糖尿病はあまり得意じゃないのですが「糖尿病の薬でダイエットできるんですよね?」的な質問を患者さんから受けることがあります。そういえば糖尿病の新薬SGLT2阻害薬でヤセるとの話は記憶にあります。果たしてSGLT2阻害薬は「夢の痩せ薬」なんでしょうか?自分で勉強する意味も含めて調べてみました〜。
やせ薬の決定版的に騒がれたSGLT2阻害薬
「院長、WELQ (ウェルク) って健康情報サイトの悪口ばっかりブログに書かないで、たまにはクリニックの宣伝もしてくださいよ❗」とスタッフにキツイ口調で言われたんで少々美容関連について書いてみます。
当院は普通の町医者であり、風邪から癌までを診療しています。自由診療部門として美容(そういえばWELQも美容関係の記事載っているっけ)もやっております⋯はい、宣伝しました。
「こんなんじゃダメです❗」との声が後ろから聞こえたような気がしますので、ダイエットについて少々語りますね。
というわけで今回のお題は「糖尿病の新薬SGLT2阻害薬でヤセる」説です。
SGLT2阻害薬でなぜヤセることができるか?その作用機序はこうなんじゃないの?
どうしてヤセることができるのか?SGLT2阻害薬の機序から考えてみます(糖尿病の専門医のツッコミは禁止します)。
1:SGLT2阻害薬は尿と共に糖を体外に排泄する
いままでのインスリンの分泌を促したり、糖の吸収を邪魔したり、インスリンへの抵抗性を改善する作用を持つ薬がスタンダードでした。SGLT2阻害薬が糖尿病の治療薬として脚光を浴びたのは今までに無い考え方の薬だったからです。
2:SGLT2阻害薬は尿細管での糖の再吸収が減る分、尿糖が増えるので浸透圧利尿が増える
SGLT2阻害薬の作用する部分は腎臓ですから、泌尿器を得意とする私の理論は間違っていないはずです。
3:SGLT2阻害薬によって利尿効果が出ることにより、尿量が増加して体重が減少する
よくある利尿薬を使って一瞬痩せたような錯覚をして、常用する人がいるのですがこれと大した差の無い話と考えます。
結論:SGLT2阻害薬がヤセる薬と誤解されているのは副作用である脱水の効果
このように私は判断いたします❗
どうです、この理路整然としたSGLT2阻害薬のダイエット効果の説明(能ある鷹はときどき爪を出しちゃうよ)⋯ダイエット専門家、糖尿病専門医の方、これでいいですよね〜、間違っていましたらメールでこっそり教えてくださいませ。
糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬、重大な副作用はないのか
五本木クリニック院長理論でSGLT2阻害薬を服用するとヤセることが可能であることが証明?されました。では、果たしてヤセる効果はどれくらあるのでしょうか?
