ひょんなことからバナー広告をクリックしたら、出てくるわ、出てくるは「医学雑誌にも掲載!本格的なシミ対策」を売りにした化粧品。
医学雑誌にも掲載されたシミ対策の化粧品、シツコク論文をチェーック❗
画像の方が39歳だからと言って「スッゲエ〜」とは思いませんけど(個人の感想ですw)。
「医学と薬学」2014年9月27日の論文をチェックしてみました。確かに「薬用オールインワンジェルの美白効果」(医学と薬学 71 (10) : 1945-1950, 2014.9)という論文を見つけましたので、756円 (税込) で入手(海外の論文はダウンロードすると30ドルくらい取られるんで、最近経費削減として国内の論文使用すること多いです 涙)。
この化粧品は医薬部外品ですから、通常の化粧品より効果・効能を謳うことが可能です。
以前、カネボウが起こした「カネボウ白斑事件」も医薬部外品として「美白」を強調した化粧品が問題を起こしました。医薬部外品であるこのシミ対策用の化粧品の効果はどのような論文となっているのでしょうか?シツコク論文チェックを始めていきます。
医学雑誌「医学と薬学」に掲載された化粧品とは
一般的な医師業に携わっている人で「医学と薬学」を定期購読している人はかなりマニアックな医師だと思われます。私もこの医学誌はあまり目にすることはないので「メディカルオンライン」という論文検索サイトを使用して、論文をゲットしました。
「(医学と薬学 71 (10) : 1945-1950, 2014.9」に掲載されていた「薬用オールインワンジェルの美白効果」と題された論文は化粧品を販売している会社名も商品の固有名詞も書かれた、一般に見かける医学論文とは若干違った形式のものでした。この論文で使用された化粧品は「ホワイト リフト ケアジェル」(発売元 メビウス製薬)と書かれていますので、ネット広告のものであることは間違いありません。
成分には紫根エキスとプラセンタが含まれています。これを実際に使用してもらって効果を調べています。手法は
- 対象者は女性10名(⁉)
- 35-59歳
- 美白に関心がある人
実験方法は
同一人物が顔の半分は前述の化粧品を使用して、残りの半分は「無塗布」というハーフフェイス法によって行われています。これを4週間使用してその差を比較することによって、効果を判定しようという設計の実験です。
果たしてオールインワンジェルの結果は?
美白効果の判定には、なんと写真を使用しています。使用前・使用後の写真を撮影して使用前を0点と基準点にして、著名に改善の-4点から少し改善したの-1点と点数付けをしています。
シミの改善については「肌の評価に熟達した研究員」が、プロカメラマンが撮影した写真を元に評価を行っています。
肌の明るさについては、スキンプラスという機器を使用して測定。
肌の状態は使用者へのアンケート調査によって「目尻のシワ」「ほうれい線」「ハリ・弾力」「保湿」「くすみ・明るさ」「シミ」「化粧のり」を10段階評価をしてもらっています。
アンケート調査ですから、「お客様の感想」の粋は越えませんねw
シミを消す美白化粧品の実験結果
- 美白効果⋯写真判定により有意に改善効果があった
- シミ⋯写真判定により有意に改善効果があった
- 肌の明るさ⋯有意に改善効果があった
上記の結果は統計学的に処理してあるので、論文上のデータで見る限り、オールインワンの美白ジェルを使用すると美白・シミ・肌の明るさに効果があるように見えます。
でも、これって変じゃない?
一般の皮膚科の診療で「化粧はしないでね」と伝えても、多くの患者さんは化粧品と考えられるものを使用しちゃうものです。
今回の対象者もいつも使用している化粧水は観察期間も使用してもらっています。また、洗顔料の使用も各人違ったものを使用しているようです。
通常使用している化粧水を塗った後に、このオールインワンジェルを塗布していますが、化粧水に分類されるものの中でも美白効果・シミを薄くする効果があるものが含まれている可能性があります(だって、もともと美白に関心の高い人を集めて実験に参加してもらっているわけですから)。
あと、写真でのシミと美白の効果判定が気になります。左右、どっちに研究対象の化粧品を使用したかを判定者に分からないような、ブラインド方式が採用されていれば、それなりに信頼度は高まります。
判定した人に顔の右側はジェルを使用していて、左側は放置との情報がインプットされてしまうと、どうしてもバイアスがかかってしまいます。
化粧品、それも医薬部外品はそれなりの効果を期待して購入する人が多いはずです。さらに製薬会社が開発・販売しているものなら安心感もでることでしょう。「医学雑誌に掲載❗」と広告しても、まさか論文自体を探して読み込むユーザーは稀だと思います。
そこで私が余計なお世話的にこんなブログを書いてみました。おまけ:この広告に登場する人、どっかで見たような⋯やっぱり医学雑誌で効果が証明されました的な文言で派手な手法が目についた
これと同一の化粧品でした。この化粧品に恨みがあるわけではないのですが、目立つあるいは表示される回数が多すぎると、こんな感じでイジられる可能性も多くなるんです、広告って難しいですね。