なんか変だぞ❗子宮頸がん予防ワクチンQ&Aの某医師のコメント⋯これって間違っているよね?

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副反応問題が騒がれた子宮頸がん予防ワクチン。まず子宮頸がん予防ワクチンというネーミングが良くないです。本来はヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus 略してHPV) を予防するワクチンなのでHPVワクチン(HPVV)とのネーミングであれば今の混乱状況も違っていたかもしれません。

副反応に対して冷たい対応の行政にもかなり問題があることは否定できません。私の子宮頸がんワクチン(予防を省いて多く使われています)に対する知識を整理するつもりでネット上をさまよってEvernoteに記録する作業中、不思議な記事を目にしました。

子宮頸がんワクチンに対する違和感がある記事が載っていました

なんと子宮頸がん予防ワクチンはおやめになったほうがいいとの記事です。副反応を中心とした意見なのかと思って読んでみたら意外や意外、ヘンテコな医学・疫学の話が⋯。

子宮頸がん予防ワクチンはおやめになったほうがいい

https://www.daily.co.jp/opinion-d/doctorqa/2017/04/14/0010090296.shtml

デイリースポーツの記事(ある層にはハイクオリティペーパーです)が、私の持っている(整理中ですけど)知識とかけ離れたことが書かれています。どこが私の知識(町医者レベルの知識)とどこがどう違ってヘンなのか比較してみます。
なお、今回副反応の件は被害者が若い女性であり、デリケートな問題となっていますので触れません。

子宮頸がんワクチン否定派の医師の記述の正誤表⁉

前掲の記事では医師の方はこのように述べています。

実際には高リスクHPVのうち、日本では52型と58型のHPVが高危険型であって、18型は自然治癒することも多く、小学生にまでサーバリックスの集団接種を勧奨する意義はありません。

たった3行の記事で少なくとの2ヶ所のまちがいがあります。HPVの18型が自然治癒するって話はどっから引っ張ってきたのでしょうか?

子宮頸がんは扁平上皮がんと腺がんに分類され、自然治癒したのは扁平上皮がんのみです❗

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がん研有明病院サイト

間違いなく元ネタはがん研のものだと思われますが、一部分だけでヘンテコな話をしてはダメ。前後の文章を端折っては正しい情報は伝えわりませんぜ。18型感染による子宮頸がん全部に対しても自然治癒するかのような表現になっているのは、明らかに間違いあるいは事実誤認、あるいは一定方向の結論への誘導です。

この医師は子宮頸がん予防ワクチン接種を「集団接種」と言っています。これも明らかな間違いで、決して枝葉末節、重箱の隅を的な話ではありません、医師としての常識です。

HPVワクチン接種は定期接種であり、集団接種ではありません

集団接種は赤ちゃんのBCGのように決められた日時場所で行われるものであって、HPVワクチン接種を集団接種として取り扱っている自治体ってあるのでしょうか?

さらにこの記事ではこのようにおっしゃっています。

新しい研究でガーダシルは子宮頸がんの発生リスクを逆に45%増加させるという報告もあります。

えーっと、これ非常に申し上げにくいのですが、ひょっとしてこれからの引用ではないでしょうか?

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http://www.thinker-japan.com/hpv_vaccine.htmlより

このサイトを運営している団体は強硬な反ワクチン団体です。このサイトは

子宮頸がんワクチンとして知られる「ガーダシル」によって子宮頸がんの発生リスクが44.6%させることが書かれている一般書籍からの引用です

子宮頸がん予防ワクチンはおやめになったほうがいいと語る医師はこのサイトを参考にして、44.6パーセント増加を四捨五入して45パーセント増加させるという報告がある、と述べている可能性が高いです⋯しかも、全然新しい研究じゃないし(笑)。

もしもこの数字を裏付ける医学論文があったとします。あったらあったで、また疑問が出てくるのです。子宮頸がん予防ワクチンは2006年に米国で承認されています。HPVに感染したとしても、それが子宮頸がんになるには長い時間が必要なんですが

たった数年のうちにHPVワクチンが原因となった子宮頸がんが増加していることが確認できるのでしょうか?

さらにどのような根拠があるのか、このようなことも述べています。

日本人について言えば「HPV6、11、16、18型」による子宮頸がん予防ワクチンも効果は怪しいものです。

ワクチンの効果の問題ではなく、日本では世界とは違った問題、副反応の件で接種を積極的に行政は推進していないのです。日本産科婦人科学会は子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種の勧奨再開を求める声明を出しているにも関わらず、HPVワクチンの効果を否定する根拠はどこにあって、この方は何を怪しんでいるんでしょうね?

以上のように非常に短い記事であるのに、婦人科素人の私でも知識の整理中にヘンテコな記述と考えた箇所が複数ありました。婦人科専門の医師から見たら、相手にするのもバカバカしいとのご意見もありますが、さらなる事実誤認をご指摘いただけると幸いに存じます。

素朴な疑問、ヒトパピローマウイルスと子宮頸がんの関係

厚生労働省の正式な見解として反ワクチン派が鬼の首を取ったように厚生省も子宮頸がんワクチンが効果がないといっている、というのはこれです。

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子宮頸がん予防ワクチンは新しいワクチンのために、子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ証明されていません

これをわかりやすく説明すると

HPVワクチンはヒトパピローマウイルス感染を予防する → ヒトパピローマウイルス感染が子宮頸がんを引き起こす → ヒトパピローマウイルス感染を予防すれば子宮頸がんにならない

これが予防接種をする理由。子宮頸がんワクチン自体が子宮頸がんを予防しているんじゃないことがわかりますよね?だから「子宮頸がんそのものを予防する効果は⋯」となっていると。

HPVに感染しても子宮頸がんになるには長い時間がかかります。そのために「子宮頸がん予防ワクチンは新しい⋯」となっているのです(なんで私が解説しなきゃいけないの、厚労省さんもっとわかりやすい冊子作ってよ)。

専門家じゃないくせに何言ってんだよ的なご批判に対して

私は地元に密着した、しがない町医者です。しかし、超専門的な医療を行なっている医師と違って、患者さんとの距離感が近いために、メディアが取り上げたその時その時の医学系の話題への知識は欠かせません。私も自分なりに専門外の医学知識を得るための努力をしています。

当院では子宮頸がん予防ワクチン接種は行なっていませんが、接種に対する質問を受けることも多いのです。

だからこそ正しい知識を学ばなければなりません。私の知る婦人科領域の情報は専門家から見ればごくごく一部のはずですが、どっぷり婦人科に使っているワケではないのでニュートラルに知見を整理していました。

そんな時に飛び込んで来たのが、前掲の記事です。こんなヘンテコな意見がまかり通ることは、地域住民の不利益にもなると考えこのようなブログを書いたのです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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