プロペシアでダメなら、アボルブを足しちゃえ!という直球勝負の対AGA症例報告がありました

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フィナステリドという一般名、製品名は日本ではプロペシアが男性のハゲ・薄毛対策に画期的な方法として登場して既に7年が経過しました。非常に効果を上げていて今では男性型脱毛症治療のゴールドスタンダードとなっています。

ハゲの特効薬で効果がなかったら⋯

でも、薬というのは100人に投与して100人に効果があるわけではありません。残念ながらこの特効薬的なプロペシアでは効果がでなくて、がっかりした方もいます。

一方、デュタステリドという一般名、製品名は日本ではアボルブは前立腺肥大症の薬として認可されています。このアボルブがの副作用として増毛効果があることは泌尿器科医の間では密かに語られていました。

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実はこのアボルブは海外では男性型脱毛症の適応が認可されていますことは、以前ブログで書きました

プロペシアが効果を上げなかったらアボルブを使うことは当然治療する側としては考えますが、日本で厚生労働省が認めていいない使用法を積極的に患者さんに薦めることは弱気になってしまいます。行政が認めない病気に薬を使用して万が一、不測の事態が生じたら医師側に多大な責任が生じてしまうからです。

海外は発想が単純な医師がいるようです

賢明な医師は例えば、Aという痛みどめが効果を発揮しない場合は、Bという痛みどめに変更して、A+Bという処方はあまりしません。Aという薬の作用機序がBという薬の作用機序を邪魔する場合もありますし、逆にそれぞれ単独投与では出現しない副作用がA+Bという処方によって出てしまう可能性があるからです。

投薬というのは単純な足し算引き算ではありませんし、副作用に至っては組み合わせで生じる場合がありますので、処方する薬の数が増えれば増える程未知の副作用が出現する可能性が増加してしまうのです。

ところが今回、オーストラリアの皮膚科学会誌に面白い論文を見つけました。論文というよりは症例報告でCombination therapy with finasteride and low-dose
dutasteride in the treatment of androgenetic alopeciaという題名です。「フィナステリドとデュタステリドを組み合わせた男性型脱毛症治療」といった内容のものです。
(Australasian Journal of Dermatology (2013) 54, 49–51)

治療の内容

4年間プロペシアを使用していた47歳の男性ですが、期待したほどの効果がありませんでした。最初の6カ月はそれなりの効果があったのですが、それ以降増毛はおきませんでした。

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Australasian Journal of Dermatology (2013) 54, 49–51より引用

aがプロペシア開始前、bがプロペシア使用後6カ月
それなりの効果はあったと見えます。

しかし、その後継続してもあまり効果が無かったために、プロペシアを継続使用しながらアボルブを一般に使用する量より少なめにプラスしてみました。すると

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こんなに効果がでてしまいました!

たった3ヶ月で上記のような驚くべき効果がでたのです。

気になる副作用ですが、論文中では「どの様な副作用も認められなかった」と記してあります。

副作用がすくなかったのは低用量使用に秘密が⋯

アボルブは量を増やせば増やしただけ効果が表れるわけではありません。つまりある濃度で効果は頭打ちになるということです。ある一定の血中濃度を保つことで薬は効果を発揮するのですから、最小の量で最大の効果を狙うのが薬の正しい使用法なのです、当たり前と言えば当たり前のことです。

今回の症例の治療にあたって、dihydrotestosteroneの血中濃度に対するアボルブの影響を検討して、低用量の使用を決定したようです。

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Australasian Journal of Dermatology (2013) 54, 49–51より
グラフの右の方でカーブが平坦になっているのが解ります

最初にこの論文を目にしたとき「過激なことをするなあ」と単純に思ったのですが、さすがにいきなり人体に試すには理論的な裏付けを取っていたのですね、あたりまえですが。

今後の見通し

プロペシアが男性型脱毛症の治療方法としては現在の日本では確立されたものです。アボルブの男性型脱毛症の効果も海外では実証されていますが、厚労省のOKが出ないとさすがに使いにくいものになったしまいます。

前立腺肥大症の治療として使用が許されているので、副作用の点に関しては重篤な問題の心配はありませんが、ハゲに使用するとなるとハゲの治療は保険が適用されないという点が問題になってきます。

前立腺が気になるお年頃はちょうど薄毛にも悩まされるお年頃でもあります。前立腺の薬として保険適用で処方して、「あら不思議髪も生えてきた」なら良いのです。

薄毛治療を主目的にして病名だけ「前立腺肥大症」とつけて保険治療による請求をしてしまう、患者さんにとっては話が分かる医師、でも行政からしたら不正請求をする悪徳医師ということになってしまいます。あくまで自由診療の範疇で医師も患者さんも納得の上、もちろん副作用の点も含めて治療することは可能です。

しかし、アボルブとプロペシアとの併用療法は理論上は問題ないのですが、もう少し情報が出てくるまではお待ちいただくのが良策だと考えています。当院としても積極的に情報を収集して、安全で効果の高い治療法を提供していきたいと思います。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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