「小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない (いらない薬、いらないワクチン教えます) 」(鳥海佳代子著 マキノ出版)という、衝撃的なタイトルの本が10月中旬に発売されました。
自分の子供には薬を飲ませないで、よそ様のお子さんには薬を処方しているのでしょうか、この小児科医さんと素朴な疑問を抱きました。
本記事の内容
自分の子供に薬を飲ませないで他人様の子供には薬を処方するのでしょうか?
「小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない (いらない薬、いらないワクチン教えます) 」というタイトル及びマキノ出版という出版社を見て、ニセ医学の芳しい香りがツーンときたので早速アマゾンさんの中古で購入しようとしたら、なんと中古本の方が定価より高額❗購入を断念して、ネットで鳥海佳代子医師の記事がないかと探したところ、こんな記事を見つけてしまいました。
女性自身❗東スポや夕刊フジの取材を受けるレベルの私が媒体のクオリティをとやかく言える立場ではありませんが、私の感はドンピシャでした。
なぜ、この方の話がヘンテコなのか、記事に沿って解説してまいります。
開業医が家族に処方した場合「自家処方」と判断され、普通はやってはいけない行為です
無駄な処方をやめましょう、効果のない処方はやめましょう、という記事構成かと思ったら、のっけから飛ばしてくれます。
私の子どもがかぜをひいたときには、同じく小児科医をしている夫が薬を処方します。しかし、私はその薬の9割は飲ませません。
https://www.excite.co.jp/news/article/Jisin_26147/
一般の方はこの小児科医さんは自分の主張に正直にしたがい、ご主人が処方した薬さえ、子供のことを思うが故に9割を飲ませない、と解釈します。
しかし、私のような町医者の見所は違ってきます。開業医が自分の家族に処方する場合は、「自家処方」として医師国保は保険適応を禁じています。厳しい保険組合であれば、不正請求とされかねません。さらに処方された9割を使用しなのなら、その医療費が無駄になっちゃいますので、医療費削減に反する行為となってしまいますよね。もしも、保険を使用しないで、全額自費とした場合、処方箋を調剤薬局に持っていき10種類の薬を出されて、そのうち9種類は捨てちゃうのでしょうか、もったいない、もったいない。
ところで9割の薬って書かれていますが、整数だとすると10種類もご主人は風邪ごときに処方するのでしょうか?処方が5種類だったら9割って4.5種類、3種類の薬が処方されていて1割の薬しか飲まないとしたら0.3種類⋯算数的にどうなっちゃうの?
あるいは10回風邪を引いて、そのうち9回は処方された薬を飲ませない、ってことでしょうか?それなら最初からご主人に処方してもらわない方がいいと思います。
この9割発言には、ニセ医学・疑似科学方面の方の特徴である「数字に弱い」が見え隠れします。
鳥海佳代子医師のご意見、ここがヘンだよ
女性自身のサイトでは鳥海佳代子医師が7つの提言を述べていますが、長くなるので1から5について検証してみます。尚、小見出しは前述女性自身サイトから引用しました。
1:「かぜは薬で治りません」
はい、もちろん対症療法です。市販の風邪薬だって、風邪自体を治す(原因のウイルスを殺す)と思って服用している人は少ないのではないでしょうか?私のブログを読んでくださっている賢明なる読者(小うるさいオッサンが中心)は風邪の原因はほとんどがウイルスであり、抗菌剤(鳥海さんは抗生剤と言っていますけど)に抗ウイルス効果はないのことをご存知です。
しかし、子供やお年寄りの風邪が問題になるのは、細菌による二次感染なんです。風邪を引いた時はウイルス感染がほとんどですが、ウイルスの攻撃によってダメージを受けた呼吸器系の粘膜が常在菌によって二次感染が起きてしまうことがあります。これによって気管支炎・肺炎・中耳炎になってしまうので、診察をして必要に応じて抗菌剤(抗生剤)を投与することは少なくありません。
2:「3歳までに多くの病原体との出合いを」
もちろん普通の生活を送りながら、バイキンに触れることによって免疫力をつけることは必要です、致死的なバイキンじゃない限りは。
多くの子どもは4歳になると、小児科を受診する回数がガクッと減ります。
鳥海佳代子医師はこのように述べていますが、3歳までに自然と免疫力がつくので、受診回数が減るとの意味ですが、根拠があるのでしょうか?
少なくとも、この公的データを見る限り、4歳になると受診する子供がガクッと減ってはいません。
小児の受診率のデータは探せばもう少しメジャーなものがあるでしょうが、これでも大まかな傾向はつかめると考えます。
トンデモさんの特徴である、自分の思い込みに頼り、客観的データを軽んじる風潮が伺えますね。
3:薬を出しすぎる医者にだまされない
そりゃ当たり前です。幼児に対して安全性が確立されている処方薬って少ないですからね。だからこそ、処方薬の添付文書に対して安全性を記載することが、厚生労働省が促しているんです。
鳥海佳代子さんのご主人は自分のお子さんに、どんだけの数の薬を処方したか非常に気になります、だって9割は使用されないんでしょ。○○に騙されるな❗はニセ医学方面の方がよく使用するフレーズです。
4:予防接種を受けるかどうか、決めるのは親
ハイ、登場しましたね。某あっちに行っちゃった系の医師が子供の障害の原因は100パーセント親にある的な発言をして炎上したことは記憶に新しいです。ワクチン否定論者が振り回す、いい加減な情報に親御さんが感染しないように説明するのが真っ当な医学者の姿勢です。それを全部親の責任と取れる発言はかなりあっち方面の影響を受けていることがわかります。ワクチンを全面否定していないのは、小児科の開業医のジレンマでしょうか?
5:インフルエンザワクチンは「効けばラッキー」
えええ〜っ、効果があったらラッキーと思う注射を行なっているんですか???ポケモンGOの10キロ卵からプテラが出たらラッキー、と思うレベルで予防接種をしているんですか?ワクチン接種をすると、インフルエンザに感染しても発症しにくくなり、発症しても免疫力(鳥海医師が3歳までにゲットしろと2でおっしゃっている)によって軽い経過ですみます。予防接種の有効性を正しく理解し、親御さんに伝えていたら、効果があったらラッキーとはならないはずです。
「こうやって幸運をつかめ」「ラッキーには法則があった」的な啓発本の影響でも受けているのでしょうかね?
なんで鳥海佳代子医師の発言にからむのか?
この方はマスメディアに積極的に登場しているようですから、一般的な小児科医を扱うように匿名にする必要なと判断しています。ご自身の考えを出版物としていますし、講演会活動も積極的に行っているようですから、お名前が出ることには抵抗はないと思われます。
子育て中の親御さんにとって一番心配な子供の病気、それに関してニセ医学テイスト溢れた非科学的発言・記述⋯一見風変わりに見える衝撃的なタイトルの本をお出しになった小児科医さんの考え方が標準医療ではないことを、多くの方に知ってもらいたいです。この方がそうだというわけではないのですが、カルト系のニセ医学一派が一番のターゲットとしているのが「子育て中の母親」であることにも注意が必要です。
「小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない (いらない薬、いらないワクチン教えます) 」がAmazonさんの中古で購入しやすい価格になったら速攻でゲットして、読書感想文をブログにしますね。