まずはSGLT2阻害薬で一番売れているという「スーグラ」(アステラス製薬⋯私は泌尿器専門でアステラスの薬のヘビーユーザーでもあります)の添付文書を見てみますと⋯副作用で体重減少39例(2.3%)と記載されています。
ええっ、SGLT2阻害薬でヤセるって言ってもたった2.3パーセントしか効果ないじゃん❗
一昔前に肥満治療薬として登場した「サノレックス」が75パーセントの人に有効であったことを考えると(添付文書)全然夢の痩せ薬とはいいがたいのではないですかねぇ。
サノレックスの場合、作用機序自体が有名歌手や元野球選手が逮捕されちゃった「いけない薬」に似ているので、心臓バクバク、汗ダラダラが嫌われて今ではあまり処方されなくなっています。じゃあ、なんで糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬が密かに人気を集めているとしたら、効果より副作用の少なさで、SGLT2阻害薬が「夢のやせ薬」と一部で騒がれているんじゃなかと調査を進めるとその結果に驚きましたあ❗
「日本糖尿病学会、SGLT2阻害薬の勧告を改訂」との記事が医師向けサイトにありました (http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/dmns/report/201605/546906.html) 。その内容は次のようになっています。
- 他の糖尿病の薬と併用するときは気をつけましょう、低血糖を起こしちゃいますからね、というゴクゴク当たり前のこと
- 高齢者には処方しない方がいいよ、体の特徴を捉えてから処方しましょうね、と注意しています。
- SGLT2阻害薬の仕組みとして尿とともに糖を体外に排出するので、脱水の恐れがありますよ、ということです。これは五本木クリニック院長理論を支持する副作用ですね。
- 糖尿病の薬なんで、血糖値が下がりすぎることがないように注意を促しています。
- ケトアシドーシスという命に関わる副作用に注意しましょう、ってことです。
- SGLT2阻害薬の副作用と普通は考えない、皮膚に対する症状もあるので注意しろ、とのことです。
- SGLT2阻害薬を服用するとカンジダに感染しやすくなるとの報告を受けたものですね。
なんでこんな注意勧告的なものが出されたかというと
SGLT2阻害薬によって10名が死亡している
と朝日新聞デジタル版の2015年1月9日号で報道されたからです。
薬の名前別死亡者は「スーグラ 4人」「フォシーガ 4人」「アプルウェイ 1人」「ルセフィ 1人」となっています(このデジタル版は有料じゃないと見られないので、リンクは表示しません)。全部が全部因果関係が証明されてはいませんが、処方薬の場合、服用中に重篤な副作用があった場合、処方した医師は製薬会社に報告します。注意:糖尿病の専門医が処方すれば、週刊現代が騒ぐような「危険、危険、副作用が危険」と考える必要はありません。糖尿病のプロの評価は「優れた薬」です。
糖尿病の治療薬として使用していても、これだけの副作用に注意をしなければならないのに、本来の使用方法とは違った「やせる薬」としても効果はたったの2.3パーセント、これって服用するメリットってありますか?
やっぱりここでもウェルク(WELQ)が出てきちゃったよ〜
医療業界だけでなく、ネットのプロであるSEO業界の方々も激怒しているサイトにウェルク(WELQ)というのがあります。痩せる薬とかダイエット関連のキーワードで検索するとやっぱり出てきちゃいました、一線を超えてしまった医療情報提供サイトが。
まあ、この記事を書いたか監修した医師に悪気があるとは申しません。でもタイトルが「期待の新薬」ですから、やせることに興味のある人は間違いなく読んじゃいますよね?医師が書いた記事なんでもちろん副作用に関する記述もあり、体に異常があれば医師に伝えるように書かれています。
このウェルク(WELQ)は病名とか薬の名前とか症状をキーワードとして検索すると、ほとんどで上位表示される医学や美容に関する情報サイトです。読んでみると多くの記事はかなりテキトーかつ無責任な内容で、一定の常識を持った方なら「怪しいぞ」と感じるものです。誰の役にも立たないので医療関係者の評価は最悪ですし、ネットの専門家の間でもかなり酷いサイトとして問題化しています。
DeNAがやってるウェルク(WELQ)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件
で詳しく述べられていますように、テキトーな医療情報を責任の所在なく書き連ねているだけではなく、SEO対策を駆使しているので、検索結果として上位表示され、多くの方が目にしちゃうサイトです。
と、ここまで書いてきましたが、このブログの下書きをスタッフに見られちゃいまして「院長、全然宣伝になっていないじゃないですかあ❗」と言われてしまったので、当院で最近力を入れている部分痩せの脂肪溶解注射のことも追加しておきます。
皮下脂肪を落とす「脂肪溶解注射」とそのほかの治療方法を比較してみました。
スタッフの皆さん、ちゃんと宣伝しましたよ。次は好きなこと書いていいでしょ❗こんな感じのブログ⋯健康関連情報サイトの内容は正しいか?最近目立つ無責任なWELQ「ココロとカラダ」徹底チェック(怒)❗