プラセンタサプリの効果・・「医学論文が証明」って化粧品の広告が酷すぎる❗

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プラセンタとは胎盤から抽出されるエイジングケア界では欠かすことのできない成分です。そもそもプラセンタは美容系クリニックで注射としてエイジングケアを狙って使用されることによって有名になりました。

注射薬をサプリ会社が販売するわけにはいきませんので、プラセンタを錠剤あるいやプラセンタドリンク形式にして自社製品がいかに優れているかを強調するためにメディア特にネットを使用してプラセンタサプリの広告が行われています。

ちなみにプラセンタとは正確には成分の名前ではなく、胎盤由来のアミノ酸・ミネラル・酵素などで構成されるために、元気が出る成分・美肌になる成分・とにかく体に良い成分がたっぷり入り込んだ栄養満点のエイジングケアには欠かせない物質として認識されています⋯でも、これって本当でしょうか?錠剤形式のサプリメントやドリンク形式のサプリメントが医療現場で使用されているプラセンタと同様の効果を表すのでしょうか?

プラセンタサプリの効果は本当か?

プラセンタサプリに効果があるなら、プラセンタサプリの副作用はどうなっていか等の疑問点がいっぱいあります。

プラセンタサプリの研究を引用したプラセンタ入りの化粧品の広告が酷すぎる❗

サプリ業界では医療現場でも使用されているプラセンタですから、プラセンタサプリもこんなに効果があるんだよ、と証明というより宣伝したいためか、かなりいい加減な内容のものもあります。そんなプラセンタサプリの中でもこのプラセンタ入り化粧品の広告は酷すぎます。

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https://ynh678.prd.cloud.clipkit.co/articles/GKlqc

サイトによれば30代からの女性を対象に徹底的に美肌を研究するそうですが、リスティング広告として上記のページが使用されている状況です。なぜ、このサイトが悪質というとまず、金沢大学のこの論文(学会での演題)がプラセンタでシミが取れることを科学的に証明した、だから「プラセンタサプリは効果がある」との論理を拡大解釈して「プラセンタを含んだ化粧品もシミに効果がある」と誤誘導していることです。金沢大学が証明したプラセンタサプリの論文って、たったこれだけなんですけど⋯。

14005_pdf

日本補完代替医療学会サイト (http://www.jcam-net.jp/data/pdf/14005.pdf)

これは論文ではなく、学会での発表用の要約ですね、多分。このへんなプラセンタ広告ページでは海外文献でも大きく報道された、なんて書かれていますけど日本語の文献を海外の少なくとも医学・科学論文が引用することはまずあり得ません。確かに金沢大学の大学院生が学会で発表した内容からは「プラセンタサプリを服用して皮脂量の増加とシワの幅の減少が確認された」のですが、シミが改善したなんて一言も書かれていませんぜ、美肌なんとか研究所さん。この広告の流れは

  1. プラセンタサプリの使用で肌が若返った、と大学の研究者が発表した⋯事実
  2. プラセンタサプリでシミが取れることが科学的に証明された⋯そんな事実は発表されていない
  3. 化粧品にプラセンタを含有させることで、シミが取れる⋯全く科学的には証明されていない

といった手法を取っているのです。まあ、普通はプラセンタはシミを取ることが科学的に証明されたので、プラセンタ入りの化粧品を使えばシミが取れて美肌になる、と解釈しちゃいますよね。

実験で使用されたのは服用するサプリであり、肌に直接塗る化粧品ジェルではないのです。豚肉にビタミンAがたっぷり含まれているからといって、豚肉を顔に貼り付けてもビタミンAが体内に入り込んだと主張するのと同じくらい変な結論に導いています。

若い学生さんの論文にケチをつけるわけではないのですが、この臨床研究は詳細は述べませんが、めちゃバイアスがかかっています。

プラセンタ注射の効果と副作用

当院はもちろん医療機関でもプラセンタは使用されています。基本的には注射薬として使用されて、主として「ラエンネック」が多くのクリニックでエイジングケア対策として選ばれています。本来ラエンネックは慢性肝疾患に対する肝機能改善を目的として使われる「薬価収載薬」で肝機能異常があれば健康保険で筋肉あるいは皮下に注射することができます。ラエンネックの原料はヒト胎盤です、人間の胎盤を原料として有効成分を抽出しているのです。

ラエンネックの添付文書

「ラエンネック」添付文書より
  

人の胎盤を原料にしているプラセンタであるラエンネックですから、当然感染症や未知の感染症のリスクがあります。

ラエンネック注射をした後は必ず製造番号と使用年月日、使用した患者さんの氏名・住所を20年間保存することがお約束になっています。薬害エイズ事件のようにならないための処置ですね。当院的には万が一の場合を考えて、患者さんに十分にリスクを説明して、同意書まで書いてもらってから使用しています。どちらかというと手間のかかるエイジングケア法なので、積極的に患者さんにご紹介してオススメしていません。他の美容系クリニックとしては、効果があるのかないのかはっきりしない「にんにく注射」とともにプラセンタ注射としてのラエンネックはドル箱らしいですけどね。今回取り上げたプラセンタを含んだジェルのように、シミが取れますよ的に使用することはあり得ません、だってシミならレーザーの方が簡単確実に綺麗に取れるんですから。

プラセンタサプリの根本的な問題点

医療機関で注射剤として使用されるプラセンタはヒトの胎盤が原料となっています。一方、サプリのプラセンタは豚が多いようですが、中には馬の胎盤を使用しているものもあります。牛も利用して良さそうですが、狂牛病事件以来人体に使用する成分の原料として牛は避けられています。中には魚由来のプラセンタなんてあるのですが、胎盤って哺乳類特有の臓器じゃなかったっけ?あれあれ、植物由来のプラセンタまであるぞ⋯こんな感じでサプリに含まれているプラセンタってかなり怪しげになってしまいます。

プラセンタはタンパク・アミノ酸を含むものですから、当然ショック症状が副作用として考えられます。発疹やかゆみなどの副作用も当然起こりうる副作用です。ラエンネックの添付文書にはそれらの副作用が記載されていますが、プラセンタ注射レベルの効果がプラセンタサプリ、あるいは化粧品にあるのならば、副作用の心配もでできます。医薬品レベルの効果があるサプリの場合、医薬品レベルの副作用もある、と考えてるべきなんです。

この広告の商品に副作用と呼べるようなものはないでしょうから、当然効果も「シミが取れる」レベルになりようがありません。くれぐれも科学的に証明された、なんてフレーズに惑わされないようにご注意くださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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