによって判明しています。
血液中のカルニチンが増えても組織内のカルニチンが増えない限り、期待する効果を得ることは難しいのです。
認知症やアルツハイマーへの応用
米国ではカルニチンのアルツハイマー病に対する研究が数十年前から行われています。結果としてはアセチルカルニチンがアルツハイマー病の進行を遅らせることが、二重盲検の臨床試験で判明しています。
アルツハイマー以外の認知症に対しても有効性があると示唆されたデータが出てきています。さらにラットによる実験ではありますが、アセチルカルニチンは肥満・高脂血症を改善することが明らかになっていますので、脳血管障害による認知症の進行を抑える働きも期待できます。
頭がよくなるか?
これはあくまで動物実験であり、頭がいいか、悪いかと100%反映するものではありませんが、迷路学習テストというものを使用して記憶力・学習能力を判定する方法があります。この結果カルニチンンを投与したラットは明らか記憶・学習能力が向上していたのです。
このようにカルニチンは疲労回復・ダイエットの効果より脳の活性化に期待できる物質と考えられます。現在サプリで多数販売されているようですから、今回は敢えて医薬品としてのカルニチン製剤の固有名詞は記述しませんでした。