アトピー性皮膚炎のステロイド塗り薬拒否は父親の治療の失敗の影響が大きい⁉

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当院は一般の皮膚科の治療を行っていますが、以前ほどではないのですが「ステロイドは使いますか?」と尋ねてくる方がいます。湿疹や皮膚炎を治すために、適正なステロイドの塗薬は非常に有効な治療手段です。

アトピー性皮膚炎の適応薬を嫌がる人

正しいステロイドの使用法も皮膚科学会によりガイドラインが作成されています。

しかし、「ステロイド忌避患者」というべき人々がいることは皮膚科に携わる医師であれば必ず経験しています。

      

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国立病院機構福岡病院の資料より

ステロイド悪者説

飲み薬のステロイドは副作用の面から使用に際しては慎重に慎重を重ねていかななければいけません。アトピー性皮膚炎には基本的には避けるべき治療法です。また、いくら塗り薬といっても、適切でないステロイド塗り薬を長期間に渡って使用し続けると、皮膚が薄くなるトラブルや毛細血管の拡張によって赤みが出てくることはあります。

しかし、そのような状態になるには必要以上に強いステロイドを使用したり、漫然と長期間に渡って塗り続けることによっておこってきます。そのような方に限って医師の診断を受けないで薬だけの処方を受けていたり(本来は禁じられています⋯無診察処方)、すぐに治らないために多くの医療機関を転々としたりして、結局最初の治療計画と違って必要以上の塗り薬の総量になったりしてしまいます。

世の中に出回っている塗り薬としてのステロイドの悪口は

・リバウンドがある⋯自己判断の使用によって引き起こされます
・白内障になる⋯悪化した皮膚炎の掻き過ぎによる
・皮膚が黒くなる⋯痒い皮膚を掻き過ぎて外傷性色素沈着を起こす
・免疫力がおちる⋯塗り薬では起こりません
・糖尿病になる⋯塗り薬ではおこりません

など、さんざん悪口を言われています。

強硬に脱ステロイドを訴えている本・ネット広告・織り込み広告などをよく読んでみると最終的には民間医療や怪しげな医療類似健康食品にたどりつくことが多いのです。

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この様な広告に振り回される方もいます(http://www.yourhealthcareway.com/993/)

そもそもはアトピー性皮膚炎は元々その方がもっている体質的に問題が大きく症状を左右しますので、医療機関で良くなったようになってもちょっとしたきっかけで悪化する為に、「結局、医療機関でステロイド使っても治らないじゃやないか」という医療機関不信を抱いた患者さんに、ステロイドの悪い面を強調することで自分のビジネスにうまい具合に引き込む作戦のようです。

脱ステロイドビジネスの裏側

アトピーは元々症状に波があるものですから、脱ステロイドビジネスの商品を使用していても表面上は良くなった、軽快したと思われることも起きてきます。

また、これは事件にもなったのですがステロイドが含まれていないというローションにに非常に強いステロイドが含まれていたこともあります。そりゃ、滅茶苦茶効果があるでしょうね。中国製の健康食品でアトピーに効果があると言っていたものからもステロイドが検出されたこともあります。

もちろん少しづつステロイドを減らしていき、最終的にはステロイドフリーを目指しているのは私たち医療関係者も同じなのです。

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http://www.epgonline.org/よりお借りしました
掻けば掻くほど症状が悪化するアレルギー反応が基本の病態です

ステロイド忌避者の傾向があります

国立成育医療研究センターのアレルギー科小島医師の研究によると、ステロイドの塗り薬を拒絶する患者さんと強く関連する因子は

・女子
・父親がアトピーの既往を持っている
・医療機関の変更回数が多い

があげられています。

そこで意外なことが
・アトピー性皮膚炎の重症度はステロイド忌避との関連はない
ということです。

ここから導き出され結果は治療の失敗の連続である父親に育てられた女児においてはステロイド忌避者が多くみられるということです。遺伝的要素の強いアトピー性皮膚炎は親の治療経験が悪い結果だった場合、子供の治療にまで影響を与えるのです。

なぜ治療が失敗するか⋯医療サイドの問題が多いのです

患者さんの治療に対する不安を取り除かなければ、この問題は解決しません。その為には塗り薬の量、塗る部位、使用する期間などに対して事細かな指示を患者さんにする必要があります。また、アレルギーは遺伝性の疾患でもあるので医療不信に陥っているお父さんの理解も必要になってきます。そのために病院によっては「アトピー教室」などを行っているところもあります。患者さんの親も参加して病気をよく知り、薬の正しい知識を得ると病気が当たり前の事ですが軽快します。するとステロイドの使用に対する誤解がとれ、不安感が少なくなるために治療はどんどん良い方向に進んでいきます。

    

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https://www.multicarehomeopathy.com/

海外でも副作用がありません、と強調された広告があります。

結局医師の説明不足が患者さんの不安を増幅させて、変てこなインチキ治療に向かわせていたのです。
十分な説明をしてくれる医師を選ぶことがアトピー治療のカギとなることに間違いはありません。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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